ニュース
2012年02月16日
ピロリ菌に感染すると糖尿病リスクが2.7倍 米研究
- キーワード
- 糖尿病合併症
ピロリ菌に感染している人では、糖尿病の発症リスクが2.7倍に上昇するとの研究が発表された。米国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetes Care」(電子版)に1月25日付で掲載された。「ピロリ菌の治療を受ける人は、糖尿病の検査もしてもらった方が良い」と研究者は述べている。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、口から侵入して胃に住みつくことで、胃潰瘍や胃がんの原因になる細菌。米疾病管理予防センター(CDC)によると、世界のおよそ3分の2の人がピロリ菌をもっているが、大部分は症状が現れていないという。 今回発表されたのは、ピロリ菌と2型糖尿病の発症との関連をはじめて示した前向きコホート研究。米コロンビア大学のChristie Y. Jeon氏らは、米カリフォルニア州に在住しているラテン系住民を対象に行った検査データから、調査開始時(1998〜99年)に糖尿病がなく、サイトメガロウイルス、ピロリ菌、トキソプラズマなどの血清抗体検査を行っていた60歳超の高齢者782人を抽出し、2008年まで追跡した。 対象者の年齢中央値は68.7歳、38%は男性だった。追跡中、半年に1回の聞き取り調査と年1回の検査で、144人の糖尿病発症が確かめられた。 ピロリ菌に感染しているか調べる一般検査には、尿素呼気試験、便中抗原検査、抗体検査などがある。このうち抗体検査を行った結果、陽性の人では糖尿病の発症リスクが2.7倍に跳ね上がっていた。ピロリ菌以外の陽性率と2型糖尿病の発症との関連はみられなかった。 研究者らは、腸内のピロリ菌による慢性的な感染症が炎症が引き起し、サイトカインという物質の分泌が促され、糖尿病の一因となっている可能性を指摘する。「ピロリ菌除去の治療は、糖尿病を予防するためにも重要である可能性がある」と述べている。 ピロリ菌の感染が判明した場合には、抗菌薬と胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用し、ピロリ菌の除菌が行われる。Jeon氏らは「ピロリ菌などの慢性的な感染症だけが原因となっているわけではない」として、さらに大規模な研究が必要としながらも、「ピロリ菌と糖尿病の関連があきらかになれば、糖尿病の予防戦略としてのピロリ菌治療が重要になるだろう」と指摘している。 「胃痛や胃もたれ、胸やけのある人は、ピロリ菌に感染している可能性があるので、医師に相談して欲しい。そのときに、糖尿病の検査も受けると良いだろう」と述べている。 Helicobacter pylori Infection Is Associated With an Increased Rate of Diabetes
Diabetes Care, Published online before print January 25, 2012, doi: 10.2337/dc11-1043
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
糖尿病合併症の関連記事
- 「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」開催報告を公開 医療従事者と患者が活発に対話 日本糖尿病学会
- 糖尿病の人は胃がんのリスクが高い どうすれば対策できる? 胃がんを予防するための6つの方法
- 掃除や買い物などの家事も立派な運動? わずか20分の活動が糖尿病を改善 「座っている時間」を中断して体を動かす習慣を
- ブルーベリーが腸内環境を健康にして糖尿病や肥満を改善 メントールから抗肥満・抗炎症の化合物
- 糖尿病の人は腎臓病のリスクが高い 腎臓を守るために何が必要? 「糖尿病・腎臓病アトラス」を公開
- 楽しく歩きつづけるための「足のトリセツ検定」をスタート 糖尿病の人にとっても「足の健康」は大切
- 緑茶を飲んでいる人は糖尿病リスクが低下 心臓病や脳卒中が減少 緑茶は歯周病の予防にも良い?
- 「糖尿病網膜症」は見逃しやすい 失明の原因に 手遅れになる前に発見し治療 国際糖尿病連合などが声明を発表
- 植物性食品が中心の食事スタイルが糖尿病リスクを低下 心臓血管病・がん・うつ病のリスクも減少
- なぜ男性は女性よりも糖尿病リスクが高い? メカニズムを解明 男性はインスリンの働きを高める対策が必要