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2011年12月09日
アジア人は少しの体重増加で2型糖尿病を発症
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病の診断基準

米国のジョスリン糖尿病センターの研究者らは「アジア人は欧米人に比べ、少しの肥満が2型糖尿病の発症につながる。一見して肥満とみられない患者でも、体に脂肪がたまっている場合が多い。運動や身体活動を増やし内臓脂肪を減らすと効果的だ」と述べている。
「アジア系米国人の糖尿病については不可解な点がある」とジョスリン糖尿病センターのWilliam Hsu博士は言う。Hsu博士ら研究チームはボストンのジョスリン糖尿病センターで10年間以上、アジア人とアジア系米国人の糖尿病に関する研究を続けている。
例えば、カスピ海と黒海に挟まれたコーカサス地方で、2型糖尿病の人に共通してみられるのは、過体重、高年齢、糖尿病の家族歴があること。しかし、2型糖尿病のアジア系米国人では正反対の特徴がみられ、年齢は若く、正常体重であることが多いという。同じ2型糖尿病であっても2つのタイプで大きく異なるので、糖尿病医療に関わる医療者は困惑している。
1型糖尿病に関してみると、コーカサス人とアジア系米国人とではあきらかな違いがみられる。すなわち、コーカサス地方の人では、β細胞に対する強い自己免疫が示されるが、アジア系米国人では50%未満にとどまるという。
欧米人の糖尿病では、インスリンの働きが抑えられる「インスリン抵抗性」が糖尿病を引き起こす主な原因とされているが、アジア人の糖尿病の場合は、インスリンの分泌が悪くなるために、インスリンの量が相対的に不足する「インスリン分泌低下」が主な原因と考えられている。そのため、アジア人の2型糖尿病患者ではBMI(体格指数)が正常であり、減量治療は勧められない場合が多い。
「アジア人では過体重ではなく、一見して肥満とみられない患者でも、体に脂肪がたまっている場合が多い」とHsu博士は言う。アジアにおける肥満の頻度は低いが、BMIが同等ならアジア人は白人より内臓脂肪が多く、わずかな過体重でも糖尿病を発症しやすいと説明している。
Hsu博士は「誤解されやすいが、アジア人の糖尿病患者では、減量が必ずしも必要なわけではない。しかし運動や身体活動を増やすことで内臓脂肪を効果的に減らすことができる点は変わらない。運動を習慣的に行った方が良い」と付け加えている。
[関連情報] 世界の10人に1人が糖尿病 2030年までに5億人超 国際糖尿病連合
Hsu博士らは、アジア系米国人30人を対象にパイロットスタディを行い、標準体重の糖尿病患者と健常者を比較した。2型糖尿病を判定するためのより精度の高い診断ツールを開発し、正確な診断を迅速に行えるようにすることが目標。アジアの糖尿病患者を身体的な特徴で識別できれば、早期からの適切な治療を実現できる。
欧米人では、1型糖尿病と2型糖尿病の分類は比較的はっきりとしているが、アジア人では見分けるのが難しい場合がある。特に若い世代の糖尿病患者で、1型糖尿病と2型糖尿病の類型を正確に見分けられるようにする必要があるという。
インスリン抵抗性を評価するための検査法である「インスリンクランプ試験」は、インスリンを持続的に注入しインスリン濃度を一定にした上で、ブドウ糖も注射して血糖値を一定に保つようにする方法。必要なブドウ糖の量が多いとインスリンの効きが良い(インスリン感受性が高い)ことになり、少ないとインスリンの効きが悪い(インスリン感受性が低い)ことになる。
ジョスリン糖尿病センターの研究チームは、アジア人を対象にインスリンクランプ試験を行い、2型糖尿病のある患者が1型糖尿病患者や健常者に比べ、インスリン抵抗性が高い傾向があることをつきとめた。
研究者らは、インスリン抵抗性と相関する脂肪酸結合蛋白質レベルについて着目した。この蛋白質をターゲットとすることで、インスリン抵抗性を発見するのに有用である可能性があるという。
Joslin Study Identifies the Cause of Diabetes Misdiagnosis among Asian Americans(ジョスリン糖尿病センター 2011年12月2日)
A Cross-Sectional Characterization of Insulin Resistance by Phenotype and Insulin Clamp in East Asian Americans with Type 1 and Type 2 Diabetes
PLoS ONE: Research Article, published 02 Dec 2011 10.1371/journal.pone.0028311
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