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2011年03月16日
持効型溶解インスリンの市販後調査 経口薬との併用でHbA1cなど有意に低下
HbA1c、空腹時血糖値、随時血糖値を改善
患者のコンプライアンスも良好
ALOHA(調査期間:2007年11月〜09年12月)では、傾向血糖降下薬(OAD)を12週間以上服用している2型糖尿病患者のうち、「HbA1cが7.5%以上12.0%未満」、「BMIが30未満」、「新規にランタスを使用」という条件を満たす症例を対象に、用法・用量には介入せずに診療実態下で、経口血糖降下薬/ランタス併用時の安全性と有効性を調べた。観察期間は24週間。
その結果、有効性評価では、ランタス投与後は投与前に比べ、HbA1c、空腹時血糖値、随時血糖値のいずれも有意に低下した。HbA1cは投与前9.05%、投与後7.63%(-1.43%)。空腹時血糖値は投与前196.62mg/dL、投与後137.62mg/dL(-59.71mg/dL)。随時血糖値は投与前255.33mg/dL、投与後194.68mg/dL(-60.72mg/dL)だった。
低血糖の発現率は0.97%で、「重篤な低血糖」が0.09%(4件)、「体重増加」が0.5%(21件)だった。体重の変化では平均約0.8kgの増加が確認された。
また、ランタス投与終了時の医師による評価では、治療のコンプライアンス(遵守)状況について、「指示通り」が88.8%、「ときどき遵守できず」が9.1%、「遵守できず」が2.0%と回答。また、全般的治療評価については、「有効」が65.4%、「やや有効」が26.8%、「無効」が7.8%だった。
東京大大学院医学系研究科の門脇孝教授(糖尿病・代謝内科)は同日、同社が都内で開いた記者説明会で講演し、2型糖尿病のインスリン治療での血管合併症予防のためのポイントについて、「早期からの血糖コントロール」、「安全性(低血糖、体重増加を起こさない)」を説明。糖尿病と診断された早期(軽症糖尿病)から、低血糖を起こしにくい薬剤で厳格な血糖コントロールを行う必要性を強調した。
ALOHAの結果について、経口血糖降下薬のみで十分な血糖コントロールを得られない患者に対するランタス併用により、「ターゲット達成率が有意に高かった」と評価し、副作用については「低血糖発現率はランタス群で低く、体重増加の発現も低かった」と述べた。
インスリン療法の導入時に患者のコンプライアンス不良が障害となることが少なくないが、ランタスに関しては「指示通り」が9割近くに上ったことを指摘し、「大半の患者が安全に目標値を達成することができた」とした。
なお、サノフィ・アベンティスは1日1回注射の新たなGLP-1受容体作動薬「リキシセナチド」の後期第III相試験を実施中で、ランタスとの併有を有望視している。
早期にランタスを用いたBOTにより、2型糖尿病患者の血糖コントロールが有意に改善(サノフィ・アベンティス、2011年3月11日)
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