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2011年01月21日
牛乳や乳製品を毎日とる人では2型糖尿病のリスクが低下

一方で、牛乳や乳製品には飽和脂肪酸も多く含まれる。2型糖尿病や高血圧症など、生活習慣病のリスクの高い人では、とりすぎると「コレステロール値が高くなる」、「牛乳を飲むと太る」と思い、摂取を控える人が少なくない。牛乳以外に、無糖のお茶や、野菜ジュースなどの飲料も増えており、日本では牛乳や乳製品の消費は低下傾向にあるという。
しかし、牛乳などをとると、むしろコレステロール値は低くなり脂質が改善し、2型糖尿病発症の危険性を低下するという研究が発表された。その秘密は、牛乳に含まれる脂肪酸にあるという。

対象となったのは、米国で実施されている大規模研究「心血管・健康スタディ(CHS)」に参加した3736人の成人。この研究は、高齢者の心疾患の危険因子と予防策をさぐる目的で20年間続けられている。
研究チームは血液検査をもとに、コレステロール値、中性脂肪値、C反応性蛋白(CRP)値、血糖値などを分析し、45種類の脂肪酸量の割合をそれぞれ調べた。
あきらかになったのは、牛乳やヨーグルト、チーズなどに含まれるトランスパルミトレイン酸(trans-palmitoleic acid)と呼ばれる、不飽和脂肪酸の一種が影響しているということ。
血液中のトランスパルミトレイン酸の濃度がもっとも高い群では、もっとも低い群に比べ、2型糖尿病発症の比率が60%も低下していることが分かった。またトランスパルミトレイン酸の濃度が高い人では、善玉とされるHDLコレステロール値が高く、総コレステロール値は低くかった。炎症マーカーであるC反応性蛋白も低く、インスリン抵抗性も抑えられていた。
トランスパルミトレイン酸に、糖尿病やインスリン抵抗性の発症に対して予防効果があることは、動物実験などでは分かっていたが、ヒトを対象にした研究でも初めて確かめられた。
「食事でエネルギーなどをとりやすい現在の食生活では、トランス脂肪酸が増えやすい。トランスパルミトレイン酸は、シス型脂肪酸のピンチヒッターのような役割を果たし、保護作用が保たれるのかもしれない」とMozaffarian氏は説明している。
研究者は「研究の次のステップは、この脂肪酸をとっている人とそうでない人とを比較し、治療への影響を調べる介入試験を行うことだ」と述べている。
Component in common dairy foods may cut diabetes risk(ハーバード大学公衆衛生大学院)
Trans-Palmitoleic Acid, Metabolic Risk Factors, and New-Onset Diabetes in U.S. Adults
Annals of Internal Medicine, December 20, 2010, vol. 153 no. 12, 790-799
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