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2010年08月03日

血管障害:糖尿病合併症を予測する物質を同定 東北大

キーワード
糖尿病合併症
 メチルグリオキサールという物質が、糖尿病患者の心筋梗塞や脳卒中などの心血管障害を予測するために有用であることが、東北大学の研究グループの調査であきらかになった。メチルグリオキサールが高値であると血管障害の進展が強いという。効果的な予防・治療法の開発につながる研究成果とみられている。

 糖尿病の治療では、心筋梗塞や脳梗塞などの血管障害を予防することが重要。検査で血管障害を起こす危険性の高い患者をみつけ、適切で効果的な予防対策を早期に始めると治療効果が高く、患者の負担軽減にもつながる。

 そこで、東北大学保健管理センターの小川晋准教授らの研究グループは、血管障害の起こりやすさを予測する方法を開発するために、メチルグリオキサール(MG)という物質に着目した。

 体に必要なエネルギーをつくるために解糖系という生化学反応経路が起こる。その解糖系からメチルグリオキサールという物質が副産物としてつくられる。血液中の糖は体内のさまざまな蛋白質と結びつき糖化最終産物(AGEs)をつくりだす。メチルグリオキサールはその前駆物質となり、血管内に蓄積すると酸化ストレスが引き起こされる。血管の細胞を破壊し、血管障害の原因になる物質と考えられている。

 研究グループは、2型糖尿病患者50人の血液中のメチルグリオキサールを測定し、5年間の血管の厚さ(IMT)、血管の硬さ(PWV)、血圧の上昇度などを調べた。その結果、血中のメチルグリオキサールが高い人ほど、5年間の血管肥厚、硬化、血圧上昇といった血管機能の低下が大きい傾向があることが分かった。

 研究者らは「2型糖尿病患者の血液中のメチルグリオキサールが高値であると、血管障害の進展が強いことがあきらかになった。そうした患者に重点的に血管障害を予防する治療を行うことで、より効率的に血管障害を防止できる可能性がある」と述べている。

 この研究は厚生労働省科学研究費補助金、文部科学省科学研究費補助金(21世紀COE)などの支援を得て実施され、研究成果は米国心臓学会(AHA)が発行する医学誌「Hypertension」オンライン版に7月19日付で発表された。

東北大学
Methylglyoxal Is a Predictor in Type 2 Diabetic Patients of Intima-Media Thickening and Elevation of Blood Pressure
Hypertension, Published online before print July 19, 2010, doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.110.156786

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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