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2010年07月29日

ヒトiPS細胞から膵臓を再生 文科省が動物実験を初承認

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1型糖尿病 医療の進歩
 ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)をブタの受精卵(胚)に移植し、試験管内で短期間だけ培養する研究計画が7月28日、文部科学省の専門委員会で承認された。

 この研究計画は、東京大医科学研究所の中内啓光教授らが、ブタの体内でヒトのiPS細胞から膵臓などを作り、将来に糖尿病患者に移植する再生医療を実現するための基礎研究として申請していたもの。

 iPS細胞は体のさまざまな種類の細胞に変化する能力のある万能細胞。iPS細胞を医療へ応用する再生医療は、世界中で期待されている。iPS細胞の技術を用いて、インスリンを分泌する膵臓(β細胞)や、人工透析患者に移植できる腎臓などを動物の体内でつくりだす研究が想定されている。

 中内教授らの研究チームは2008年に、iPS細胞を利用してマウスの体内で膵臓を作製することに成功した。膵臓にはインスリンを分泌するβ細胞も含まれ、血糖値を正常に保つ機能があることも確認した。

 これらの研究は、最終的にブタの体内でヒトの臓器をつくるために、基礎研究の一環として病気を再現したモデル動物を用いて行われる。動物の胚にヒトの細胞を移植する「動物性集合胚」が作成される。今回の作製の申請と承認は、文科省が指針を施行してから初めて。

 iPS細胞が本当に全身の細胞に変わるかを確かめるために、受精卵に移植して生殖細胞を作製する必要がある。2010年5月に新たな指針が策定され、一定の条件下で、ヒトの体性幹細胞から生殖細胞を作製する研究が認められるようになった。

 現在までに、iPS細胞をヒトの病気の治療に利用した治療は、世界中で一例も行われていない。再生した細胞を移植する再生医療が実現するまでに、安全なiPS細胞をつくりだす方法や、目的となる細胞に確実に分化させる方法の確立など、多くのハードルがある。

 この研究がヒトを対象とした治療に結びつくのはまだまだ先のことだが、iPS細胞を用いた研究成果を病気の治療に結び付けるために大きな一歩をふみだしたといえる。

特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文部科学省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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