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2010年03月15日
人工膵臓システムが睡眠中の低血糖を減らす 危険な低血糖を克服
- キーワード
- 1型糖尿病 インスリンポンプ/CGM
低血糖は患者ひとりひとり原因や事象が異なるが、意識レベルが低下するほどの低血糖をきたしたときは、ブドウ糖を摂取するなどの対応が必要となる。しかし、睡眠中に起きる低血糖は気付きにくく、特に1型糖尿病の子供や家族にとって深刻な問題となっている。
そこで、人工膵臓システムが新たに開発され、その安全性と有効性を検証した研究が米国で発表された。対象となったのは、5歳から18歳の入院中の1型糖尿病患者。
人工膵臓システムは血糖センサーとインスリンポンプを組み合わせたもので、患者が眠っているあいだに自動的に測定した血糖値にもとづきインスリン量を調整し投与する仕組みになっている。高度なコンピュータープログラムを用いインスリン投与量を管理するという。
人工膵臓デバイスを用いた患者では、従来型のインスリン皮下持続注入(CSII)に比べ、夜間に目標血糖値(70〜140mg/dL)を達成した時間が2倍になることが分かった。
研究を主導した英ケンブリッジ大学代謝科学研究所のRoman Hovorka氏は「人工膵臓システムは、より良いコントロールを維持するだけでなく、危険な低血糖リスクを低下させることが示された。クローズドループ(closed-loop)デバイスにより、低血糖を低減あるいは克服さえでき、患者が将来に合併症を発症するリスクを低下させる可能性がある」と述べてい
「1型糖尿病の子供の親にとって、もっとも大きな心配事は、子供が夜間に危険な低血糖を起こしていても、そのことに気がつかないことだ」とJDRF人工膵臓プロジェクトリーダーのAaron Kowalski氏は話す。
「人工膵臓システムを使えば、小児糖尿病での夜間の血糖コントロールを安全に行うことができることが実証された。今後は子供と成人の1型糖尿病患者での人工膵臓システムの利用を、医療機関から在宅へ移すための研究への努力が必要だ」。
ケンブリッジ大学の研究者らによるこの研究は、資金が国際若年性糖尿病研究財団(JDRF)により資金提供されたもので、英医学誌「Lancet(ランセット)」オンライン版に2月5日掲載された(印刷版は2月27日号に掲載)。
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