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2023年05月01日

連休中も糖尿病の管理を良好に 連休を上手に乗り切るための「8つのヒント」

 5月の連休は、ふだんの生活スタイルを維持するのが難しく、糖尿病の管理を乱しやすい時期だ。

 休日が続くと、アルコールも飲み過ぎてしまいがちになる。

 この時期を上手に乗り切るために、簡単に実行できる「8つのヒント」や、アルコールとの「上手な付き合い方」をご紹介する。

アフターコロナの連休
いつもと違う生活

 日本国内の新型コロナの新規感染者の数は、東京などでは増加傾向はみられるものの、全国的には下げ止まりになりになっている。

 新型コロナの感染症法上の位置づけは、5月に「5類」に移行され、感染対策は個人の判断に委ねることが基本となる。

 新型コロナの流行下では、感染を防ぐため、大勢で集まって談話するのをやめ、換気の悪い狭い場所を避けたり、旅行を断念したり、外出を自粛している人が多かった。

 いまなお、▼手洗いなどを習慣として行うこと、▼その場に応じたマスクの着用やせきエチケット、▼換気を行い、「3密」を回避することが呼びかけられている。

 いつもと違う生活スタイルを強いられ、連休中も気持ちが高まらないという人が多いかもしれない。

糖尿病の人の半数は連休中の過ごし方は難しいと実感

 米国糖尿病学会(ADA)と米国心臓学会(AHA)は、2型糖尿病とともに生きる45歳以上の米国成人1,000人以上を対象に、2021年10月~11月にオンライン調査を行った。

 その結果、2型糖尿病患者のほぼ半数(49%)は、連休中に糖尿病の管理をするのは、他の時期に比べ困難だと感じていることが分かった。

 食事の管理が上手にできていると感じる人は、通常の日であればほぼ4分の3(73%)に上るが、連休中は半分の52%にまで下がってしまう。

 連休を健康に過ごすために、具体的にどうすれば良いのかが分からず戸惑っているという人が28%、新型コロナを予防するために大人数での集会を避けているため、友人や知人に会いにくいと感じている人も14%に上った。

糖尿病の人の生活スタイルはすべての人にとって大切

 糖尿病とともに生きる人々は、心臓病、脳卒中、腎臓病などの深刻な合併症を予防するために、糖尿病を良好に管理する必要があるが、そのために食事や運動を管理して、服薬をきちんと守るのは、1年間休むことなく続くハードワークのようなものだ。

 「糖尿病とともに生きる人々にとって、連休をどのように過ごすかが、健康を維持するうえで課題になっています」と、家庭医学が専門の米ラッシュ大学医療センターのスティーブン ロスチャイルド氏は言う。

 「糖尿病のケアは特別なことをしているわけではありせん。糖尿病の人にとって良い健康的な環境や生活スタイルは、友人やご家族など、周囲にいるすべての人にとっても大切なものです」としている。

連休を上手に乗り切るための「8つのヒント」

 連休中は、ふだんの生活スタイルを維持するのが難しくなる。リラックスして過ごせる機会が増えるが、そのため食事に偏りが出たり、運動不足になり、余分なストレスをためこむおそれもある。

 「休日が続くと、多くの人はそれまで続けていた健康的な習慣を守れなくなりがちになります。休日が終わると、体重やウエスト周囲径を増やし、糖尿病の管理指標であるHbA1cを悪くする人も多いのです」と、ロスチャイルド氏は指摘する。

 「休日にはふだん通りの食事を続けるのが難しくなります。家族や知人との交流は心を満たしてくれますが、おいしい食べ物で胃を満たすときには注意が必要です。食事のときは食べるスピードを意識的に遅くし、一口一口をよく味わって食べることが大切です。重要なことは、食物をよく噛んで、味わって食べることです」とアドバイスしている。

 「計画通りにいかない日もあり、ときには羽目を外すこともあるでしょう。肝心なのは、あきらめないで、毎日の生活で学び、成長し、新しい目標を設定し、やる気を維持することです」と指摘している。

連休を上手に乗り切るための「8つのヒント」

 ラッシュ大学や米国糖尿病教育者協会(AADE)、英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、連休を健康的に過ごすために、次の対策をアドバイスしている。

1 連休中をどう過ごすか計画を練る
 連休中は生活が不規則になりがちで、ふだん通りの食生活を続けるのは難しくなる。仕事の片付け、友人や知人との会食、子供の相手をして過ごすなど、いつもの日課とは違う行動をするため、ストレスがたまりやすい時期でもある。
 事前に「いつ・どこで・何をするか」という予定を、カレンダーや手帳に書き留めておくと、健康的な食事や運動のための時間を確保できるようになる。

2 生活リズムを乱さないように計画的に
 連休中は生活リズムが乱れやすい時期だ。睡眠や体温、血圧、ホルモン分泌など体の基本的な機能はおよそ24時間のリズムを示す。この1日周期のリズムは「概日リズム」と呼ばれる。概日リズムを調整している「体内時計」は、生活習慣から大きな影響を受けている。
 体内時計がストレスに大きく影響することが研究で確かめられている。ストレスをためないために、体内時計を乱さないことが大切だ。
 体内時計を乱さないために、次のような工夫が役立つ――。
▼なるべく毎日決まった時間に起床・就寝する、▼食事の時間はなるべく通常の生活に合わせる、▼毎日同じ時間帯に運動する、▼毎日一定の時間、屋外で過ごす、▼散歩などリラックスできることをする、▼十分な睡眠をとる、▼昼寝をする場合は30分以内にとどめる。

3 運動を続ける
 運動や身体活動は自然なストレス解消法になる。血糖や血圧の管理にもつながり、多くの健康上のメリットがある。
 30分の適度な運動を週に5日行うのが理想だが、それが難しい場合は、1日に10~15分のウォーキングなどの運動を1日に2~3回とりいれても良い。
 ウォーキング以外でも、掃除などの家事、家族との散歩、ガーデニング、サッカーなどの遊び、子供や孫と遊ぶなど、生活活動はすべて運動になる。
 運動を続けるために、一緒に運動する仲間をつくり励ましあったり、家族と一緒にウォーキングなどをすると効果的だ。
 糖尿病性神経障害や網膜症など、糖尿病の合併症がある人は、運動を避けた方が良い場合もある。どのように運動をしたら良いかを、事前に主治医と相談しておくと良い。

4 食べ過ぎたカロリーを燃焼するのは大変
 会食やパーティーが続くと、自分がどれだけ食べたかを把握するのが難しくなる。パーティーでは多くの料理が出るので、つい食べ過ぎてしまうという人は多い。
 1日の食事で脂肪の多い食品を500kcal分余計にとる生活が続くと、摂り過ぎたカロリーは1週間で3,500kcalになり、2週間で体重が1kg増える計算になる。
 増え過ぎたカロリーを運動で燃焼するのは大変だ。食べ過ぎを防ぐことが、肥満を避けるためのもっとも有効な手段となる。
 会食などの予定があるときは、食欲を管理しやすくするために、野菜や低糖質の食品、全粒粉パンなどを軽く食べてから出かけるようにし、空腹の状態では行かないようにしよう。

5 自分が何を食べたいのか考えよう
 脳が満腹であると感知するために、食べはじめてから20分以上の時間が必要だ。食事では、良く味わいながら、なるべくゆっくり食べたい。
 料理を皿に盛るときはなるべく小さいお皿を選ぼう。皿が小さいと食事の量を抑えられ、満足感も得やすいという研究結果がある。
 揚げ物やバターたっぷりの高カロリーの食品を避けて、肉や魚でも、できるだけシンプルに調理されたものを選ぼう。サラダはヘルシーと思いがちだが、油分たっぷりのドレッシングをかけると高カロリーになるので注意が必要だ。
 パーティーなどの目的は、食べることだけではなく、人との会話や交流だ。片手にお皿、もう片方に飲み物となると、人と話すのも大変になる。そう意識しておけば、食べ過ぎや飲み過ぎを防げる。

6 食物繊維を十分に摂る
 食物繊維は、食物が胃から小腸へ移動する時間を遅らせ、吸収を遅くする。炭水化物を含む食品がゆっくり吸収されるようになるので、インスリンの分泌が食べた分に追いつかない体質の人でも、食後の血糖値上昇をある程度抑えることができる。
 食物繊維が豊富に含まれる野菜を食べれば、満腹感を得やすくなり、食べ過ぎを抑えられる。100gの生の野菜に2~3gの食物繊維が含まれている。茹でてかさを減らせば、野菜をたくさん食べられる。
 また、食物繊維が豊富に含まれるカット野菜などを、台所のすぐ手が届く場所に置いておくと、野菜の不足を補うことができる。
 3大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪)の中で、血糖を上昇させやすいのは炭水化物だ。食後の血糖値の上昇を抑えるために、玄米や全粒粉など食物繊維が豊富に含まれる精製されていない穀類を摂ったり、炭水化物をタンパク質や脂肪と同時に摂り、消化・吸収を遅くする工夫をするのも良い。

7 ストレスをためない
 ストレスによって、肥満やメタボに悪影響が出てくるおそれがある。ふだん通りの食事を続けられなくなったり、アルコールを飲み過ぎたり、運動不足が続くことも、ストレスの原因になる。
 連休中の休暇には、想定外の用事が入り忙しくなり、さらに生活が乱れやすくなる。この時期に外せない予定を作り過ぎないようにし、余裕をもって計画をたてよう。
 たとえ計画通りに1日を過ごせないときでも、くよくよと悩まないようにし、家族や仲間とともに過ごす時間を楽しもう。次の日から、食事や運動、血糖自己測定などの日課を取り戻せば、休日を有意義に過ごせる。
 睡眠を十分にとることも大切だ。睡眠不足になると、高脂肪・高糖質の食品を食べたくなり、血糖管理を良好に保つのが難しくなる。7~8時間の睡眠時間を目安に、余裕をもって1日を過ごそう。

8 体重を毎日はかる
 連休中は、体重管理が難しい時期だ。「食べ過ぎ」がもっとも起きやすいのがこの時期であることが、ハーバード公衆衛生大学院の調査で明らかになっている。
 多くの人がこの時期に体重を平均1.5kg以上増やすという。体重を増やさない人でも、平日は食べ過ぎないようにしても、週末には食べ過ぎてしまい、食事の管理を相殺するというサイクルを繰り返すことが多い。
 「少なくとも、今よりも体重を増やさないようにしよう」という気持ちを強くもつことが大切だ。体重を決まった時間に毎日はかることを習慣にすれば、体重を管理しやすい。体重計を台所や冷蔵庫のそばに置いて体重を毎日はかり、減量に成功した人もいる。

連休にアルコールを飲み過ぎないための5つの対策

 休日が続くと、アルコールを飲み過ぎてしまいがちになる。米国糖尿病学会(ADA)や米メイヨー クリニックなどは、休日が続くときの、アルコールとの「上手な付き合い方」を紹介している。

 「アルコールにはリラックス効果があり、ストレスの軽減を期待できますが、飲み過ぎには注意が必要です。安全な飲酒の方法を知っておくことが必要です」と、メイヨー クリニックのテリー シュニークロス氏は述べている。

アルコールの飲み過ぎにご注意
 アルコールはアルコールそのものの作用やアルコールの代謝により、血糖値に影響を与えます。飲み過ぎは糖尿病のリスクも高めるので注意が必要です。

食事をとらずに飲酒するのを避ける
 とくにインスリンや、SU薬などの経口血糖降下剤で薬物治療をしている人は、アルコールの急性効果として低血糖を起こしやすくなります。アルコールの代謝にともない、糖新生(肝臓での糖の産生)が抑制されるなど、血糖が下がりやすくなります。食事をとらずに飲酒するのは避けるべきです。
 アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険がともないます。食事もきちんととることが大切です。良質のタンパク質が多く含まれる魚や肉、大豆製品、ミネラルや食物繊維を多く含む野菜、とくに緑黄色野菜、海藻、キノコなどを食べることが勧められます。

お酒を飲むときは水も飲む
アルコールには利尿作用がありトイレが近くなります。排出された水分を補わないと、脱水状態になりやすいので、お酒を飲むときは、水も飲むようにしましょう。

薬を飲んでいる人は医師や薬剤師に相談
 2型糖尿病の治療に広く用いられているビグアナイド薬(メトホルミン)は、アルコールを過度に飲むと、副作用である乳酸アシドーシスが起こりやすくなります。とくに過度の飲酒を続けている人では、肝臓での乳酸の代謝能が低下しているおそれがあるので、注意が必要です。吐気・嘔吐・腹痛などの胃腸症状や過呼吸などがある場合は、医師に相談してください。
 SGLT2阻害薬は、血液中の糖を尿中に排出させることで血糖値を下げるタイプの治療薬。過度のアルコールを摂取したり、感染症にかかったり、脱水の状態にあると副作用が起こりやすくなります。このタイプの薬を飲んでいるときにも、アルコールの飲み過ぎには注意が必要です。事前に医師や薬剤師に相談して、注意点を聞いておきましょう。

お酒との付き合いを考える
 お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておくことも大切。とくに日本人の半数はお酒に弱い遺伝子をもっているとされます。
 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用しましょう。宴会やパーティーなどの目的は、食べたり飲んだりではなく人との会話や交流と、割り切って考えることも大切。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは切実な問題です。

Survey: Holidays Place Extra Stress on People Managing Type 2 Diabetes(米国糖尿病学会 2021年12月14日)
Healthy Eating on Holiday (英国糖尿病学会)
Holiday (米国糖尿病教育者協会)
Holidays and Diabetes (ラッシュ大学)
Alcohol use: Weighing risks and benefits (メイヨー クリニック 2021年12月11日)
Alcohol and Diabetes (米国糖尿病学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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