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2023年04月26日

「低糖質」の食品は糖尿病の人になぜ良い? 「低糖質食品」を上手に活用 糖質や脂肪が多いと脳が学習

 ポテトチップスやチョコレートバー、菓子パン、ドーナツ、コーラなど糖質の多い高カロリーの甘い食品や飲料を摂り過ぎると、脳はそうした食品を好むことを学び、無意識のうちにやめられなくなってしまうという研究が発表された。

 糖質を減らし、カロリーをオフにするために、カロリーや糖類を抑えた低カロリー甘味料を上手に活用したり、低糖質の食品を利用する方法がある。

 糖質を多く含む食品を、低糖質の食品に置き換える動きは、世界的に高まっている。

糖質は大切な栄養素 でも摂り過ぎにはご注意

 糖質は体のエネルギー源として欠かせない大切な栄養素だ。しかし、過剰に摂っていると、とくに食後の血糖値が高くなりやすくなり、「肥満」にもつながりやすい。

 摂取した糖分は、ブドウ糖として血管に入り、全身のエネルギー源になる。糖質を摂り過ぎると、血液中のブドウ糖が増えたり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが通常より多く分泌され、脂肪が体に蓄積されやすくなる。インスリンの分泌が足りなくなったり、その作用が低下すると、血糖値が上昇するようになる。

 糖質を摂り過ぎている人は、それを減らせば、とくに食後の血糖値は上がりにくくなる。糖質を減らすことで、体内のエネルギー源であるブドウ糖が減り、それに代わり体内に蓄積されている脂肪が使われるようになり、体重が減ることも期待できる。

糖質や脂肪の多い食品を食べ過ぎると脳がそれを"学習"

 ポテトチップスやチョコレートバー、スナック菓子や菓子パン、ドーナツ、フライドポテト、コーラなどの高カロリー飲料などの食品は、健康的とは言えないことは分かっていても、コンビニやスーパーなどでつい手がのびてしまう。

 そうした糖質や脂肪が多く含まれる、高糖質・高カロリーの食品を食べ過ぎていると、脳がそれを学習し、"快楽物質"とも呼ばれるドーパミンの働きが活性化されるようになり、食べるのをやめられなくなるという研究が発表された。

 ドーパミンは神経伝達物質のひとつで、快楽や幸福感が生じる原因となる脳内報酬系の活性化で中心的な役割を果たしている。

 「糖質などの多い甘い高カロリーの食品を食べ続けると、脳はそうした食品を好むことを学びます。そのため、過剰に摂取していると、無意識のうちに高カロリーの食品を欲しがるようになります」と、ドイツのマックス プランク代謝研究所のシャルミリ エドウィン タナラジャ氏は言う。

 研究グループは、50人のボランティアを対象に、ランダム化比較試験を実施した。参加者を2つのグループに分け、1つのグループには通常の食事に加えて、糖質や脂肪を多く含むプリンを食べ続けてもらい、もう一方のグループには、糖質や脂肪の少ないプリンを食べてもらう実験を行い、8週間後に脳のどのような変化が起きているかを調べた。

糖質の摂り過ぎにより糖尿病や肥満のリスクは上昇

 中国の四川大学などによる別の研究では、糖質の過剰な摂取により、2型糖尿病・肥満・痛風・心臓病・脳卒中・うつ病・がん、虫歯などの45の健康障害のリスクが上昇し、さらには死亡リスクが高まることも示された。

 「糖質を過剰に摂取していると、健康に悪影響がもたらされることは広く知られています。糖質を摂り過ぎると、エネルギーとして消費されずに、体に脂肪組織として蓄積されてしまいます」と、同大学臨床栄養学のティンティン ダイ氏は言う。

 「世界保健機関(WHO)などは、高カロリーのお菓子や飲料になどに含まれる添加糖など、糖質の摂取量が1日の総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを提案しています」としている。

 加工食品や調理中に加えられる単糖や二糖類などの糖類について、推奨される1日の摂取量は、食事の総エネルギー摂取量の10%未満、砂糖に換算すると1日に25g(小さじ6杯)までだという。

 なお、チョコレートバーや菓子パン、スナック菓子、清涼飲料などの高カロリーの食品や飲料などに含まれる糖類は、フルクトースなどを主成分とする異性化糖(添加糖)が多い。こうした糖質は砂糖よりも安価に大量生産ができる。

 研究グループはこの研究で、成人や子供の健康と食事について調べた8,601件の研究を解析し、うち観察研究やランダム化比較試験を含む質の高い73件の研究を詳しく調べた。

低糖質の食品を利用するのは世界的な流れ

ペプシの広告
 糖質を制限するためには、カロリーや糖類を抑えた低カロリー甘味料などを上手に活用したり、低糖質の食品を利用する方法がある。糖質を多く含む食品を、体に吸収されない低カロリー・低糖質の食品に置き換える動きは、世界的に高まっている。

 利用されている低カロリー甘味料の安全性は、各国の食品安全当局によって確認されている。食品や飲料の基準で承認されている摂取量であれば、低カロリー甘味料は安全に使えることが確かめられている。

 英国糖尿病学会(Diabetes UK)の発表によると、コーラなどを販売している飲料・食品大手のペプシコは、スーパーマーケットや小売店などで販売しているコーラなどの主力商品を、糖質を57%減らしたものなどに代替する戦略をとりはじめた。

 ペプシの330ミリリットルの缶には、これまで糖質が36g含まれていたが、これを15gに減らした。また、2リットルのボトルには糖質が213g含まれていたが、これを91gに減らしたという。

 これは、世界的に健康志向の流れが加速しているのを受けたもの。同社では、「糖質ゼロ」の商品も増やしており、スポーツの競技やテレビ中継などで広告を流すときは、「糖質ゼロ」や「低糖質」の商品を増やすなどの対策をしているという。

 同学会では「多くの加工食品のパッケージには、栄養表示がしてあり、含まれる糖質や脂肪などの量を確認できます。スーパーやコンビニでこうした食品を買うときは、栄養表示を見ることをお勧めします」とコメントしている。

低血糖対策には低糖質の飲料などは使えないことにもご注意

 ただし、糖尿病の人が、低カロリー甘味料などを使った、低糖質の食品を利用するときには、別の注意も必要となる。

 インスリンなど血糖値を下げる薬剤を使用していると、血糖値が低くなり過ぎる「低血糖」が起こることがあり、その対策として、ブドウ糖などの糖質を含む食品や飲料が必要になることがあることだ。

 一般に、血糖値が70mg/dL以下になると、体は血糖値を上げようとし、さらに血糖値が50mg/dL未満になると、脳などの中枢神経が糖不足の状態になる。そうなると、頭痛や目のかすみ、集中力の低下など、低血糖の症状があらわれる。

 さらに血糖値が下がると、意識のない状態や昏睡になるおそれがある。低血糖時には、ブドウ糖やブドウ糖を含む飲料を摂り対応する必要がある。

 英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、「これまで低血糖対策として、コーラなどの加糖飲料を利用する患者さんも多かったのですが、低カロリー甘味料などを使った低糖質の飲料は、低血糖対策には向いていないことに注意する必要があります」とコメントしている。

 同学会が勧めている低血糖対策は、ブドウ糖を含むタブレットやジェルを持ち歩くこと。低血糖の症状があるときは、ブドウ糖を10gあるいは20gを含むタブレットや飲料などを摂る対応をする。

 なお、低血糖であってもブドウ糖を口から摂る対応のできない状況の場合は、家族など周りにいる人が、血糖値を上げるためにグルカゴン製剤(注射薬または点鼻薬)を使う方法がある。グルカゴン製剤は日本でも保険適用になっている。

Low-Calorie Sweeteners (ハーバード公衆衛生大学院 2023年4月)
Sweets change our brain: Why we can't keep our hands off chocolate bars and co (マックス プランク代謝研究所 2023年3月22日)
Habitual daily intake of a sweet and fatty snack modulates reward processing in humans (Cell Metabolism 2023年3月22日)
Limit added sugar to six teaspoons a day to improve health, urge experts (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2023年4月5日)
Dietary sugar consumption and health: umbrella review (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2023年4月5日)
WHO calls on countries to reduce sugars intake among adults and children (世界保健機関 2015年3月4日)
Pepsi drink to be sold in supermarkets with 57% less sugar, PepsiCo confirms (英国糖尿病学会 2023年3月17日)
Pepsi® Launches New And Improved Pepsi Zero Sugar, Proving Zero Never Tasted So Good (ペプシコ 2023年1月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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