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2020年01月30日
糖尿病でも運動習慣があれば介護リスクを低減できる 日本人のビッグデータを解析
糖尿病のある人は、運動習慣があれば、介護リスクを糖尿病でない人と同等に低減できる――。
新潟大学の研究チームが、新潟県三条市における医療ビッグデータを統合解析した研究で、運動習慣が介護発生リスクを低減することが明らかになった。
新潟大学の研究チームが、新潟県三条市における医療ビッグデータを統合解析した研究で、運動習慣が介護発生リスクを低減することが明らかになった。
特定健診とレセプトと介護保険のビッグデータを解析
研究は、新潟大学医学部血液・内分泌・代謝内科研究室の曽根博仁教授、藤原和哉准教授らの研究チームによるもの。研究成果は、英医学誌「BMJ Open Diabetes Research & Care」に発表された。
超高齢社会を迎えた日本では、要介護状態を予防し健康寿命を延ばすことが国民的課題になっている。2型糖尿病をはじめとする生活習慣病、および運動不足によって、動脈硬化疾患や死亡リスクが上昇することが知られている。
そこで研究チームは、生活習慣病や運動不足が、要介護状態に陥る、つまり健康寿命が終わるリスクをどの程度上げるかを大規模・精密に検討する研究を行った。
JMDCと共同で、新潟県三条市における特定健診と診療報酬請求(レセプト)と介護保険のビッグデータを統合解析し、生活習慣(病)と要介護状態に陥るリスクとの関係を解析した。
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糖尿病患者であっても、運動習慣があれば、介護リスクを減らせる
その結果、介護発生リスクは、「糖尿病」があると1.7倍に上昇し、「運動習慣」がないと1.8倍に上昇することが分かった。この場合の運動習慣は、中等度の運動を週に2回30分以上、1年間継続した場合をさす。
さらに介護発生リスクは、「糖尿病」、「高血圧」、「脂質異常症」、「運動習慣なし」の4項目すべてが当てはまると、いずれもないも場合に比べ4倍に達した。
また、運動習慣のない糖尿病患者の介護発生リスクが、運動習慣のある非糖尿病者の3.2倍に上昇したのに対し、糖尿病があっても運動習慣があれば、そのリスクは非糖尿病者と変わらないことも明らかになった。
これは、たとえ糖尿病患者であっても、運動習慣があれば、介護発生リスクを糖尿病でない人と同じように低減できる可能性を示している。
糖尿病があり運動習慣がない人の介護リスクは3.2倍に上昇
研究チームは、特定健診結果を含む健康保険レセプトと介護保険データベースとを合わせた分析により、2012~2015年に健診を受けた、過去に心疾患、脳血管疾患、介護認定の既往のない39~98歳の9,673人を抽出。それらの対象者における要介護状態(介護保険における要支援または要介護)の新規発生について縦断的に検討した。
さらに年齢、肥満、高血圧、脂質異常症、喫煙などの、既知の身体機能低下に関連するリスク因子の影響を除いて、糖尿病をはじめとする生活習慣病と運動習慣(1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2回以上1年以上継続)が、介護リスク発生にどの程度影響するかを検討した。
その結果、追跡期間(中央値)3.7年で要介護状態の新規発生は165人だった。糖尿病、運動習慣がないことは、要介護発生のリスクをそれぞれ1.7倍、1.8倍に上昇させた。介護発生リスクは、「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「運動習慣なし」の4項目全てを満たすと、いずれもない場合の4倍に達した。
運動習慣をもつことは介護予防の面からも重要
レセプトデータベースを利用したこれまでの研究の多くは、請求に使われた病名(保険病名)をそのまま使用していたが、現場診療では、検査の必要上などから、確実な診断がつく前に病名を付けたり、実施した検査とつじつまを合わせるために疑い例や軽症例でも病名を付けたりすることがあり、疾患発症について正確に把握することは難しかった。
今回の研究では、保険病名に頼らず、健診結果と診療内容を精査することで、追跡開始時の情報を正確に特定することが可能になった。
研究チームはこれまでも、医療保健ビッグデータを活用し、生活習慣病と動脈硬化疾患、腎疾患、寿命などの関係を多数解明し、科学的根拠にもとづく医療(EBM)や、科学的根拠にもとづく政策立案(EBPM)に貢献してきた。
今回の研究で、運動習慣をもつことが、介護予防の面からも重要であることが明らかになった。研究チームは今後、介護発生を予防する、すなわち健康寿命を延ばす因子についてさらに研究を進めていく予定としている。
Combination of Diabetes Mellitus and Lack of Habitual Physical Activity is a Risk Factor for Functional Disability in Japanese(BMJ Open Diabetes Research & Care 2020年1月25日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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