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2019年09月18日

毎日の家事が女性の寿命を延ばす 軽い身体活動でも死亡リスクは低下

 洗濯、掃除、料理、皿洗い、ごみ捨て――毎日の家事がわずらわしいと思う女性は多いかもしれない。しかし、こうした軽めの身体活動であっても、毎日積み重ねれば女性の寿命を延ばすのに効果的であることが、ニューヨーク州立大学やカリフォルニア大学などの研究で明らかになった。
どんなことでも体を動かすことは重要
 63〜99歳の6,000人以上の女性を対象とした研究で、座ったまま過ごす時間を減らし、わずかに運動レベルが高い程度の身体活動を行うことで、死亡リスクを引き下げる十分な効果を得られることが示された。

 最近の量販店などで市販されている活動量計は縦・横・前後の3軸加速度センサーを内蔵しているものが多く、身体をひねるなどわずかな動作まで感知する。

 研究チームは、研究に参加した女性に活動量計を週に4日以上、1日に10時間以上身に着けてもらい、3年以上にわたり身体活動量を計測する研究を行った。

 その結果、1日30分程度の軽い身体活動に従事した女性の死亡リスクは12%低くなることが分かった。身体活動の強度を高めるとさらに効果的で、中強度~活発な活動を毎日30分程度行うと死亡リスクは39%低下した。

 軽めの身体活動には、衣服の折り畳み、床の掃除、窓の洗浄などの日常的な雑事が含まれる。こうした家事は、高齢者では1日の身体活動の55%以上を占める。中強度~活発な活動は、ゆっくりとしたペースから早いペースのウォーキングなどだ。
家事などの軽い身体活動でも毎日続ければ効果がある
 「運動のガイドイランの推奨を下回るレベルの身体活動であっても、健康増進の効果を得られることが、高齢の女性ではじめて示されました。運動ガイドラインでは中強度以上の運動が勧められていますが、実行できないという女性も多くいます」と、ニューヨーク州立大学バッファロー校公衆衛生学部疫学・環境医学科の准教授であるマイケル ラモント氏は言う。

 「運動ガイドイランで推奨されている運動強度を満たさなくとも、体を動かすことは必要です。もっとも危険なのは、何もしないことです」と、ラモント氏は指摘する。

 研究では、すべての年齢の女性で、運動や身体活動は死亡リスクを低下させることも分かった。「運動による死亡リスクの減少は、80歳以上の女性でも、80歳未満の女性と同じようにみられました」と、カリフォルニア大学サンディエゴ校疫学部のアンドレア ラクロワ教授は言う。

 運動能力の低い女性でも、能力の高い女性と同じように、運動の恩恵を得られるという。「運動を始めるのに遅すぎることはありません。大切な事は、なるべく活発に動くようにし、日常での身体活動を増やし、ウォーキングなどの運動を始めることです」と、ラクロワ教授は指摘する。
座ったまま過ごす時間を減らす努力が必要
 一般的に女性の平均寿命は男性よりも長い。米国でも高齢化が進んでおり、高齢の女性の人口は増えている。65歳以上の高齢者の人口は2050年までに7,700万人に達すると予測されており、その多くは女性だ。

 「高齢化が進む社会において、女性に軽めの運動でも良いから体を動かすことを推奨することには意義があります。年齢、病気、体調不良などの理由のため、激しい活動をできない女性も多くいるからです」と、ラモント氏は言う。

 高齢の女性が1日で座ったり横たわったりして、連続して座っている時間が長くなるほど、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクが上昇するという研究も報告されている。60〜79歳の女性の7割近くが心血管疾患を発症しているという報告もある。

 「とくに高齢の女性で、座りがちな時間を短くし、体を動かすことを奨励するのは、公衆衛生上の大きな利益をもたらす可能性があります。60歳以上のすべての女性に、できる限り頻繁に立ち上がって動き回り、座ったまま過ごす時間を中断する努力をすることをお勧めします」と、ラモント氏は強調している。

UB-led study finds that for older women, every movement matters(ニューヨーク州立大学バッファロー校 2017年11月16日)
Accelerometer‐Measured Physical Activity and Mortality in Women Aged 63 to 99(Journal of the American Geriatrics Society 2017年11月16日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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