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2019年06月27日

人生の後半戦で「運動療法」は絶対に必要 若さを保つためにも必須

 運動を習慣的に行っている高齢者はADL(日常生活動作)が向上し、自立した生活をおくりやすくなることが、オーストリアの研究で明らかになった。
 ウォーキングなどの運動をできれば毎日行い、うち2日以上はバランスを向上させる筋力トレーニングを含めることが勧められている。筋肉だけでなく、心肺機能も改善し、認知症やうつ病の予防効果も期待できる。
運動を続けている人はわずか3分の1
 研究は、オーストリア公衆衛生学会の会長であるトーマス ドルナー氏と、ウィーン医科大学産業医学部の部長であるリチャード クレヴェンナ氏が共同で行ったもの。詳細は5月の欧州公衆衛生週間に発表された。

 研究の対象となったのは、オーストリア健康調査に参加した65歳以上のオーストリア人3,308人。身体活動調査票を用い身体能力を測定し、生活習慣病についてのアンケートに回答してもらい、高血圧や2型糖尿病など17種類の慢性疾患の診療記録を参照した。

 その結果、運動ガイドラインで推奨されている筋力トレーニングを毎週実行しているのは、わずか3分の1だけであることが明らかになった。運動に必要な持久力を維持できている高齢者はおよそ半分だった。研究者は、欧州各地で実施された運動に関する調査でも、同様の結果が示されていることを指摘している。

関連情報
若さを維持するためにどんな運動が必要か
 ドルナー氏は、若さを維持するために必要な運動として、▼持久力トレーニング、▼筋力トレーニング、▼高強度インターバルトレーニング――を勧めている。高齢者の運動について、「ADL」と「IADL」を維持する必要性を指摘している。

 「ADL(日常生活動作)」は、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「食事、排泄、入浴、衣服の着脱、移動、起居動作」などの基本的な繰り返し動作をさす。高齢者の身体能力や日常生活のレベルをはかるための重要な指標となる。

 これに対し、「手段的日常生活動作(IADL)」は、基本的なADLよりもさらに複雑な日常生活動作をさす。「掃除・料理・洗濯・買い物などの家事、交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味」などをさす。

 研究では、運動をする習慣のある高齢者は、より自立しており、日常的な活動をより安全に無理なく行える傾向があることが明らかになった。

 運動を習慣として続けることは、高血圧、心血管疾患、2型糖尿病のリスクを減少させ、死亡率の低下、心肺フィットネスレベルの向上、適正体重を維持するために効果的であることが示された。

 最近の研究では、運動は認知機能を向上させ認知症の予防に有利で、うつ病の発症も減少させることも分かっている。

 「運動ガイドラインで推奨されている運動量を毎週こなしている高齢者は、そうでない人に比べ、ADLの管理が3倍、IADLの実行が2倍、それぞれ改善していました」と、ドルナー氏は言う。
運動をどれくらいすると良いのか
 ドルナー氏は、ウォーキングなどの中強度の運動を週に計150分行うのに加え、椅子に座って行うスクワットなどの筋力トレーニングを週に2回以上行うことを勧めている。

 ウォーキングを行うときは、「気持ちよく話すことができるが、歌うことはできないぐらいの十分な速さで歩く」ことが基準となる。

 これに加えて、体の大きな筋肉を使って行うスクワットなどの運動を、1回に10回程度行うことが推奨される。運動習慣のない人は、1日1回から始め、徐々に2〜3回に増やしていき、12〜15回に増やすことを目標とする。

 ウォーキングや筋力トレーニング以外にも、徒歩による通勤、家事、散歩、水泳、ガーデニングなど、あらゆる日常の身体活動は運動になる。

 「多くの研究で運動の効果は証明されていますが、実践している人はそう多くありません。健康維持と、自立した生活を長く維持するために、あらゆる年齢層の人々がもっと体を動かし、積極的に運動する必要があります」と、クレヴェンナ氏は強調している。

 世界保健機関(WHO)によると、運動不足が原因で、世界で毎年320万人が命を落としている。「身体活動レベルを引き上げるために、座りがちな生活をあらためる必要があります。各国の政府は、交通渋滞の多い地域に歩道を整備し、大気汚染を防ぎ、公園やスポーツ施設を整備する必要があります」と、指摘している。

Health benefits of exercising into old age(ウィーン医科大学 2019年5月13日)
Association between physical activity and the utilization of general practitioners in different age groups(Wiener klinische Wochenschrift 2019年5月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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