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2019年05月30日
「インターバル運動」が2型糖尿病患者の心臓を守る 3ヵ月の運動で効果
2型糖尿病の人が、低強度の運動と高強度の運動を交互に行う「インターバル運動」を続けると、心臓の機能を向上できるという研究が発表された。3ヵ月の運動で確かな効果を得られるという。
低強度と高強度の運動を交互に繰り返す
「インターバル運動」
「インターバル運動」は、通常のウォーキングなどの低強度の運動のあいだに、活発なウォーキングを挟み、低強度の運動と高強度の運動を交互に行う運動法。短い休息を挟み、脈を整えながら続けると、運動に慣れていない人でも無理なく安全に始められ、運動意欲も向上できる効果的な運動として注目されている。
これまでは、健康維持・増進のためには、ややキツイと感じるぐらいの中強度の運動が推奨されてきた。しかし、「運動する時間がない」「運動自体が楽しくない」などの理由で、運動習慣がない成人が7割に及んでいる。
低強度の運動と高強度の運動を交互に繰り返す「インターバル運動」であれば、短期間で体脂肪を減らし、心肺機能を向上させ、筋肉をつけることができるという。
短時間のトレーニングで筋肉のミトコンドリア機能を改善して、エネルギー効率を高められることが確かめられており、糖尿病の人にも有用な運動として期待されている。
「インターバル運動」
3ヵ月の「インターバル運動」は効果がある
ニュージーランドのオタゴ大学の研究で、2型糖尿病の人が「インターバル運動」を3ヵ月続けると、心機能を改善できることが明らかになった。
研究は、オタゴ大学ダニーデン医学部のジュネビエーブ ウイルソン氏が、心臓病専門医のクリス バルディ氏らと共同で研究を行ったもの。
これまでの研究で、食事や運動などの生活スタイルを改善し、血糖コントロールを改善することで、糖尿病のコンディションが良くなり、心血管疾患や脳卒中などの合併症を抑えられることが分かっている。しかし、多くの人にとって生活スタイルを改善するのは容易ではなく、心血管疾患の減少は実現していない。
「通常のウォーキングに、強度の強い活発なウォーキングを挟み込むと、2型糖尿病によって引き起こされる心機能の喪失を軽減し、元の健康な状態に戻せることが分かりました。こうした運動は実用的で、長続きしやすく、また費用もかかりません」と、ウイルソン氏は言う。
「インターバル運動」は長続きしやすい
「インターバル運動」は、通常のウォーキングと、高強度の運動を交互に行うもので、強度の高い運動は、短い時間で良いので最大心拍数が80~90%になるように調整するのがコツだという。これは階段の昇降運動に相当する、息が切れ汗ばむくらいの強度だ。高強度の運動を数分行った後で、通常の緩めのウォーキングに戻し、息を整える。
研究チームは、ウォーキングを全体で25分間行い、その中に10分間の強度の高い活発なウォーキングを挟むことを目標に、運動プログラムを作成した。16人の2型糖尿病の成人を対象に、「インターバル運動」に取り組むグループと、通常の運動に取り組むグループに無作為に分け、3ヵ月間続けてもらった。
その結果、心臓の左心室の拡張期の容積(LVEDV)や左心室の1回拍出量(LVSV)などを測定したところ、「インターバル運動」に取り組んだグループでは3ヵ月後、ともに増加しており、最高酸素摂取量(Peak VO2)も15%増加した。通常の運動を行ったグループでは変化はみられなかった。
2型糖尿病にとって「インターバル運動」は効果的であり、安全に行え、しかも長続きしやすいことが示された。研究に参加した患者は、80%以上が「インターバル運動」を続けたという。
ウォーキングなどの有酸素運動は最善の方法
ウォーキングなどの有酸素運動は、心臓病を予防するための最善の方法であり、糖尿病の治療では不可欠だ。しかし、糖尿病の人は罹病期間が長く、心肺機能が低下していることが多く、そのことが運動を効果的に行うのを困難にしている。
「今回の研究は、2型糖尿病の人がインターバル運動を行うことで、糖尿病でない人と同等に酸素摂取量を増やすことができ、左心室の運動反応を増加できることが示された点が大きい」と、バルディ氏は言う。
これまで、どうすれば糖尿病の人が激しい運動を安全に行えるかは不明だったが、「専門家の指導があれば、ほとんどの人は安全に運動を続けられることが分かりました。インターバル運動は、運動継続率も高く、運動機能を発症前まで戻すことも可能です。糖尿病が要因の心疾患を防ぐために、運動は行うことはとても重要です」と、バルディ氏は強調する。
High-intensity exercise may restore heart function in people with type 2 diabetes(オタゴ大学 2019年5月23日)HIIT Improves Left Ventricular Exercise Response in Adults with Type 2 Diabetes(Medicine & Science in Sports & Exercise 2019年6月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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