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2019年04月19日
糖尿病の人は「アルコール」に注意 連休に飲み過ぎないための7つの対策

お酒は適量を飲むと、ストレスを解消できる効果を期待できるが、量が増えると確実に心と体の健康を損なう原因になる。糖尿病のある人は、アルコールの飲み過ぎによるダメージを受けやすいという調査結果が発表された。
休日が続くと、アルコールを飲み過ぎてしまいがちになる。米国糖尿病学会(ADA)などは、アルコールとの「上手な付き合い方」を紹介している。
休日が続くと、アルコールを飲み過ぎてしまいがちになる。米国糖尿病学会(ADA)などは、アルコールとの「上手な付き合い方」を紹介している。
つい飲み過ぎてしまうのがお酒
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次いで高カロリーだ。カロリーの他に栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのがお酒だ。さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4〜5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。
関連情報
適量であれば血糖コントロールが良好という報告も
アルコール摂取量と糖尿病などのリスクはJカーブの関係にあるとされる。血糖コントロールは、アルコールの摂取量が適量であると良好で、飲み過ぎると悪化するという、Jカーブ現象が報告されている。
アルコール摂取と糖尿病の発症リスクを調べた研究でも、純アルコール量で約20〜25g程度の飲酒によりリスクが低下し、それより大量に飲むとその効果は打ち消られるという報告がある。
アルコールを飲むときの注意点
米国糖尿病学会(ADA)は、糖尿病とともに生きる人がアルコールを飲むときに、下記の注意が必要だとアドバイスしている。
- お酒を飲むときは水も飲む。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。
- 血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を十分に摂らずに飲酒すると低血糖になるおそれがある。食事量が低下すると、肝臓のグリコーゲンが減少し、さらにアルコールの代謝にともなう代謝経路の変化により、糖新生(肝臓での糖の産生)が抑制されるからだ。
- とくにインスリンや、SU薬などの経口血糖降下剤で薬物治療をしている人は、アルコールの急性効果として低血糖を起こしやすくなる。食事をとらずに飲酒するのは避けるべきだ。
- 2型糖尿病の治療に広く用いられているビグアナイド薬は、アルコールを過度に飲むと、副作用である乳酸アシドーシスが起こりやすくなる。飲み過ぎにはくれぐれも注意したい。脱水を防ぐために、十分な水分補給も忘れずに。
- SGLT2阻害薬は、血液中の糖を尿中に排出させることで血糖値を下げるタイプの治療薬。過度のアルコールを摂取すると脱水が起こりやすくなるので、このタイプの薬を飲んでいるときには注意をする。
- アルコールはアルコールそのものの作用やアルコールの代謝により血糖値に影響を与える。アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険がともなう。
- 摂取されたアルコールは、消化を受けないで胃や小腸で速やかに吸収される。良質のタンパク質が多く含まれる魚や肉、大豆製品、ミネラルや食物繊維を多く含む野菜、とくに緑黄色野菜、海藻、キノコなどを食べることが勧められる。
- お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。
- 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。
純アルコール量で約20〜25gが限度
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている。これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)が目安となる。
アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02〜0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。0.05〜0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。
一般的に、純アルコール量で約20〜25gを限度とするのが上手なお酒の飲み方といえる。これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量だ。
体重約60kgの人が日本酒にして2合のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3〜4時間体内にとどまる。それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6〜7時間かかる。
これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いにもなりやすいので注意が必要だ
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない

寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。
睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。アルコールが体内から消失するまでにおよそ6〜7時間がかかる。就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。
飲み過ぎは体にも心にも良くない
適量の飲酒は気分を良くし、リラックス効果もありストレス解消になるが、飲み過ぎは心にも体にも好ましくない影響を及ぼす。また、強いストレスを感じているときにお酒で解消しようとすると逆効果になることもある。
糖尿病のある人では、糖尿病のない人に比べ、飲酒による事故や死亡のリスクが高いことが、フィンランドのヘルシンキ大学病院の研究で明らかになった。
研究チームは、計43万4,629人を対象に平均7.1年間の追跡調査を実施した。うち糖尿病ある人が20万8,148人で、その76%が飲み薬のみで治療を受けていた。
糖尿病のある人の飲酒に関連する死亡リスクは、糖尿病のない人に比べ、飲み薬を服用している男性で1.71倍に、女性で2.10倍に上昇した。
インスリン注射を行っている人では、治療がより複雑になる。飲酒に関連する死亡リスクは、インスリン注射を行っている男性で6.92倍に、女性でも10.60倍に上昇した。
糖尿病の人を支える心理的・社会的なサポートが必要
「糖尿病の自己管理は心に大きな負担をもたらします。毎日インスリンを注射し、血糖値をチェックし、食事や運動も管理し、血糖コントロールを良好に維持するのは大変なことです」と、ヘルシンキ大学病院のレオ ニスカネン教授は言う。
糖尿病とともに生きる人々は、とくに血糖コントロールがうまくいかないときに、大きなストレスを抱え不安に陥りやすい。糖尿病の治療は大きな精神的な負担を強いるので、アルコールを飲むことでストレスを解消しようとする人がいても無理のないことだ。
「糖尿病とともに生きる人々を支える心理的・社会的なサポートが必要です。医師や医療スタッフは、糖尿病患者のストレスを効果的に軽減しサポートするために何が必要か、よく考えて対策しておく必要があります」と、ニスカネン教授は指摘している。
アルコール(米国糖尿病学会 2017年10月16日)The relationship between alcohol consumption and glycemic control among patients with diabetes: the Kaiser Permanente Northern California Diabetes Registry(Journal of General Internal Medicine 2008年3月)
Alcohol as a risk factor for type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis(Diabetes Care 2009年11月)
VicHealth National Community Attitudes Survey: awareness and behaviours of low carb beer drinkers(VicHealth 2010年12月)
Diabetic patients are more at risk of death from alcohol, accidents and suicide(欧州内分泌学会 2018年10月12日)
Excess mortality in Finnish diabetic subjects due to alcohol, accidents and suicide: a nationwide study(European Journal of Endocrinology 2018年10月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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