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2019年04月05日
糖尿病の食事療法にも変化が必要 「カロリー制限 vs 糖質制限」どちらが良いのか?

「低脂肪ダイエット」(炭水化物は多め)と「低炭水化物ダイエット」(脂肪は多め)のどちらがより優れているのか? 世界の医療従事者や研究者を悩ませているこの問題に一石を投じる研究が発表された。
食事療法にも新たな視点が必要
ハーバード公衆衛生大学院の研究チームが科学誌「サイエンス」に発表した論文によると、食事療法のコンセンサスを得るための新たな戦略は、脂質や炭水化物の摂り方をコントロールすることと、食事療法を患者1人ひとりに合わせて個別化することだ。
糖質は三大栄養素の「炭水化物」に含まれていて、血糖値を上昇させる要因になる。糖質の摂取を適正にすれば、血糖上昇を抑えることができる――「低炭水化物ダイエット」の支持者はこう主張する。
ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、この考え方を支持している。三大栄養素である「たんぱく質(Protein)」「脂質(Fat)」「炭水化物(Carbohydrate)」の構成比を示す「PFCバランス」については、すべての人に最適化したシンプルで共通するものは存在しないと指摘している。
一方で、糖質の摂り過ぎを抑えることや、全粒粉や玄米など精製されていない穀物を摂ることが、体重コントロールを改善し、2型糖尿病などの慢性疾患のリスクを下げるのに有利であるなど、食事療法において一定のコンセンサスを得ている情報もある。
「食事療法をめぐる論争について、栄養の専門家だけでなく幅広く意見を聞き、これまで提示された意見を超えた大きな視点で考える必要があります。低脂肪ダイエットと低炭水化物ダイエットの差異のみにこだわるのではなく、何が共通しているかに目を向けることが求められます」と、ハーバード公衆衛生大学院栄養学部のデイビッド ルートヴィヒ教授は言う。
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脂肪と炭水化物の摂り方を工夫すれば食事は良くなる
脂肪と炭水化物の摂取について、これまで食事ガイドラインで指摘されている大きなポイントは次の通りだという――。
(1)脂肪の過剰摂取は、2型糖尿病、心疾患、がんの発症リスクを上昇させる。これらのリスクを軽減するために低脂肪食が勧められる。脂肪の制限により摂取カロリーを減らしやすくなる。
(2)精製された穀物など、吸収の早い炭水化物を摂取すると、代謝に悪影響があらわれる。また、低炭水化物ダイエットは、短期間で体重減少をもたらし、血糖コントロールを改善するという報告がある。
(3)食事から摂取する脂肪と炭水化物については、相対的な量を気にするよりも、どのような脂肪や炭水化物を、どの食品から摂取するかに注意を向けた方が良い。
▼飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換える、▼精製された穀物ではなく、全粒粉や玄米など精製されていない穀物を摂るようにする――ほとんどの人は食事の質に注意を向けることで、「脂肪 - 炭水化物」の割合を変えることなく、健康的な食事を維持することが可能だとしている。
栄養についてはさまざまな議論がある中、ルートヴィヒ教授らは食事療法にもバージョンアップが必要だと指摘している。今日の新しい研究課題として、以下のことを挙げている――。
・ 人によって食事の「脂肪 - 炭水化物」の比率はさまざまだが、カロリー摂取に関係なく、身体をつくるのに最適な比率はあるのか?・ ゆるやかな炭水化物の制限は糖尿病の食事療法として有益か? 極端な「低炭水化物ダイエット」は安全なのか?
・ 「低炭水化物ダイエット」を行うと、脂肪の摂取量が増えてしまうおそれがある。炭水化物を制限する場合、脂肪(とくに飽和脂肪酸)をどれくらい摂ると最適なのか? Dietary fat is good? Dietary fat is bad? Coming to consensus(ハーバード公衆衛生大学院 2018年11月15日)
Dietary fat: From foe to friend?(サイエンス 2018年11月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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