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2018年06月14日

糖尿病の人が「卵」を食べても血糖やコレステロールに影響しない

 目玉焼き、ゆで卵、スクランブルエッグなど、さまざまな調理法がある卵は、栄養価の優れた食品だ。
 コレステロールが多く含まれているので、卵を控える人は少なくない。しかし最近の研究では、卵を毎日食べても、血糖値やコレステロール値に影響せず、心血管疾患のリスクも上昇しないことが分かってきた。
2型糖尿病の人は卵を毎日食べても大丈夫?
 2型糖尿病の人は、卵を毎日食べても、血糖値やコレステロール値に影響せず、心血管疾患のリスクも上昇しないという研究をシドニー大学が発表した。

 「卵はコレステロールが多く含まれる食品で、2型糖尿病の人は悪玉のLDLコレステロールの値が高い傾向があります。今回の研究では、糖尿病の人が卵を食べ続けても安全であるかを検証しました」と、シドニー大学のニック フラー氏は言う。

 研究チームはこれまでの研究で、糖尿病患者が3ヵ月間、卵を食べ続けても、コレステロール値や血糖値、血圧値に影響しないことを確かめていた。今回の研究では、卵を食べる期間が1年間に及んだ場合も安全であるかを確かめようとした。

 研究には128人の糖尿病患者と予備群が参加した。参加者は最初の3ヵ月間は、週に12個の卵を食べる群と、週に2個の卵を食べる群に分けられた。その後は卵を食べるローテーションを続けながら、3ヵ月の体重コントロールにも取り組んだ。6ヵ月間のフォローアップを加えて、合計12ヵ月間、参加者は卵を食べ続けた。
卵を毎日食べても心疾患リスクは上昇しない
 その結果、卵を食べる量の変化に関わらず、参加者の心血管リスクを示す検査値には有害な変化はなく、体重減少も達成できた。週に12個の卵を食べた群は3.1±6.3kg、週に2個の卵を食べた群では-3.1±5.2kg、それぞれ体重が減少した。

 「2型糖尿病の食事療法では、卵のようなコレステロールの多い食品を食べ過ぎないように指導されることが多いが、今回の研究では、野菜や果物、全粒穀物、魚、ナッツ類と組み合わせて食べれば、卵を制限する必要はないことが示されました」と、フラー氏は言う。

 ただし、バターやチーズ、赤身の肉、ベーコンやハムなど、動物性の脂に多く含まれる飽和脂肪酸は、体内で悪玉のLDLコレステロールを増やす作用がある。心臓疾患を予防するために勧められるのは、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸、精製されていない全粒粉などの炭水化物だという。
1日1個の卵で心血管疾患リスクが低下
 卵を毎日食べる食事スタイルは、むしろ健康に良いという研究も発表されている。英国のオックスフォード大学などの研究チームは、卵を1日に1個食べている人は、まったく食べない人に比べ、心臓病や脳卒中のリスクが減少する可能性があるという研究を発表した。

 北京大学健康科学センターなどは、30〜79歳の健康な中国人51万2,891人を対象に、前向き研究を行なった。卵を食べる頻度と、心臓血管疾患(CVD)や冠状動脈イベントなどの関連を約9年にわたって追跡して調査した。

 その結果、卵を毎日食べると、出血性脳卒中のリスクが26%、出血性脳卒中による死亡リスクが28%、CVDによる死亡リスクが18%、それぞれ低下した。さらに、卵をよく食べているグループ(週に5.32個)は、あまり食べていないグループ(週に2.03個)に比べ、虚血性心疾患のリスクが12%減少した。

 「卵には高品質のタンパク質、ビタミン群、リン脂質やカロチノイドなどの生理活性物質が含まれます」と、研究者は指摘している。
コレステロールの摂取量の基準はない
 卵はコレステロールの多い食品として代表的で、以前は「卵は1日1個までにしないとコレステロール値が上がる」と言われていた。これは、1970年代に行われた研究を根拠としていた。

 以前まで、厚生労働省では、1日のコレステロールの摂取基準を女性600mg、男性750mgと設けていた。卵1個のコレステロール値はおよそ300mgなので、卵は「1日1個まで」が良いとされていた。

 しかし、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」は2015年に改定され、コレステロールの目標量(上限)の記載が消えた。コレステロールを多く含む食品を食べても、血中コレステロール値には影響がないという研究報告が相次ぎ、目標量は「十分な科学的根拠がない」とされたためだ。
コレステロール値の変動に気をつけることが大切
 コレステロールの70〜80%は肝臓など体の中で作られ、食事から摂取されるのは20〜30%にとどまる。血中のコレステロール値は、健康な人では、血中の濃度が体内での合成量により調節され一定に保たれており、食事によるコレステロール摂取量がそのまま反映されるわけではない。

 現在は、卵は一般的には1日2個までなら食べても大丈夫だとアドバイスする専門家が増えている。卵は安くて栄養豊富な食品だ。卵には必須アミノ酸が含まれ、卵黄に含まれるレシチンには血管を強くしたり、血中の余分なコレステロールの沈着を防いだりする作用がある。

 ただし、卵などを食べると体内のコレステロールが増えやすい体質の人もいるので注意が必要だ。また、コレステロールの摂取量を気にしなくて良いという話は、脂質異常症のある人にはあてはまらない。

 コレステロール値を下げるために必要なのは、良い生活習慣を持ち続けること。さらに「コレステロール値が高い」と指摘された人は、検査を定期的に受けて、コレステロール値の変動に気をつけることが大切だ。

Eggs not linked to cardiovascular risk, despite conflicting advice(シドニー大学 2018年5月7日)
Effect of a high-egg diet on cardiometabolic risk factors in people with type 2 diabetes: the Diabetes and Egg (DIABEGG) Study—randomized weight-loss and follow-up phase(American Journal of Clinical Nutrition 2018年5月7日)
Daily egg consumption may reduce cardiovascular disease(BMJ 2018年5月21日)
Associations of egg consumption with cardiovascular disease in a cohort study of 0.5 million Chinese adults(Heart 2018年5月21日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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