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2017年11月09日
糖尿病治療薬「メトホルミン」はがん治療にも効果的 安価な薬でがんを治療
2型糖尿病治療薬の「メトホルミン」が、がんを増やす「制御性T細胞」を抑制し、がんの治療に効果的であることを、岡山大学の研究チームが解明した。
糖尿病治療薬として広く利用されているメトホルミンに、理想的な効能が隠されていることが世界ではじめて明らかになった。
糖尿病治療薬として広く利用されているメトホルミンに、理想的な効能が隠されていることが世界ではじめて明らかになった。
メトホルミンの抗がん作用を解明
メトホルミンは1950年代から糖尿病の治療に使われており、60年以上の使用実績のある薬だ。米国では糖尿病治療の第一選択薬となっている。
これまでの研究で、メトホルミンを長期間服用すると、がん罹患率、がん死亡率が低下することが分かっている。
岡山大学の研究グループは今回の研究で、メトホルミンに、自己免疫に深く関わる「制御性T細胞」の抑制効果があることを解明した。
免疫の力により、体はウイルス感染症やがんの発症から守られている。しかし、逆に免疫が体を攻撃する場合があり、この際には1型糖尿病やリウマチなどの自己免疫疾患を発症するおそれがある。
自己免疫疾患を発症しないように、体には「制御性T細胞」が備わり、体に対する過剰な免疫反応を抑えている。制御性T細胞は、免疫反応の抑制を行うT細胞の集団で、過剰な免疫応答を抑制するためのブレーキ役を担っている。
しかし、この制御性T細胞はがんに対する免疫反応も抑制してしまい、がんの増大を許してしまう。そのため、がんの予防や治療のためにはこの細胞の数を減らすか、その機能を抑制することが肝要となる。
しかし、制御性T細胞を抑制すると、逆に自己免疫疾患の発症リスクが上昇するというジレンマに陥る。
メトホルミンに理想的な効能が隠されている
自己免疫疾患を発症することなく、がんだけに対する効果的な免疫反応を得るためには、がんの中にある制御性T細胞だけを抑制し、がん以外の部分にある制御性T細胞の数と機能には影響を及ぼさないことが理想的だ。
そのような効果をもたらす方法がみつかった。岡山大学の研究グループは、2型糖尿病治療の治療薬である「メトホルミン」が、がん局所に存在する制御性T細胞の増殖と機能を抑制することを明らかにした。
糖尿病治療薬として広く利用されているメトホルミンに、理想的な効能が隠されていることを世界ではじめて明らかにしたものだ。
メトホルミンは糖代謝を改善する
がん免疫治療に革新をもたらす発見
研究グループが、担がんを発症したマウスにメトホルミンを投与したところ、がんの中で増殖するはずの制御性T細胞がアポトーシスに陥り、その数が激減することを発見した。
詳しく調べると、制御性T細胞の本来のエネルギー代謝である脂肪酸に依存した酸化的リン酸化反応が減少し、代わりに糖に依存した解糖系が亢進することが分かった。これにより、がんを増やす制御性T細胞が細胞死するという。
がんに対する治療法は、手術、抗がん剤、放射線治療の3つが柱となっている。新しく登場した「免疫治療法」は、進行期のがん治療に革新をもたらす可能性がある。
しかし、その効果は20%弱とそれほど高くはなく、また、自己免疫疾患などの副作用の問題が未解決のままになっている。
メトホルミンには、免疫細胞の代謝バランスを変化させることで、今まで不可能だったがん局所だけの制御性T細胞の抑制をもたらす効果がある。
今回の発見は、今後のがん免疫治療に革新をもたらし、より効果的で安全な治療法の開発につながる可能性がある。
なお研究成果は、制御性T細胞だけではなく、脂肪酸を取り込んでいる他の免疫抑制的な細胞集団の制御にも応用できる重要な知見を提供しており、その分子機構のさらなる解明が期待される、と研究グループは述べている。
研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科免疫学分野の鵜殿平一郎教授、榮川伸吾助教と口腔顎顔面外科学分野の佐々木朗教授、國定勇希大学院生の共同研究グループによるもので、科学誌「EBioMedicine」に発表された。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科免疫学分野Attenuation of CD4+CD25+ regulatory T cells in the tumor microenvironment by metformin, a type 2 diabetes drug(EBioMedicine 10月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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