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2016年12月26日
適度のアルコールが脳卒中リスクを低減 ただし飲み過ぎると逆効果
酒は「百薬の長」と言われるが、飲み過ぎが健康によくないことは明らかだ。脳卒中の発生率は飲酒量が増えるにつれて高くなることが、最新の研究で確かめられた。
1日にビール中瓶1本以上を飲む人では、脳卒中の発症リスクが高まるという。
大量飲酒は「虚血性脳卒中」と「出血性脳卒中」の両方のリスクを高めることが明らかになった。
1日にビール中瓶1本以上を飲む人では、脳卒中の発症リスクが高まるという。
大量飲酒は「虚血性脳卒中」と「出血性脳卒中」の両方のリスクを高めることが明らかになった。
1日にビール中瓶1本を過ぎると脳卒中リスクは上昇
「虚血性脳卒中」は、動脈が詰まって脳に十分な血液が供給されなくなることで生じる脳梗塞。通常は血栓や、動脈硬化で生じた脂肪の沈着物(プラーク)が、脳の動脈に詰まることで発症する。「出血性脳卒中」は、脳の血管が破れて出血することで発症する脳卒中。高血圧の状態が長く続くと、血管が破れやすくなり、脳出血が起こりやすくなる。
米国脳卒中学会(ASA)によると、脳卒中の約87%は虚血性脳卒中、残りの約13%は出血性脳卒中だ。過度の飲酒は、その両方のリスクを高めるという調査結果が、医学誌「BMC Medicine」に発表された。
少量または適量の飲酒は虚血性脳卒中リスクを下げる可能性があるが、大量の飲酒は虚血性脳卒中と出血性脳卒中の両方のリスクを高めるという。「脳卒中の予防の観点から、アルコールは1日に1~2ドリンクまでに抑えた方が良い」と、調査を行ったスウェーデンのカロリンスカ研究所准教授のスザンナ ラルソン氏は言う。
ラルソン氏らは、飲酒と脳卒中発症の関連を調べた25件の研究調査と、スウェーデンで実施された2件の大規模調査の結果を解析。1万8,289例の虚血性心疾患、2,299例の脳内出血、1,164例のクモ膜下出血について、アルコールとの関連を調べた。
飲酒量の程度は、軽度(1日1ドリンク未満)、中度(1日1~2ドリンク)、高度(1日2~4ドリンク)、重度(1日4ドリンク以上)として比較した。飲酒量を純アルコールに換算して分かりやすく表示する基準となるのが「ドリンク」で、国際的には1ドリンク = アルコール10gという基準量が使用されている。
「脳内出血」が1.6倍、「くも膜下出血」が1.8倍に増加
その結果、重度の飲酒者では、「脳内出血」のリスクが1.6倍に、「クモ膜下出血」のリスクが1.8倍に、それぞれ上昇した。どちらも出血性脳卒中で、脳内出血は脳の中にある小さな血管からの出血で、くも膜下出血は脳の表面を覆うくも膜の下の出血だ。
「大量飲酒とこれら2種類の脳卒中との関連性は、虚血性脳卒中との関連性よりも強いことが分かりました。一般的に、適度な飲酒は虚血性脳卒中のリスクを下げると言われていますが、適量を超えると脳卒中のリスクは明らかに上昇します」と、ラルソン氏は言う。
これまでの研究で、適度な飲酒は、血栓形成を促すタンパク質である「フィブリノーゲン」の値を低くすることが分かっている。フィブリノーゲンが低いと血液が固まりにくくなる。また、適度な飲酒は、血圧を一時的に下げることがある。
しかし、過度の飲酒が続くと血圧は上昇し、脳出血のリスクが高まる。多くの研究で、日々の飲酒量が多いほど血圧の平均値が上昇することが示されている。
適度なアルコールの摂取量の目安は2ドリンクまでで、純アルコール量で約20g程度が限度だという。これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)に相当する。
過度の飲酒は糖尿病のリスクも上昇させる
過度の飲酒は、脳卒中に加えて、2型糖尿病のリスクも高める。高血圧と高血糖が重なると、相乗的に脳卒中の危険性が高まる。
日本で実施された大規模研究「JPHC Study」では、やせた男性では、飲酒による2型糖尿病リスクが上昇することが明らかになった。特にやせている男性は、もともとインスリンの分泌能力が低いので、飲酒によるデメリットの影響があらわれやすいという。
BMI(体格指数)が22以下の男性は、飲酒量が増えるにつれて糖尿病リスクが上昇し、お酒を飲まないグループにくらべ、エタノール摂取が1日当り23.1~46.0g(日本酒換算で1~2合)のグループで1.9倍、46.1g以上摂取するグループでは2.9倍まで高くなった。
膵臓から分泌されるインスリンは、ブドウ糖などの細胞への取り込みをコントロールしている。インスリンが十分に働かなかったり不足したりすると、高血糖が生じる。アルコールは、適量を摂取するとインスリンへの反応(感受性)が改善するが、過度の飲酒を長期間続けるとインスリンの分泌量が低下することも報告されている。
アルコールは「百薬の長」と言われるが、飲み過ぎが健康によくないことは明らかだ。飲むときは自分の飲む量を確かめながら、飲み過ぎに注意しながら楽しく飲みたい。
Alcohol may increase risk of some types of stroke but not others(Biomedcentral 2016年11月23日)Differing association of alcohol consumption with different stroke types: a systematic review and meta-analysis(BMC Medicine 2016年11月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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