ニュース
2016年07月07日
ウォーキングが記憶力を高める スマートフォンに頼らない生活も必要
記憶力を高めるために必要なことは、ウォーキングなどの運動を習慣として行うことと、もうひとつはスマートフォンなどの外部記憶に頼り過ぎないことだという研究が発表された。
記憶作業の数時間後のウォーキングが記憶力を向上
ウォーキングなどの運動を習慣的に行うと、肥満を予防でき健康状態が良くなるだけでなく、記憶力の向上にも役立つことが明らかになった。ただし、運動をする時間は作業後すぐにではなく、少し時間をおいてからが効果的だという。
「運動は脳の働きを活発化し、記憶パフォーマンスを向上させます。しかし、運動するタイミングは記憶作業の直後よりも、少し時間をおいてからの方が効果的であるようです」と、オランダのラドバウド大学医療センター ドンデルス脳研究所のギレン フェルナンデス氏は言う。
研究チームは、72人の参加者に写真を見せ、覚えてもらう実験を行った。パソコン画面を6つに区切り、90枚の写真を40分間ランダムに表示した。
参加者を3つのグループに無作為に分け、記憶作業の後に運動をしないグループ、直後に運動をするグループ、2時間後に運動をするグループに無作為に振り分けた。
2日後に記憶力のテストを行った結果、作業の直後にまったく運動をしなかった人は2日後に79.1%が覚えており、直後にウォーキングなどの運動をした人では79.3%が覚えていた。一方で、2時間後に運動をしたグループでは85.2%が覚えていた。
記憶力を高めることは認知症の予防にもつながる
「記憶作業の2時間後にウォーキングなどの運動をすると、記憶力が10%向上することが明らかになりました。運動が記憶力を高めることは、過去の研究でも確かめられています」と、フェルナンデス氏は言う。
脳の画像検査を行ったところ、運動をした人では記憶に深く関わる脳の頭頂葉や側脳室の血流が活発になっていた。
運動をするとドーパミンやノルエピネフリンといった、記憶に必要な神経伝達物質の分泌が促進される。記憶作業の直後に運動すると、その心理的効果が脳の記憶力を高める部位の緊張を高め、効果を得にくい可能性があるという。
「運動をする最良のタイミングには個人差があります。脳がリラックスした状態で運動をすると、脳の活動を高められます。認知症の予防にも効果があると期待されます」としている。
外部記憶に頼らない方が記憶力は鍛えられる
スマートフォンやパソコンの「グーグル」や「ツイッター」などの外部記憶に頼るのを習慣とする人が増えているが、コンピューターのデバイスを利用した情報の保存は脳の記憶力を衰えさせる可能性があるという研究が発表された。
「将来あらゆる情報を外部記録に頼るようになって、自分の記憶として取り込まなくなったら脳にどのような影響ができるか、調べる必要があります」と、カナダのマウント セント ヴィンセント大学のミシェル エスクリット氏は指摘している。
研究チームは、94人の学生にトランプの「神経衰弱」ゲームを用いた実験を行った。参加者に、カードを1枚ずつ裏返して見て位置を覚え、そのカードと対になるカードの位置を覚えることを求めた。参加者を無作為に2つのグループに分け、1つ目のグループにはカードの内容と位置についてメモをとることを許した。もう1つのグループはメモをとらず、記憶力のみに頼ることを求めた。
決められた時間が過ぎると、メモをとっていた学生たちのメモを没収した。両グループに対し、さまざまなカードの位置と正体についてテストしたところ、メモをとらずに記憶力に頼っていたグループの方が、記憶力の成績が良いことが判明した。
記憶力が衰えないよう工夫することが必要
外出や旅行をするときに、メモや写真をとらないでいた時の方が、その場所の記憶が強く残っているという経験はないだろうか。
「メモをとった被験者は、外部形式の技術に頼り記憶を保存することに慣れていましたが、それに頼ると脳の記憶を貯蔵する部位は鍛えられなくなるおそれがあります」と、エスクリット氏は言う。
インターネットなどの外部記憶装置が発達すると、脳を使わなくなるおそれがある。「高齢者では特に、体験したことを記憶として思い出す“エピソード記憶”が衰えやすい傾向があります」と、エスクリット氏は指摘している。
ウォーキングや移動、料理や皿洗いなどの家事、トランプなどの身体活動を意識して行い、自分が行った行動について2~3日たった時点で思い出しながら記録をとるといった工夫が必要だという。
Physical Exercise Performed Four Hours after Learning Improves Memory Retention and Increases Hippocampal Pattern Similarity during Retrieval(Current Biology 2016年6月16日)Intentional forgetting: Note-taking as a naturalistic example(Memory & Cognition 2014年2月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
ライフスタイルの関連記事
- 【座談会】先生たちのSAP体験談2 インスリンポンプの新機能を使って
- 年齢を重ねることに前向きな人は糖尿病リスクが減少 こうすれば加齢に対してポジティブになれる
- タバコは糖尿病リスクを高める 禁煙すれば2型糖尿病のリスクが30~40%減少
- 「ノンアルコール飲料」を利用すると飲酒量が減少 お酒を減らすきっかけに 糖尿病の人は飲みすぎにご注意
- 生活を楽しめている人は認知症リスクが低い 糖尿病の人は認知症リスクが高い ストレスに負けず「楽しむ意識」を
- 年末年始は宴席やイベントの誘いが増える 実は誘いを断っても人間関係への影響は少ない
- 冬のお風呂は危険? 寒いと増える「ヒートショック」 糖尿病の人もご注意 7つの方法で予防
- 野菜や大豆などの「植物性食品」が糖尿病リスクを低下 植物性タンパク質をバランス良く食べると効果
- 糖質量からお店や商品が探せるアプリ「ドコカボ」〜開発者の赤坂さん夫妻に聞く[PR]
- 減塩は難しくない 糖尿病の人も減塩は必須 減塩の新しい考え方「かるしお」を提唱