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2016年05月24日

「うま味」を食事に活用 食欲を抑え減塩に役立つ がんの予防効果も

 「うま味」は、日本料理の中心となる要素だ。数百年もの長い間、日本人に好まれ続けてきた。最近では食事療法に「うま味」を応用する試みも行われている。料理の風味を改善するだけでなく、健康に良い特別な理由が隠されていることが最近の研究で明らかになった。
「日本食」の人気が上昇 「うま味」に注目

 世界の無形文化遺産に登録されている「日本食」の食文化。「日本食」に欠かせない味の要素のひとつに「うま味」がある。

 日本食のうま味は、豊富な食材を使って、短時間で作られる。そして、食材のもつ上品なうま味は、食材のもつおいしさを引き立てる点が特徴的だ。うま味は、「酸味」「甘味」「苦味」「塩味」とは違い、日本人でも説明は難しい味だ。それが第5の味として認知されている。

 うま味は日本で発見されたものだが、世界各地でさまざまなかたちで使われている。アジアでは、豆や穀類、魚介類を原料にした発酵食品やしいたけ、昆布、魚介類の乾物などのうま味が主流。一方、ヨーロッパでは、生乳や肉を原料としたチーズや生ハム、そしてトマトのうま味が料理に使われている。

 世界中で研究され、さまざまな料理に活用されている「うま味(Umami)」は、「日本食」とともに世界に誇れる日本の文化だ。

 毎日の食事をコントロールしなければならない糖尿病や高血圧の患者にとって、うま味を上手に使うことが、食事の満足度を上げることにつながる。また、塩分制限が必要な腎臓病のある患者も、うま味を使えば無理なく減塩できる。

2種類のだしでうま味の相乗効果を得られる

 うま味の成分は、昆布やタマネギ、ニンジン、セロリなどに含まれるアミノ酸系の「グルタミン酸」に加えて、肉や魚に含まれる「イノシン酸」、キノコ類に多い「グアニル酸」などがある。これらの成分を組み合わせることで、うま味が飛躍的に強まり「こく味」となる。

 日本料理の味の基本をなす「うま味」が、満腹感を引き出し、食欲を抑えるのに効果的という研究が発表された。うま味の主成分であるグルタミン酸とイノシン酸には、食品をおいしく感じさせ、食事の満足感を高める効果があるという。

 「うま味の相乗効果」は、コンブでだしをとった後、さらにカツオ節でだしをとるなど、日本料理に応用されてきた。肥満者率が高い欧米では、脂肪や糖分の少ない日本食が注目されている。その健康効果の鍵が、生の肉や魚を煮込むのとは異なる、乾物を用いて引き出す日本特有のうま味だ。

うま味を効かせると満足感を得やすい 食べ過ぎの防止に効果

 ニンニク、タマネギ、ホタテ貝などに含まれるうま味は、それ自体は味をもたないが、他の食品と組み合わせると味が増強され、食事の満足感を引き出しやすくなる。

 英国のサセックス大学の研究で、うま味には食事の満足感を高め、食欲を抑える効果があることが明らかになった。

 研究チームは27人の男女を2つのグループに分け、同じ朝食をとってもらった後、昼食の45分前に片方にはうみ味成分であるグルタミン酸とイノシン酸が入っているスープを、もう片方のグループには両方とも入っていないスープを飲んでもらう実験を4日間行った。

 その結果、うま味の入ったスープを飲んだ参加者は、満腹感を感じやすくなり、昼食の摂取量が減りダイエットに成功した。

 うま味を効かせた食事を習慣的にとることで、高カロリーの食事を避けて健康的な食生活を維持できる可能性がある。

うま味を使えば塩分の摂取量を減らせる

 日本食は食塩量が多くなりがちだが、基本となるだしのうま味を効かせることで減塩も可能だ。フィンランドで行われた研究では、それだけでは味気ない減塩メニューであっても、カツオだしなどグルタミン酸を付加することで満足感を得やすくなり、味わいも豊かになることが示された。

 塩分の一部分をうま味で代替すると、もともとのおいしさは失わずに塩分量を減らせることが科学的に示されている。時間のあるときにだしを多めに手作りして冷蔵保存したり、冷蔵庫に昆布を水に浸しただけの「昆布水」を常備するのも、塩分を減らすために手軽で便利な方法だ。

 日本料理のだしはグルタミン酸を多く含む昆布と、イノシン酸が多いかつお節を組み合わせると、うま味が強まる。西洋料理ではイノシン酸に富む肉や魚などと、グルタミン酸を含む玉ねぎなどの野菜を合わせて料理する。うま味の相乗効果は、世界中の調理で古来より経験的に利用されている。

昆布などのグルタミン酸が大腸がんを防ぐ

 うま味成分としてもっともよく使われるグルタミン酸を多く摂取している人は、大腸がん発症リスクが低いことが、オランダのエラスムス大学医療センターなどの研究で明らかになった。

 日本料理にもよく使われるグルタミン酸には、疲労回復や脳の活性化、免疫力を高める効果などもあるとされる。うま味を上手に使う日本食があらためて見直されることになりそうだ。

 研究に参加したのは1990年に55歳以上だったオランダ人の男女5,362人。食事内容のアンケート調査からグルタミン酸の摂取量が推算された。

 その結果、グルタミン酸摂取量が多い人は、そうでない人に比べ、大腸がん発症リスクが22%低下していた。さらに、BMI(体格指数)が25以下の人では、食事からのグルタミン摂取量が1%増加すると、大腸がん発症リスクが42%低下した。

 日本肥満学会の基準では、日本人ではBMIが25未満の人は「普通体重」とされる。うま味を健康増進に役立てるために、肥満を予防しながら、昆布などの食品のうま味を活用すると良さそうだ。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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