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2016年05月14日

これだけ守れば糖尿病の治療は上手くいく 「15項目のチェックリスト」

 英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、世界保健機関(WHO)の「世界保健デー」に合わせて、糖尿病患者が受ける治療について15項目のチェックリストを発表した。チェックリストに適合しない項目がひとつでもあれば、医師や医師スタッフに相談した方が良い。

 「糖尿病治療においては、すべての患者が適合すべき最低限の水準があります。糖尿病の治療は生涯続きます。長い人生にはうまくいかないことも出てきますが、その多くは専門家に相談すれば解決が可能です。悩みや疑問をもっている人は、医師や医療スタッフに相談することを勧めます」と、英国糖尿病学会のエグゼクティブチームの責任者であるサイモン オニー氏は述べている。
糖尿病治療 15項目のチェックリスト

1 血糖値とHbA1c値をはかる

 定期的に検査をして血糖値が高くなっていないかどうかを調べることが必要です。血糖値が高い状態が続くと、目・腎臓・神経の病気、脳梗塞・心筋梗塞などの合併症が引き起こされますが、血糖値のコントロールを良好に維持すれば、これらの合併症を防ぎ問題なく普通の生活をおくれます。

 HbA1c値は過去1~2ヵ月の血糖の状態を示す値です。医療機関で検査を受け、測定値やコントロール目標について医療スタッフとよく相談しましょう。

2 血圧値をはかる

 血糖値と血圧値が高いと、動脈硬化や心筋梗塞などの危険性が高まります。血圧値は年齢によって変わっていき、目標となる血圧値があります。

 家庭用血圧計も入手しやすくなっているので、1ヵ月に1回以上ははかりましょう。血圧をコントロールして目標値に近付けるためにどうすればよいか、主治医や医療スタッフとよく相談しましょう。

3 コレステロール値をはかる

 コレステロール値にも、血糖値と血圧値と同じように、あなたに合ったコントロール目標があります。目標値の設定について医療スタッフと相談しましょう。

 悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、中性脂肪は食事や運動の影響を受けやすく、値が高いと薬による治療が必要となる場合があります。

4 眼の検査を受ける

 網膜症は糖尿病患者さんに多い合併症です。糖尿病と診断されたときから定期的な眼科の検査を受け、糖尿病と眼科で適切な治療を続けることが大切です。

 網膜症を発症しても、早期のうちに適切な治療を始めれば、失明を防ぐことができます。そのために眼科でチェックを受けることが大切です。糖尿病の医師と眼科の医師の連携も大切です。1年に1回以上、眼の検査を受けましょう。

5 足をチェックする

 血糖値のコントロールがうまくできず、糖尿病を悪化させると、合併症が起こり、障害が進むと足に潰瘍や壊疽が起こりやすくなります。足のチェックを定期的に行い、問題が起きていれば医師や医療スタッフに相談しましょう。

 足に異常が起きても、早期に発見し治療をすれば、潰瘍や壊疽による切断を防げます。

6 腎臓の検査を受ける

 腎機能が低下していないか、年に1回以上は検査を受けるべきです。血液検査(クレアチニン)と尿検査(微量アルブミン)の2種類があります。

 クレアチニンは、腎臓が正常にはたらいていれば、尿として体外に排泄されます。つまり血液中のクレアチニンが多いということは、腎機能が障害されているということです。

 アルブミンは糖尿病のごく初期に尿中に少量もれてくるタンパクですが、通常の尿検査では分かりません。糖尿病と診断されている場合は少なくとも年1回、できれば半年に1回は微量アルブミン尿検査を受けることが大切です。

7 管理栄養士に相談する

 糖尿病と診断されたその日から、多くの場合で食事の調整をしなければならなくなります。しかし、誤解が多いのですが、糖尿病の食事療法は食べたいものを我慢することではなく、食事のカロリーと栄養バランスを適切にコントロールすることです。

 糖尿病の治療を続けていても、食事を楽しめなくなることは決してありません。そのために管理栄養士のアドバイスが必要です。

 体重をはかることも大切です。体重の増減が大きい場合は、健康に影響を及ぼす要因が隠れている可能性があります。体重コントロールの目標のある人は、ウエスト周囲径もはかり、得られた値について管理栄養士に相談しましょう。

8 心理的なサポートを受ける

 糖尿病は一度発症すると完治することはなく、治療の中心となるのは患者自身の自己管理(セルフケア)です。患者の主体的な取り組みが必要となりますが、これを実行するために大きな感情的負担が伴います。「糖尿病の治療が一生続くかと思うと憂うつになる」「長い間頑張ってきたが、もう疲れ果ててしまった」という人は少なくありません。

 こうした感情的負担を抱えた患者が自己管理を継続できるように、心理的なサポートが必要となります。糖尿病を受けとめられず悪戦苦闘している患者が、不満や自分の感情をありのままに受けとめてもらえ、共感してもらえ、糖尿病を自分自身の病気として受け入れられるよう支援する体制が必要です。

 慢性疾患をもつ患者の心理的サポートについての専門的な治療も進歩しています。患者が治療に取りかかる動機づけを起こさせることも医療の現場の大きな課題です。

9 糖尿病教室に参加する

 糖尿病療養を支援する糖尿病教室は各地で開催されています。糖尿病について分からなかったことを理解する良い機会になります。あなたがいる近辺で開催される糖尿病教室について、医療スタッフに聞いてみましょう。

 糖尿病の患者会も各地にあるので積極的に利用しましょう。糖尿病の治療に取り組む仲間同士の語らいや情報交換から、治療の助けとなる情報を入手できます。

10 糖尿病のチーム医療

 糖尿病の治療では、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師などか、それぞれの得意分野を受けもって、連携をとりながら対応しています。医師に相談できないことでも、他の医療スタッフであれば相談できるもしれません。

 糖尿病の高度な治療が必要がなった場合は、糖尿病専門医に診療をしてもらう必要が出てきます。そうした場合に専門医に紹介してもらえるか、主治医に聞いてみましょう。

11 インフルエンザの予防接種を受ける

 糖尿病の人が血糖コントロールが良くない状態が続くと、インフルエンザなどの感染症に対する体の免疫機能が低下している場合があります。糖尿病をもつ人は糖尿病でない人に比べ、インフルエンザにかかる危険性が高いという報告もあります。インフルエンザの流行シーズンが近づいたら、すべての糖尿病患者はインフルエンザの予防接種を受けるべきです。

12 教育入院は重症患者に限らない

 教育入院は、入院で食事管理、運動指導、衛生管理や合併症についてなど、血糖値を良い状態に保つための指導、学習を受けながら治療を行う入院です。糖尿病療養指導士などが院内で開く教育講座にも参加できます。血糖値を低くすることができ、糖尿病の悪化を防ぐことにつながります。

 教育入院は全国の医療機関で行われています。教育入院の機会を積極的に活用しましょう。

13 糖尿病患者が抱える性の問題

 糖尿病が性的な問題を引き起こし、夫婦関係に障害をもたらすおそれがあります。糖尿病の男性にもっとも広くみられる障害は勃起障害で、通常の病気の患者の性的能力が減退するのが50歳のころであるとすれば、糖尿病患者の場合には10年早いという報告があります。血糖コントロールが不良であると血管障害や神経障害が起こりやすいことが一因です。

 現在は「性機能の低下」を治療する方法があります。治療をすると性的欲求が戻ってきて、表情にはりが出てきて、糖尿病治療への意欲が高まり血糖コントロールが良くなるというケースも少なくありません。

14 禁煙する

 もしあなたがタバコを吸っているのなら、なんとしてでもやめましょう。現在は健康保険を適用して、禁煙治療を受けることができます。具体的な禁煙の方法について、医師に相談しましょう。

15 糖尿病の人も妊娠は可能

 糖尿病の人であっても、計画妊娠によって健康な人と同じように妊娠・出産ができます。ただし糖尿病と診断されている女性が妊娠するときには、妊娠前からいろいろ注意が必要となります。妊娠を希望する人は、糖尿病専門医に相談しましょう。

New 15 Healthcare Essentials Guide(英国糖尿病学会 2016年4月16日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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