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糖尿病3分間ラーニング
「人工膵臓」の過去最大の臨床試験を開始 インスリン療法を完璧に
2016年03月25日

 「人工膵臓」の過去最大の臨床試験が米国で間もなく開始される。生理的なインスリン分泌を正確に再現することを目指しており、「1型糖尿病患者の生活の質(QOL)を真に向上させるためのチャレンジが始まります」と研究者は述べている。
「人工膵臓」の過去最大規模の臨床試験を開始
 生理的なインスリン分泌を忠実に再現する「人工膵臓」の長期の臨床試験が米国で今年中に開始される。得られた成果をもとに、米国をはじめとする世界中での医療承認が行われると予測されており、結果が期待されている。

 開始される「人工膵臓」の臨床試験は、米国立衛生研究所(NIH)から14億3,000万円(1,270万ドル)の資金提供を受けて、バージニア大学とハーバード大学工学・応用科学部の研究チームが実施するもの。

 1つめの試験はバージニア大学が主導し240人の1型糖尿病患者を対象に、2つめの試験はハーバード大学が主導し180人の1型糖尿病患者を対象に、それぞれ6ヵ月をかけて実施される。いずれも2016年内に開始される予定だ。

 自己免疫の異常などが原因で膵臓のβ細胞が破壊され発症する1型糖尿病は、若年者が発症することの多い疾患だ。生命を維持するためにインスリン療法が必要で、罹病期間が長いのが特徴となる。

 インスリン注射やインスリンポンプによるインスリン療法を行う患者は、血糖測定を行いインスリン投与量を慎重に調整する必要がある。

 インスリン製剤は改良が重ねられ、より生理的なインスリン分泌に近付ける治療が可能になった。インスリン注射に使うデバイスもより使いやすくなっている。さらにインスリンポンプで治療する患者も増えている。

 しかし、インスリン療法で生理的なインスリン分泌を正確に再現するのに、多くの糖尿病患者は苦心している。低血糖を起こさずに、血糖値を安定的に維持する新たな治療法の開発が望まれている。
「クローズドループ」で理想的な血糖コントロールを実現
 最新の治療法として考えられているのが、インスリンポンプやCGM(持続血糖測定)の技術を応用して開発した「人工膵臓」だ。

 「人工膵臓」では「クローズドループ」のシステムが取り入れられている。血糖値を持続測定し、機器が適切なインスリン投与量を自動的に判定し、血糖値の変動幅をフィードバックしながら、血糖値が正常範囲になるように調節するシステムだ。

 一方で、これまでに実現しているのは「オープンループ」のシステムだ。血糖値の変動や食事・運動などに合わせて、患者が自分でインスリンを投与する方法だが、この方法では血糖値の変動幅のフィードバックを自動的にインスリン投与量に反映させることはできない。

 インスリン療法を適正にマネージメントできないと、命に関わる重篤な低血糖を引き起こしたり、合併症の原因になる血糖コントロール不良を引き起こすおそれがある。

 「糖尿病患者の日常生活で、より最適化された治療を実現するために、人工膵臓が必要とされています。今回の長期的な臨床試験はその安全性と有効性を確かめるためのものです」と、バージニア大学糖尿病技術センターのボリス コバチョブ氏は言う。

 「我々のもっとも重要なゴールは糖尿病治療の新しいパラダイムを確立することです。人工膵臓は単一の機能をもつ装置ではありません。人工膵臓は、デジタル技術により治療環境を変えるシステムで、患者が容易に使用でき、自由度を向上させるためのものです」と、コバチョブ氏は強調している。
血糖変動を前もって予測、適切なインスリン投与
 新たな「人工膵臓」システムは、最新の臨床研究と工学技術を融合させて開発された。ただ血糖変動を読み取ってインスリン注入量を調整するだけでなく、血糖変動を前もって予測することで、より適切なインスリン投与をコントロールできるようになっているという。

 最新の研究データをもとに作成された先進的なアルゴリズムが、スマートフォンのソフトに組み込まれる。CGM(持続血糖測定)で測定した血糖値を送信し、食事、身体活動、睡眠、ストレス、代謝活動の影響を考慮しながら、インスリン投与量を自動的に調整し、インスリンポンプがインスリンを皮下注入する仕組みになっている。

 「米国疾病管理予防センター(CDC)によると、米国の1型糖尿病患者数は125万人に上ります。人工膵臓に期待していることは、糖尿病治療の改善だけではありません。糖尿病患者の生活の質(QOL)を真に向上させ、糖尿病でない人と全く同じように生活できるようにすることです」と、ハーバード大学工学・応用科学部のフランシス J ドイル氏やエリザベス アームストロング氏らは言う。

 「ヒトの体には不確実性が備わっており、血糖値は食事や運動、ストレス、ホルモン分泌の影響を受けて、分刻みで変動します。今回の試験では、そうした細かな血糖変動を人工膵臓より正確に読み取り、変動幅を最少に抑えることを目標としています。そのためには長期にわたりデータを収集する必要があります」と、ドイル氏は言う。

 「世界で人工膵臓の開発が開始されてから20年が経過しており、今回の臨床試験がひつとの節目になります。人工膵臓の実用化は最良の糖尿病治療を実現するためのチャレンジです」と強調している。

[ Terahata ]

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