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2016年02月26日
高血圧の予防・改善に効果的な食品 誰でも簡単にできる食事療法
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高血圧が続くと血管が障害されて動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞が起きやすくなる。収縮期(最高)血圧が120mmHg未満、拡張期(最低)血圧が80mmHg未満の人に比べて、最高血圧が140mmHg以上・最低血圧が90mmHg以上の人では、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクは3倍以上に上昇するという調査結果がある。
高血圧の人は血圧を効果的に下げることが必要だ。そのために食事を工夫することが必要となる。
研究チームは、米国で実施されている看護師や医療従事者を対象とした3件の大規模研究に参加した18万7,453人のデータを分析。18~26年間の追跡調査から野菜や果物の摂取量と高血圧の発症リスクとの関係を調べた。
その結果、野菜や果物の摂取頻度が週4食以下の参加者に比べ、週4食以上の参加者では、高血圧の発症リスクは8%減少することが判明した。高血圧の発症リスクは、野菜や果物を食べる回数が多い人ほど減少することが分かった。
高血圧の発症リスクを減らすのに効果的な食品は、「ブロッコリー」「ニンジン」「大豆食品(豆腐を含む)」「レーズン」「リンゴ」だという。「これらの食品を毎日取り入れることが、健康な食事の目安になります」と、研究を主導したハーバード大学医学部ブリガム アンド ウィメンズ病院のレア ボルジ氏は言う。
研究者は高血圧を改善するために、米国心臓学会(AHA)などは「DASH(ダッシュ)ダイエット」を推奨している。
「DASH」とは、「高血圧を防ぐ食事方法」(Dietary Approaches to Stop Hypertension)の略語。米国立心肺血液研究所(NHLBI)などが中心となり考案された。
DASHダイエットを実行している人では、死亡リスクの高い脳卒中や心筋梗塞などの深刻な病気の発症が低下することが、米国のメイヨークリニックやミシガン大学などが実施した調査で確かめられている。DASHダイエットは高血圧のある人だけでなく、糖尿病や脂質異常症のある人にとっても効果的な食事法であることも判明している。
DASHダイエットを実行するのは実はとても簡単だ。毎日の食事で以下のことに気を付ければ、誰でも実行できる。
<< DASHダイエットの実践法 >>
食塩のとりすぎは血圧を上げる重大な要因になっており、減塩を心がければ血圧が下がることが明らかになっている。「1日の食塩摂取量6g未満」に抑えるのが目標だ。
塩分を減らすために「味付けを工夫する」のが効果的だ。塩味以外に「酸味」「香辛料」「香味野菜」「だしのうまみ」を使うことで風味や味をつけることができ、減塩につながる。
多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む植物油を十分に摂取すると、血圧が低下するという調査結果がある。大豆油や紅花油、コーン油などに含まれるリノール酸、えごま油やクルミなどに含まれるリノレン酸、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)などが代表的な多価不飽和脂肪酸だ。
また、オリーブオイルやキャノーラ油(菜種油)には一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が多く含まれており、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクを減らすという報告がある。
逆に、血圧や悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪の値が高い人、内臓脂肪が多い人には、「飽和脂肪酸を摂取し過ぎない」ことと「食べ過ぎを防ぐ」ことが勧められている。飽和脂肪酸は、牛や豚の赤身肉、鶏肉の皮の部分、乳製品など、動物性の脂に多く含まれる。
「食物繊維を積極的にとる」ことも大切だ。野菜、きのこ、海藻、玄米などに多く含まれる食物繊維は、小腸でのコレステロール吸収や食後高血糖を抑えるので、高血圧の人だけでなく、糖尿病や血糖値が高めの人にも勧められる。
野菜にはビタミンやミネラルも豊富に含まれており、特にカルシウム、カリウム、マグネシウム、ビタミンKなどの栄養成分は高血圧の予防・改善に役立つ。野菜を1日に350g以上とるのが目標だ。
牛乳には良質なタンパク質やカルシウムなどが含まれる。カルシウムは骨を強くするだけでなく、血圧調整の役にも立つ。ただし、乳製品には飽和脂肪酸も多く含まれるので、カロリーの摂り過ぎや体重増加が気になる人は注意が必要だ。脂肪分が気になる場合は、無脂肪乳や低脂肪乳、スキムミルクなどを選ぶ方法がある。
玄米や全粒粉など精製度の低い穀物は、普通のパンやご飯よりも食物繊維が豊富に含まれる。こうした穀物を主食に混ぜて食べると、無理なく食物繊維の摂取量を増やすことができる。腹持ちが良いので、食欲を抑え食べ過ぎを防ぐ効果も得られる。
米や小麦粉を精製すると高血圧や糖尿病の改善に有用な栄養素が失われてしまうが、玄米や全粒粉であれば有用な栄養素を摂取できる。毎日の食事に取り入れたい食品だ。
糖質(炭水化物)を多く含む食品は、食後の血糖値を急激に上昇させる。同じエネルギー量の食事でも、糖質を制限することで血糖値の上昇を抑えられる。菓子類や菓子パンには脂質も糖質も多く含まれていて高カロリーなので、なるべく食べないようにしよう。代わりに、主食を全粒粉のパンにし、低脂肪乳を加えればカルシウムも補える。ヨーグルトを食べるときは無糖や低カロリー甘味料を使ったものを選ぼう。
運動には、「血圧や血糖値を下げる」「肥満を防ぐ」「血管をしなやかにする」「善玉のHDLコレステロールを増やす」など、さまざまな効果がある。運動の効果を十分に引き出すためには、ウォーキングなどの、息が少し切れるくらいのやや強めの有酸素運動を「1日30分以上、できれば毎日行う」と良いとされている。
Fruit and Vegetable Consumption and the Incidence of Hypertension in Three Prospective Cohort Studies(Hypertension 2015年12月7日)
DASH Diet: Reducing Hypertension through Diet and Lifestyle(米国栄養士会 2015年6月12日)
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