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2016年01月04日
カフェイン入り「エナジードリンク」で糖尿病が悪化 日本でも死亡例
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死亡した男性は長期にわたってシフト制の仕事に就き、夜間に働いていたという。眠気を覚ますため、カフェインを含むエナジードリンクや錠剤を日常的に摂取し、死亡する約1年前からめまいやおう吐など体調不良を訴えていた。
死亡当日も帰宅後に吐いて寝込んでいた。数時間後に家族が異変に気付き、救急搬送したが手遅れだった。
福岡大学の久保真一教授(法医学)は警察からの依頼を受け、司法解剖を実施。男性は持病がなかったが、胃の内容物や血液などからアルコールに加え、血液中から182μg/mLという高濃度のカフェインが検出され、カフェイン中毒と判定された。
「カフェイン中毒による死亡が確認された例は日本ではじめてではないか。カフェインの大量摂取により健康被害が起きる可能性があり、特にアルコールと同時に摂取すると危険性が高まる」と久保教授は指摘している。

カフェインには、中枢神経に働きかけ、眠気や疲労を抑え、運動機能を高める興奮作用や、骨格筋に働き、疲労感を抑え活動性を増大させる作用がある。
また、心臓の心筋に作用し、収縮力や拍出量を増加させたり、腎臓の血管を拡張させ、腎臓への血流量を増やし尿の生成を促す利尿作用がある。
しかし、カフェインを大量に摂取すると、不眠症や神経症、心拍数の増加、高血圧、不整脈が引き起こされるおそれがあるという。
欧州連合(EU)の欧州食品安全機関(EFSA)は、健康を維持するために望ましいカフェイン摂取量について、「成人では1日400mg未満に抑え、1回の摂取量が200mgを超えないようにするべき」とする提言を昨年5月に発表した。
欧州委員会の要請を受けてEFSAがまとめた120ページの報告書では、「一般的な成人の場合、カフェイン摂取量が1日400mg以上を超えると、健康障害が起こるおそれがある」と指摘している。400mgのカフェインはコーヒー4~5杯に相当する量だ。
内閣府の食品安全委員会によると、現在、日本では食品中のカフェインの摂取許容量は設定されていない。

カナダのカルガリー大学の研究チームは、13~19歳の若年者20人を対象に、カフェインを含むエナジードリンクを摂取した後の血糖値およびインスリン抵抗性のデータを解析した。
被験者を208mgのカフェインを含むエナジードリンクを摂取する群と、摂取しない群に分け、摂取後40分に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施した。
その結果、カフェイン含有のエナジードリンクを摂取した群では、カフェイン抜きの群に比べて血糖値が24.6%、インスリン値が26.4%上昇した。
過剰なカフェイン摂取がアドレナリンなどの血糖値を高めるホルモン分泌を促し、インスリンの機能を妨げている可能性があるという。
「エナジードリンクに含まれるカフェインがインスリン抵抗性を引き起こしていると考えられる。カフェインの血中半減期は4~6時間で、血糖値とインスリン値の上昇はかなりの時間続くことになる」と研究者は述べている。
エナジードリンクはカフェインに含めて、糖分を多く含み、高カロリーのものが多い。「過剰なカフェインの摂取が、中枢神経系の刺激によるめまいや心拍数の増加、興奮、不眠症などの急性作用をもたらすことがある。特に若年者の飲み過ぎには注意が必要だ」と研究者は指摘している。
Caffeine: EFSA estimates safe intakes(欧州食品安全機関 2015年5月27日)
Energy drink consumption impairs oral glucose tolerance in adolescents: a randomized, double-blind, crossover pilot study(カルガリー大学 2015年12月7日)
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