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2015年06月18日
SGLT2阻害薬は適正使用すれば「効果的で安全な薬」 発売から1年
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- 医薬品/インスリン
サノフィはSGLT2阻害薬の適正使用を推進するため、メディアセミナーを開催した。「SGLT2阻害薬の発売後1年を振り返って見える現状課題と今後の展望」と題し、加来浩平・川崎医科大学内科学特任教授が講演した。
糖尿病治療の新たな選択肢として期待
糖尿病の治療薬は、1950年代に登場したSU薬から2014年に登場したSGLT2阻害薬まで多くの薬剤が開発され、使用されている。今回はもっとも新しい治療薬であるSGLT2阻害薬に焦点をあて、川崎医科大学内科学特任教授の加来浩平氏が講演した。
SGLT2阻害薬は、余分な糖を尿により体外に排出させ、血糖値を下げる糖尿病治療薬であり、現在、「アプルウェイ」など6成分7製剤が使用されている。作用機序が従来の糖尿病治療薬と異なるため、糖尿病のどの段階でも使用可能で、他剤と併用ができるのが大きな特徴だ。
SGLT2阻害薬はインスリンを介さない新しい作用機序を有し、HbA1c、空腹時および食後の高血糖を改善するのに加え、低血糖のリスクが低く、体重減少効果が期待できる治療薬で、糖尿病治療の新たな選択肢として期待されている。
適正に使用すれば安全性に関する大きな問題はない
SGLT2阻害薬の市販後の副作用として、尿量の増加とそれに伴う頻尿、脱水のほか、糖排出による尿路感染症他剤(SU薬やインスリンなど)との併用による低血糖の発生、ケトアシドーシス、皮膚障害などが報告されている。
これを受けて日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を策定し、2014年8月に改訂版を公表し、SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけた。
「報告されているSGLT2阻害薬の副作用や有害事象は、現時点ではいずれも臨床試験で予想された範囲内のものだった」と、加来氏は指摘している。
65歳以上の2型糖尿病患者を対象とした「トホグリフロジン」の特定使用成績調査の3ヶ月目の報告では、主な副作用は多尿・頻尿、尿路感染、性器感染、低血糖症、皮膚疾患などで、発現頻度はいずれも1%前後であり、臨床試験時の頻度を超えるものではなかった。
「SGLT2阻害薬の副作用の多くは薬剤の作用機序にもとづいて予測できるもので、リスクは回避可能だ。Recommendationも、安全に使うために注意喚起をしたもの。今後も慎重にみてゆく必要が有るが、現時点では患者のリスクについて十分に説明し、適正に使用すれば安全性に関する大きな問題はないと考えられる」と指摘している。
実臨床における有効性と安全性のプロファイルの検証が必要
日本の臨床現場では現在、SGLT2阻害薬は慎重に処方されている傾向があるが、新しい薬剤に対して発売後の最初の2年間に報告が集中する「ウェーバー効果」や、ネガティブな情報や先入観により過剰に報告数が増加する「評価バイアス」の影響が否定できないのではないかという。
SGLT2阻害薬による体液量減少(脱水)は心血管疾患、特に脳梗塞を増やすのではないかという疑問に対し、「糖尿病患者では1,000人当たり、年間15〜20人の心血管イベントが発生しており、SGLT2阻害薬の利用者でとくに多いわけではない。また、SGLT2阻害薬によるヘマトクリットの2%程度の上昇はただちにリスクとはならない」と説明した。
「海外では日本で報告されているリスクは大きな問題となっておらず、SGLT2阻害薬の処方が増え、極めて高い評価を得ている。日本では安全性への不安からか使用頻度が予想を超えて低く、いまだ有用性評価ができるレベルに至っていない」と加来氏は言う。
「糖尿病治療薬は全て、まれではあっても副作用のリスクがあることを認識すべきだ。SU薬もメトホルミンも安全性への懸念があったが、それを乗り越え、治療に活用できるようになった。血糖降下薬の臨床開発には、他薬にない厳しい基準が設けられている」と同氏は説明。「あくまで科学的な検証をもとに、先入観を排除し、実臨床における有効性と安全性のプロファイルを明らかにすることが必要」と強調した。
治療のベネフィットの最大化とリスクの最小化をはかるべき
糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)によると、2型糖尿病患者の血糖コントロールは改善しており、2013年には平均HbA1cは7.0%(合併症予防のための目標値)を切ったという。その一方で、糖尿病患者の体重(BMI)は上昇の一途をたどっており、2013年には2型糖尿病患者の平均BMIは25に到達した。
SGLT2阻害薬は、速やかで確実な血糖降下作用に加え、体重減少効果が期待できる薬剤だ。インスリン抵抗性の改善、血圧の低下、中性脂肪(TG)の低下、HDLコレステロールの上昇がみられ、脂肪肝の改善や、微量アルブミン尿の改善による腎保護効果への期待がもたれている。
糖尿病の医療では、患者による個別の医療を実現する「患者中心の医療」(Patient-centred Care)が求められている。
「薬物療法には一定のリスクがあり、リスクは患者によって異なる。医療者は治療のベネフィットの最大化とリスクの最小化をはかるべきだ」と加来氏は考えており、「患者は、低血糖のリスクがないなど、安心して服用できる治療薬を求めている。SGLT2阻害薬は適正に使用すれば、患者の思いを満たしてくれる薬になる可能性がある」と指摘した。
サノフィ
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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