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2015年06月18日
肥満症をストップ 肥満が11の病気の原因に こうすれば改善できる
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- メタボリックシンドローム 糖尿病と肥満


内臓脂肪が過剰にたまった状態では、悪玉のアディポサイトカインがたくさん出過ぎたり、善玉のアディポネクチンの分泌が低下してしまうという現象が起こり、多くの病気につながる。松澤氏は、内臓脂肪を前提とした「メタボリックシンドローム」の前身となる「内臓脂肪症候群」を提唱し、肥満症に関する研究は飛躍的に進歩した。

「肥満症」とは、医学的に減量治療を必要とする肥満を指すが、体格指数(BMI)が25以上で「肥満」と判定されても、すぐに治療が開始されるわけではない。肥満症は、「BMI25以上で、肥満に原因があるか肥満に関連していて、減量によって改善が期待できる11の関連疾患を伴うもの」「BMI25以上で、検査によって内臓脂肪型肥満と診断されたもの」と定義される。
あいち健康の森健康科学総合センターで実施された保健指導では、6ヵ月間で体重を3kg、BMIを1kg/㎡、ウエスト周囲径を2cm、それぞれ減らすことで、血圧値・血中脂質値(HDLコレステロール・中性脂肪)・血糖値などが改善することが確かめられた。
「脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、傷ついた血管壁を修復する働きをして動脈硬化を予防するほか、インスリンの働きを高める作用、血圧を低下させる作用などがあります。内臓脂肪が増えると、アディポネクチンの分泌が減少し、動脈硬化を防ぐ働きが低下し、インスリン抵抗性の状態を引き起こし、血糖を上昇させます」と、宮崎滋氏は述べている。
特定健診のウエスト周囲径の基準値となっている"男性85cm/女性90cm"は、内臓脂肪を早めにチェックするための良い手段になる。体重の3%以上の減少を達成するために、食事と運動をコントロールすることが重要だ。

総務省の社会生活基本調査(2011年)によると、日本人の睡眠時間は減少傾向にある。平均睡眠時間は7時間42分で、とくに45歳以上で減少している。睡眠時間は多すぎても肥満の増加につながるが、十分な睡眠時間を毎日確保することが望まれる。
また、交通事故などの背景に睡眠障害や睡眠時無呼吸症候群などが潜んでいることが指摘されている。睡眠不足は食欲を調節するホルモンの分泌にも異常をもたらし、睡眠不足が3日続くと糖尿病や肥満に悪影響を及ぼすおそれがある。
「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)は睡眠中、上気道の狭窄が原因で、いびきが生じ、無呼吸が出現する疾患だ。そのため、睡眠の断裂が生じ、昼間に眠気が生じる。主症状の夜のいびき・無呼吸と昼間の眠気が、体に悪い影響を与えている。
SASに加えて、ナルコレプシー、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群など、ほとんどの睡眠障害に対して、近年は保険診療が可能となっている。睡眠についての悩みをもっている人は、肥満症を改善するためにも、早めに医療機関に相談することが勧められる。

「玄米は沖縄で古くは良く食べられていましたが、欧米型の食事スタイルが普及した結果、あまり食べられなくなりました。実はこの玄米に血糖値の上昇を抑制する成分が含まれることが分かってきました。その成分が"γ-オリザノール"です」と、益崎氏は言う。
メタボリックシンドロームの人を対象に行われた過去の研究でも、玄米をよく食べる人では体重の減量、血糖値の低下、血管の改善などの効果を得られることが明らかになっている。益崎氏らの研究チームは玄米の胚芽に含まれる「γ-オリザノール」という成分に着目した。
細胞小器官のひとつである小胞体は、「タンパク質の加工工場」と呼ばれており、さまざまなタンパク質の合成に関わっている。小胞体の中に役割を終えて不要になったタンパク質や、異常なタンパク質が蓄積すると、機能障害を起こすのが「小胞体ストレス」だ。
高脂肪の食事をとり続けると、摂食中枢で小胞体ストレスが起こり、高脂肪食への依存性がさらに高まります。研究チームは過去の研究で、γ-オリザノールにこの小胞体ストレスを低下させる効果があることを突き止めた。
γ-オリザノールの化学構造式は、小胞体ストレスを抑制する化学物質に似ているという。γ-オリザノールが小胞体ストレスを抑えβ細胞の細胞死を抑制し、インスリン分泌能を高める作用をすることが明らかになった。「玄米を食べると、高脂肪のジャンクフードを好まなく、食事のバランスが改善し、体重増加が抑制されることも分かっています。古くから食べられている玄米にはメリットが多くあります」と、益崎氏は指摘した。

しかし、生活習慣のマネジメントには、個々の患者の動機付けに個人差があり、生活習慣を改善して維持するのが難しいという問題がある。患者によっては、ストレス発散のために過食したり、長期間につくられる食事習慣を変えるのが難しいなど、肥満のセルフマネジメントには困難が伴う。
「食事で摂取するエネルギーを運動で消費するエネルギー以下にすることが基本です。食事を減らしても栄養バランスを崩さないようにし、間食・早食い・夜食などの内臓脂肪をためる食習慣を改める必要があります」と、齋藤氏はアドバイスした。
食事療法と運動療法で適切な体重に近付けていくことが重要だ。1週間で体重を減らそうと考えずに、エネルギーをきちんと保持しながら、適切な体重を長期に維持できるような生活パターンを作り上げることが必要となる。
「肥満を増やさない食文化の熟成も必要とされています。もともとあった日本型の食事は肥満を防ぐ食べ方ですが、それが失われています。どうすれば肥満を防ぐ食文化を実現でき、患者さんが無理なく治療を続けられるようになるか、今後の展開に期待しています」と、齋藤氏は指摘した。
食事の基本は、3大栄養素のタンパク質、脂肪、炭水化物(糖と食物繊維)のバランスだ。「日本人が食べる食品の50〜60%が糖質で、糖質を減らすと、タンパク質と脂肪が増え過ぎてしまうおそれがある。糖質制限によって、必要な栄養素のひとつを極端に減らすのは栄養バランスを欠くことになる」と指摘された。
糖質制限食は、インスリンの分泌が減って太りにくくなり、短期的には減量効果が大きいという報告があるが、数年後には体重がベースラインにほぼ戻ったという報告もある。脂肪のエネルギーは1g9kcalで、タンパク質や炭水化物の2倍以上だ。主食であるご飯の量を減らすと逆に脂肪の量が増え、エネルギーが増えて太りやすくなるおそれがある。
「食事を完璧にコントールしようと思わないことも大切です。好きな食べ物をやめるとストレスになる。自分の食事で何が問題になっているかを知り、減らせる食べ物を決め、エネルギーを徐々に減らす方法であれば長続きします」といったアドバイスが参加者に行われた。
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