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2015年02月18日
日本肥満症予防協会が設立 「肥満症」が健康障害を引き起こす
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日本肥満学会は肥満症について「過栄養や運動不足などにより、脂肪が過剰に蓄積した状態であり、肥満に起因する疾患を有しており、減量を必要とする病態」と定義している。具体的には「肥満症診断基準2011」で、肥満(BMI 25以上)で、あるいは内臓脂肪面積が100cm²以上の「内臓脂肪型肥満」があり、肥満に起因ないし関連する11疾患に及ぶ健康障害のいずれかがある場合とされている。
肥満が引き起こす健康障害は、2型糖尿病や脂質異常症、高血圧、高尿酸血症などに加えて、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝、月経異常、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症、腎臓病などがある。肥満症は体重を減らすことで予防・改善が可能で、肥満に伴う健康障害の多くを改善できることが明らかになっている。
松澤氏は内臓脂肪を前提としたメタボリックシンドローム概念の前身となる「内臓脂肪症候群」を提唱して、インスリン抵抗性や高血圧などに関連の深い「アディポネクチン」を発見した功績が評価され、日本人としてはじめて国際肥満学会最高賞「ヴィレンドルフ賞」を受賞した。松澤氏は肥満研究の第一人者で日本肥満学会理事長などを歴任した。
日本では、日本肥満学会が2000年に「肥満症診断基準」、2006年に「肥満症治療ガイドライン2006」、2011年に「肥満症診断基準 2011」を策定し、2005年にはメタボリックシンドロームの診断基準を作成するなど、「肥満研究の分野で日本が世界をリードしている」と松澤氏は言う。

「肥満が影響する健康障害は医療費の増加の原因になる。肥満を解消することが、肥満に起因して起こる疾患の改善に有効であることが、さまざまな研究で確かめられている」と、副理事の宮崎滋・新山手病院生活習慣病センター長は言う。
すでにメタボリックシンドロームについては、国が2008年に世界に先駆けて「特定健診・保健指導」を導入し、2013年には厚労省研究班が、保健指導を受けた人は体重や血圧、血糖などの値が改善し、男性の3割、女性の3?4割がメタボリックシンドロームから離脱したとの調査結果をまとめた。また、保健指導を受けた人の医療費の平均は3割以上低かった(関連記事1、関連記事2)。
日本を含むアジア人は、遺伝的特性から欧米より肥満が少ない割に2型糖尿病や高血圧などの健康障害は多い。糖尿病学会(ADA)はガイドラインで、2型糖尿病スクリーニングの対象となるBMIの基準を、アジア系米国人は「23以上」に引き下げると発表。アジア人ではBMI25未満であっても、白人よりも2型糖尿病の発症率が数倍に上昇することが示された(関連記事)。
日本の診断基準ではBMI25以上を肥満と判定している。「日本人では高度肥満が少なく、より早期の肥満が健康障害を引き起こしやすい。肥満予防の意義を広く浸透させる必要がある」と、理事の植木浩二郎・東京大学分子糖尿病科学講座特任教授は話す。
内臓脂肪は、腹部CTスキャンで内臓脂肪面積を測って診断されるが、最近は簡単に測れる体脂肪計や体重計も普及している。これは、体を構成する物質によって電気抵抗が変わることを利用した「インピーダンス法」という測定法によるものだ。体脂肪率を正確に測るものではないが、おおよその体脂肪率やその変化を知る上で参考になる。日本が世界に先駆けて普及させた技術のひとつだ。
松澤氏は「肥満症がメタボリックシンドロームは大きな課題となっている。体重を増加させない健康的な生活習慣を育てていくために、患者や2,000万人を超える予備群に対し、正しい健康情報を提供していく。予防への取り組みを全国に拡げる意義は大きい」と同協会の活動目的を説明。肥満を解消する健康的な生活習慣の普及に向け、各種活動を行っていきたいと述べた。
同協会は2月に公式ホームページの公開を始め、本格的な活動開始を今年4月以降を予定している。肥満症やメタボリックシンドロームに関するニュース配信や地域巡回セミナーでの内臓脂肪測定イベントを実施、10月には「肥満症予防週間」を設け「肥満症予防デー」を制定するなどの企画も予定している。
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