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2014年10月22日
アジアの伝統的な食事スタイルがインスリン抵抗性を改善 体重も減少
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アジアの伝統的な食事スタイルは、高炭水化物で低脂肪で、食物繊維をたっぷりとることが特徴となる。米国のジョスリン糖尿病センターのジョージ キング氏らは、アジア人での2型糖尿病の増加の一因が食事の欧米化であることに着目。アジアの伝統食をとっている人では、体重の増加が少なく、インスリン抵抗性も改善しやすいとの調査結果を「PLOS Medicine」に発表した。
米は、炭水化物に加えてアミノ酸(タンパク質)も含まれる、栄養バランスの良い食品だ。アジアには、肉と油脂を料理に使わない地域が多く、魚も沿岸部を除く地域では不足するので、おかずは野菜が中心に構成されてきた。
そこで、発達したのが「だし」を「うま味」として野菜に加える方法だ。日本では昆布や鰹節がだしとして使われ、大豆を原料とする味噌、醤油も使われている。タイ、ベトナムからインドシナ半島にかけては魚を原料に発酵させた「醤圏」が主流だ。野菜にうま味を付けて食べる「だしの文化」はアジア全域で共通している。

全員にアジア伝統食を8週間摂取してもらい、続く8週間は7人がアジア伝統食を継続し、33人は同じカロリー摂取量の欧米食に切り替えた。ジョスリン糖尿病センターの栄養士が献立を作成し、プロの調理師が調理した食事が、2日ごとに自宅に配送された。
アジア伝統食は、カロリー摂取量の70%が炭水化物、15%がタンパク質、15%が脂肪で、1,000kcal当たりの食物繊維量が15gだった。一方、欧米食はカロリー摂取量の50%が炭水化物、16%がタンパク質、34%が脂肪で、1,000kcal当たりの食物繊維量が6gだった。
その結果、アジア系・欧州系米国人ともにアジアの伝統食を摂取すた期間は、体重が減少して、インスリン抵抗性が改善したが、欧米食に切り替えるとこれらが増加に転じた。
アジア伝統食をとることで、体重は1.6kg、BMIは0.6、体脂肪率は1.7%、体幹部脂肪率は2.2%、総コレステロールは25.6mg/dL、HDLコレステロールは10.4mg/dL、LDLコレステロールは14.4mg/dL、それぞれ減少した。
血糖値やインスリン値の上昇の程度を較べる方法にインスリン曲線下面積(AUC)がある。アジア伝統食はAUCが960.2µU/mL・h減少したことも明らかになった。この傾向はアジア系の人で顕著で、AUCは最大で1402.4µU/mL・h減少した。
アジア人は欧米人に比べ2型糖尿病を発症しやすく、同じ欧米式の食事スタイルを続けていると、2型糖尿病の発症リスクが2倍に上昇することが、過去の研究で確かめられているという。また、世界の2型糖尿病有病者のおよそ半数は南東アジアや西太平洋の地域に集中しており、中国では成人の糖尿病有病率は10%に達した。
ジョスリン糖尿病センターでは、アジア人向けの健康な生活スタイルをアドバイスする書籍の発行を2015年初めに予定している。「糖尿病を予防・改善するために、アジアの伝統的な食事スタイルを採用することが、効果的な戦略になる可能性があります」と、キング氏は指摘している。
In Joslin Trial, Asian Americans Lower Insulin Resistance on Traditional Diet(ジョスリン糖尿病センター 2014年9月17日)
Improvement of Insulin Sensitivity by Isoenergy High Carbohydrate Traditional Asian Diet: A Randomized Controlled Pilot Feasibility Study(PLOS Medicine 2014年9月16日)
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