ニュース
2014年09月13日
糖尿病、肥満、がん、認知症のすべてに効果的な「魔法の薬」
- キーワード
- 運動療法

運動にはさまざまな効果がある。運動を続ければ、体力が向上し、疲労しにくい体になる。腰痛のある人でも、適度な運動を続けていれば、改善効果を期待できる。運動によって関節炎の痛みを50%減らせるという研究結果も発表された。
運動というと、長距離を走るマラソンや、トレッドミルなどの運動機器を使ったランニング、ジムでのウェイトトレーニングを思い浮かべる人が多いかもしれない。「そうした激しい運動を行わなくても、ウォーキングを行うだけで効果を期待できます」と、ブラウン博士は言う。
「ウォーキングは誰でもどこでも取り組める、もっとも手軽な運動です。そのウォーキングに驚くべき効果があることが、最近の研究で分かってきました」。
運動機能を維持するために、筋肉や骨・関節と、バランスや反射などを調節する脳神経系との、両方の機能が保たれていることが必要となる。
これらの機能が低下すると、運動器の障害のために自立度が低下し、介護が必要となる危険性が高い状態であるロコモティブシンドローム(運動器症候群)になりやすい。
「ウォーキングを続けることで、運動器の障害を減らすことができ、活動的な状態を維持することできます。加齢にともなうさまざまな病気のリスクを減らすことができるのです。1日に30分のウォーキングによって、健康上の特典をすべて手に入れることができます」と、ブラウン博士は強調する。
筋力の低下は特に下半身に起こりやすく、関節痛の原因になるほか、転倒を招く危険性もある。ウォーキングを続けて自分の体をしっかり支えられるようになれば、つまずいたときなどにも体を支え、転びにくくなる。
ブラウン博士らは、脚を負傷しギブスを付けることになった高齢者を対象に、2週間の観察研究を行った。被験者を2つのグループに分け比較した。ひとつは運動をする習慣のない人たち、もうひとつは若い頃から運動を続けていた人たちだった。
ギブスを付けている間に被験者の脚の筋力は低下していった。ギブスを外してから、筋力トレーニングを行い、筋肉量がどれだけ回復するかをみた。運動をする習慣のある人では筋力の回復が早かったが、運動をしてこなかった人では筋力は元に戻らなかった。
「若いうちから、ウォーキングを習慣として続けることが重要です。はじめは短い距離を歩くだけでも、続けていれば体力がつき、距離を延ばすことができます。大切なことは、いま運動を始めることなのです」と、ブラウン博士は指摘する。
また、社会参加は、脳機能を活用し認知機能を維持することに役立つだけでなく、身体活動量を増やし、運動機能を維持することにも効果がある。
「高齢者の社会参加と体力には密接な関係があります。運動によって社会参加を促すことには、認知機能の衰退を防ぐために強いインパクトがあります」と、ブラウン博士はまとめている。
Scientists discover hormone released after exercise can 'predict' biological age(アストン大学 2014年2月17日)
British Science Festival
運動療法の関連記事
- 運動と健康的な食事の組み合わせで効果は最大に 内臓脂肪が減り転倒も防止 女性にも運動が必要
- ウォーキングなどの運動で糖尿病リスクを減少 余暇時間の運動が寿命を4.5年延ばす 仕事の後は体を動かす習慣を
- ウォーキングなどの運動で糖尿病など19種類の疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防
- ウォーキングなどの運動は糖尿病の人に良い 運動で食欲も抑えられる 認知症の予防にもつながる
- 糖尿病の人に「不規則な生活」はなぜNG? 体内時計が乱れるとインスリン作用が低下 どうすれば改善できる?
- ラジオ体操などにより要介護や認知症のリスクが低下 体操は取り組みやすく続けやすい
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 良い睡眠は糖尿病リスクを減らす 睡眠は「魔法の薬」 3つの方法で改善
- 座っている時間が糖尿病や肥満のリスクを上昇 わずか10分間の運動で血管が健康に 睡眠も改善
- 少し食べすぎただけで糖尿病? ストレスが糖尿病や肥満の原因に ウォーキングなどの運動でストレスを解消