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2014年09月05日
食欲を抑える方法 ホウレンソウがジャンクフード対策に効果的
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- 食事療法

間食が良くないことを理解していても、なかなかやめられないという人は多い。そんな人に朗報だ。
ホウレンソウに含まれる天然成分が食物の消化・吸収を遅くし、食欲を抑える効果があることを、スウェーデンの科学者が発見した。この成分の解明が進めば、肥満の予防や食事療法に役立つ可能性がある。
「チラコイド」は、ホウレンソウなどの葉野菜葉緑体にある膜状の物質。積み重なり構造をつくり、葉緑素など光合成に必要な成分を含んでいる。
スウェーデンのルンド大学のシャーロット エルランソン-アルバートソン教授(食事行動学)は、食欲を抑える効果的な治療の研究をしており、チラコイドの作用に着目した。
同教授は、ホウレンソウのチラコイドが腸での消化・吸収を遅くし、空腹感をやわらげる作用をすることを解明した。
体の中には、満腹になると食欲にブレーキをかけるメカニズムがあるが、高カロリーのジャンクフードを食べ続けると、このメカニズムが働きにくくなると考えられている。
チラコイドは、小腸から分泌される「GLP-1」というホルモンの分泌を刺激する。GLP-1は胃の内容物の排出を遅くする作用がある。GLP-1が分泌されると、食欲をコントロールしている脳の中枢神経に信号が伝わりやすくなり、食欲が抑制されるという。
38人の過体重の女性を対象に3ヵ月間行った実験実験では、ホウレンソウの抽出物で作ったジュースを朝食の30分に摂取することで、「快楽飢餓」の感覚が95%減少し、減量の成功率が43%上昇することが明らかになった。
チラコイドを飲んだ女性は、平均して5kgの減量に成功し、1日3度の食事を遵守することが容易になり、食間に食欲を感じることがなくなった。
「現代の加工食品は手早く食べることができ、脳に満腹を知らせる信号が送られのが追いつかないほど早く消化されてしまいます。チラコイドはこの消化のプロセスを遅くするので、満腹になったという信号が伝わりやすくなり、快楽飢餓が抑制されます」と、エルランソン-アルバートソン教授は説明している。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究者は、マウスにエサを与えるときに、特定の音声を聴かせる実験を行った。やがてマウスは、音声を聴くと食欲を示すようになった。
健康的なエサを与えるマウスと、高カロリーのエサを与えるマウスに分け比較した。高カロリーのエサは、パイ、果物入り焼き団子、クッキー、ケーキなどのジャンクフードを含んでおり、カロリーは150%増しにした。
研究チームは2週間後に、マウスに砂糖水を好きなだけ摂取させるようにした。その結果、健康的な食事を食べ続けたマウスは、一定の量を摂取すると、音声を聴いても砂糖水を飲み過ぎることなかった。過食から身を守り、健康的でバランスの良い食品を選ぶ本能的なメカニズムが作用したとみられる。
一方、ジャンクフードを食べ続けたマウスは、音声を聴いている間ずっと食べ続けるようになり、ジャンクフードに対する中毒性が示された。この変化は、ラットが健康的な食生活に戻った後もしばらくの間続いた。
「脳には食欲が満たされたときに活性化する報酬回路があり、ジャンクフードを食べ続けると、この報酬回路に持続的な異変が起こります」と、研究者は説明している。脳の報酬回路はすべての哺乳動物で類似しているため、ヒトの快楽飢餓を説明する手がかりになるという。
「たとえてみると、昼食のデザートにアイスクリームを食べたのに、アイスクリーム売りのバンの合図を聴くと、また食べたくなるようなものです。世界的に肥満は急増しており、食欲をコントロールする方法の開発が求められています」と指摘している。
Study: How junk food changes eating behaviour(ニューサウスウェールズ大学 2014年8月28日)
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