ニュース

2014年07月18日

インスリンが体内時計の調節メカニズムに影響

キーワード
医薬品/インスリン
 山口大学は、インスリンが体内時計の調節で重要な役割を担っていることを明らかにした。膵臓から分泌されるインスリンは、血糖値を一定にコントロールするのに加えて、体内時計のリセットにも関与している可能性があるという。

 研究成果は、山口大学時間学研究所の佐藤美穂特命助教、同明石真教授らによるもの。詳細は科学誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。
概日リズムはインスリン分泌にも影響する
 ヒトの体には、「概日リズム」(サーカディアンリズム)を調整するために24時間周期のリズムをつくりだす体内時計のメカニズムが備わっている。これにより、体温やホルモン分泌など体の基本的な機能は、約24時間のリズムを示す。

 概日リズムは、適切な睡眠時間、覚醒のピーク、食欲や消化に含め、インスリン分泌にも影響する。生活の中で起こる生物時計の乱れや時差ぼけを調整するためには、適切なタイミングで光を浴びることや、日差しの下でウォーキングなどの運動をすることが重要とされる。

 さらに、食事のタイミングも影響しており、毎日の生活リズムを調整する体内時計にも影響が出てくる。朝の食事は体内時計を朝型に、夜の食事は体内時計を夜型に修正すると考えられている。

 しかし、食事による体内時計の調節メカニズムについては良く分かっていなかった。今回、研究グループは、マウスにインスリンを阻害する物質を与える実験を行い、食事による肝臓の体内時計の調節が遅れることを確認した。

 インスリンが消化器官の体内時計を調整し、食事時間と消化器の同期化を可能にし、消化吸収を効果的にしている。つまりインスリンは、体内時計を食事時間に同期化する際に役立っている可能性があるという。

 さらにインスリンが肝臓や脂肪などの食事と関係の深い臓器の体内時計に強く作用する一方で、それ以外の臓器にはほとんど作用しないことも確認した。

体内時計に合わせた食事が効果的
 決まった時間に食事をとり、食事間隔を均等に空けるようにするなど、食事に関わる体内時計の調節を行えば、空腹感や、食事時の消化吸収、代謝などを調整する体内時計が、タイミングよく発動するようになる。

 「体内の生理的なリズムと環境によるリズムが合わない状態が慢性化すると、生理的パフォーマンスを低下させるだけでなく、糖尿病・心血管疾患・睡眠障害・がんなどのさまざま疾患の重要なリスクとなります」と明石真教授は述べている。

 また、「インスリン抵抗性がありインスリンの機能が低下している2型糖尿病患者では、体内時計が食事時刻に同調しにくくなっている可能性や、誤ったタイミングのインスリン注射が、体内時計の予期せぬずれを起こしている可能性があります」とコメントしている。

山口大学時間学研究所
The Role of the Endocrine System in Feeding-Induced Tissue-Specific Circadian Entrainment(Cell Reports 2014年7月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲