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2014年07月08日
CKD・糖尿病性腎症の疾病管理〜バイオマーカーL-FABPの可能性〜
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- フットケア情報ファイル 糖尿病の検査(HbA1c 他)
第57回 日本糖尿病学会年次学術集会(モーニングセミナー2より)
CKDは、腎の構造的または機能的異常が3カ月以上持続する病態と定義されている。CKDが進行し末期腎不全に至ると透析や移植が必要になることはよく知られているが、それだけではなく病期の進行とともに心血管疾患を発症する危険が高くなることが重要であり(図1)、それが今日、CKDが注目されている理由である。そしてそのCKDの代表が糖尿病性腎症であることは、国内における透析導入原疾患のトップを占めていることにからも明らかである。
高血糖によって輸入細動脈が拡張し糸球体内静水圧が上昇して糸球体が障害され、その結果生じる高血圧や尿蛋白排泄、あるいは高血糖に伴う腎組織RA系の亢進、種々の代謝異常の修飾が加わり、腎障害の進行が加速するというのが糖尿病性腎症の単純化したメカニズムであるが(図2)、ここで注意すべきことは、尿蛋白は腎障害の結果として現れるばかりでなく、腎障害の原因にもなっているという点である。
座長の和田志氏
尿蛋白の主成分はアルブミンだが、我々はそのアルブミンに結合している遊離脂肪酸に着目し、糸球体障害のないマウスの腹腔内にウシ血清アルブミンを投与したところ、間質尿細管に強い炎症を生じることを確認した。脱脂して脂肪酸を除去したアルブミンでは糸球体障害が軽度であったことから、尿蛋白に結合した脂肪酸が腎障害を起こすと考えられた。このアイデアをもとに基礎研究を進め、培養近位尿細管細胞への脂肪酸結合蛋白の添加によってMCP-1等の炎症性サイトカインの発現が亢進することなどを報告してきた。また臨床的には、ネフローゼ症候群と糖尿病性腎症の患者を比較すると、尿蛋白排泄レベルが同程度であっても後者のほうが尿中脂肪酸の量が多く、腎障害性が強いことが示唆される。
演者の木村健二郎氏
尿蛋白の排泄が腎障害を加速するという事実は、大規模臨床研究でも示されている。例えばロサルタンの腎保護効果を検証したRENAAL研究では確かに同薬の効果が確認されたが、研究が始まって6カ月の時点での尿蛋白レベルが同等であればその効果はプラセボと変わらないと報告されている。つまり、腎保護効果は尿蛋白減少効果に依存するということだ。
以上をまとめると、糖尿病性腎症の進展抑制には、まず血糖と血圧のコントロールにより糸球体内圧を下げること、そして尿蛋白を減らすことが重要と言える。実際、血糖や血圧、あるいは脂質を集学的治療で厳格に管理することで、腎症進展のみならず心血管疾患を抑制可能であることは、既にSteno-2研究によって示されている。ところが、その後行われたACCORD研究では、さらに強力に薬剤介入したが、結果はよく知られているように、かえって有害事象が増えてしまった。その反省から、厳格な管理目標を一律に定めるのではなく、個々の患者の状態にあわせてゴールを柔軟に設定することが重要であると考えられるようになった。
昨年改訂された日本腎臓学会の『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013』でもこの点を重視しており、糖尿病の有無と病期別に降圧目標を設定しているほか、各病態における推奨降圧薬やそれら治療の推奨グレードを明記している。
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