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2014年06月25日
サッカーが運動療法に 週2回のサッカーが血糖コントロールを改善
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サッカーは欧州を中心に人気のあるスポーツで、ルールが単純なので参加しやすく、社会的な相互交流の要素も含んでいる。プロスポーツとしてのサッカーは常に走り続ける激しいスポーツという印象があるが、アマチュア選手のサッカーでは通常の歩行をする時間も多く、適度なインターバル運動になるという。
研究は、デンマークのコペンハーゲン大学スポーツ健康研究所のジェンズ バングスボ教授らによるもので、ふだん運動をしていない30〜60歳の、2型糖尿病の男性21人と、高血圧の男性32人を対象を対象に行われた。
参加者を、▽週に2回1時間のサッカーを楽しむグループ、▽何も運動をしないグループに分けた。
研究開始から24週間後の時点で、サッカーを行ったグループでは、身体パフォーマンスは50%向上し、血糖値が20%、腹部脂肪が12%、改善したことが分かった。大腿骨の骨密度も改善していた。
さらに、糖尿病患者では12%、高血圧症患者では10%、の最大酸素摂取量の増加がみられた。糖尿病患者は平均で2kg体脂肪が減少していた。身体機能がより良くなることと体脂肪率が低下することによって、より日常生活で動きやすい体となったという。
「高齢者は特に骨密度が低下しやすく、運動によって改善することができますが、骨折リスクを低下させるのは容易ではありません。サッカーであれば、運動や心臓の能力を向上させる効果や、転倒や骨折のリスクを最小限に抑える効果を期待できます」と、コペンハーゲン大学のピーター クルストラップ氏は説明する。
また、運動を続ける上で障害になるのは、運動を安全に行うことに加えて、運動を続けられるよう動機付けを与えることだという。今回の研究では、運動経験のない患者に限定したため、体力差が大きくなく、参加者は均等にスポーツに参加することができた。
研究終了後も、参加者の多くはサッカーのトレーニングを続けているという。その理由は明快で、「サッカーを通じて生活の質が向上している」と感じている人が多いためだという。参加者は今後は海外での合宿も計画している。
「サッカーは人気があり、集団で行うスポーツなので、参加者に楽しみを与えることができます。研究の参加者の多くは、サッカーを続けることで満足度が高まることが示されました。運動をすること自体が動機になるのは強みです。楽しく運動をできる環境であれば、運動は長続きします」と、クルストラップ氏は述べている。
GPS測定やビデオを用いた分析により、サッカーにはダッシュや急停止、ターン、ドリブル、パス、シュートなど多様な運動の要素が含まれることが明らかになった。
サッカーにより心肺機能と筋力が向上すると、階段を登る、買い物をする、自転車に乗る、ガーデニングなどの日常的な身体活動も容易にできるようになる。こうした身体能力の向上が生活の質を改善していくという。生活の質を改善することで、要介護のリスクが低下し、家族の健康リスクを低下させることも可能になる。
「過度の運動はかえって身体的な障害を高めるおそれがあるので、無理をしないことが大切です。会話ができるくらいのペースで、社会的な交流を高めながらサッカーを行うと効果的です」とアドバイスしている。
Recreational football can treat hypertensive and type 2 diabetes patients(コペンハーゲン大学 2014年6月10日)
Football for untrained 70-year-old men - beneficial effects on heart function, muscle strength and bone mineralization(コペンハーゲン大学 2014年6月6日)
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