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2014年05月28日
糖尿病患者の1割が通院中断 支援すれば6割の中断を防げる
第57回日本糖尿病学会年次学術集会
糖尿病は一度診断されると、ほとんどの場合は一生の間、医療機関を継続して通院することが必要となる。しかし、2型糖尿病の多くは自覚症状がないため、糖尿病治療への意欲を失う患者が少なくない。また、医療機関に通院していても、さまざまな理由で通院を続けるのを困難に感じている患者もいる。
早期に糖尿病と診断され、一度医療機関を受診しても、その後通院を中断し、重症の合併症が起こってから再度受診する場合が多い。
そこで、厚生労働省の研究班は、糖尿病の治療中断の実態を調べるために調査を進めている。治療中断についての調査は国内外で少なく、全国規模の調査は今回がはじめてではないかとしている。
研究は、厚生労働科学研究「患者データベースに基づく糖尿病の新規合併症マーカーの探索と均てん化に関する研究―合併症予防と受診中断抑止の視点から」(研究代表者:野田光彦氏)の成果だ。
・ 受診中断は男性で仕事を持っている人に多い傾向がある。
・ 高齢者に比べ、若年者(50歳未満、とくに20〜30歳代)で受診中断が多い。
・ 血糖コントロールの悪い人(HbA1cが8%以上)、または、かなりよい人にも多い。
・ 過去に受診中断をした人の受診中断率は高い。
・ 栄養指導、療養指導は受診中断の減少に有効である。
・ 若年者へは、可能な範囲で受診時間の融通性を高くする。
・ インスリンの自己注射が指示どおり行われず残っている、または、きちんと薬剤が内服されず残薬がある場合には、医療費が経済的に負担である可能性を考慮する。
・ 医療費が経済的に負担である場合は、より薬価の低い薬剤や後発医薬品を考慮する。
・ 薬剤を中止できそうな場合も、その後の受診中断の可能性を考慮して慎重に判断する。
・ 受診中断者への受診勧奨を行う。電話、郵便物はいずれも同程度に有効である。
・ 受診中断者への問い合わせと受診勧奨は、医療保険者や産業医等、直接に診療に当たらない第三者も実施しうる。
・ 過去に受診中断した人には受診中断した理由を尋ねる。 詳細は、国立国際医療研究センターホームページで閲覧できる。 国立国際医療研究センター 糖尿病研究部
糖尿病受診中断対策マニュアル
糖尿病受診中断対策包括ガイド 第57回日本糖尿病学会年次学術集会 戦略研究事例〜糖尿病予防のための戦略研究(厚生労働省)
医療機関で糖尿病の治療を受けている患者のうち、1年間で約1割が通院を中断しているという調査結果を厚生労働省の研究班がまとめ、大阪で開催された第57回日本糖尿病学会年次学術集会で発表した。
治療継続の意欲を失う糖尿病患者は少なくない
支援を受けた患者の受診中断は62%減少
研究は2009年〜10年に、東京や大阪など全国の11の医師会が協力して、約2,200人の2型糖尿病患者が参加して行われた。研究グループは、参加した患者を「診療支援群」(954人)、「通常診療群」(1,246人)に割り付けた。両群の患者に「糖尿病治療ガイド」を渡し、ニューズレターを定期的に配った。
その上で、診療支援群には、予定日に受診しなかった場合に電話や手紙で積極的に受診を呼びかける、検査値の目標達成度をフィードバックする、支援センターが食事と運動のアドバイスをし患者を励ますなどの指導を行った。一方、通常診療群には特別な対応はせず、通常通りの診療を行った。
期間中に治療を2ヵ月以上中断した患者は、診療支援群では30人(3.04%)、通常診療群では105人(8.25%)だった。診療支援を行うことで、治療中断率は62%減少したことが明らかになった。また、支援を受けた患者は血糖コントロールもより改善しており、HbA1cは平均0.17%、随時血糖値は8.15mg/dL低下していた。
支援を受けなかった患者が治療の中断した理由として多かったのは、「仕事(学業)のため、忙しい」(24.6%)、「医療費が経済的に負担」(15.8%)、「体調が良い」(10.5%)、「今通院しなくても大丈夫だと思う」(7.0%)だった。
受診を中断する患者数は年間51万人
「糖尿病有病者数」は950万人で、うち実際に医療機関に受診している数は620万人と推定されている。受診していた糖尿病患者のうち、約51万人が1年間に受診を中断する計算になる。今回の調査は40歳以上の患者を対象にしており、実際には受診中断は若い患者に多いので、中断者数はさらに増える可能性がある。
治療を中断した患者は、合併症を発症してから、受診を再開することが多い。年間32万人、10年間で320万人の受診中断を防ぐことで、かなりの数の合併症を予防することができるようになる。
「糖尿病の治療では、転医や病診連携も多いので、医療施設だけで受診中断を減少する対策をするのをは難しい。病院や診療所以外でも、地域の実情に合わせて受診を促す仕組み作りが求められる。受診チェックと受診勧奨に加え、マンパワーによって療養指導も行い、モチベーションを引き出す方法を考える必要がある」と、研究者は述べている。
今回の研究は、日本医師会の全面的支援を得て行われた厚生労働科学研究「糖尿病予防のための戦略研究」の課題2「J-DOIT2」の成果をふまえ、糖尿病患者の受診中断を抑制するための方策をさぐる目的で行われた。
J-DOIT2は、かかりつけ医として活動する医師とその外来糖尿病患者を対象に、患者に対する受診勧奨と、電話や手紙による生活指導と、医師への診療内容のフィードバックによって、どれだけ受診中断を抑制できるかを検証した研究だ。
医師向けの受診中断対策マニュアルも公開
研究グループは研究成果をもとに、受診中断を防ぐために、医師向けの「糖尿病受診中断対策マニュアル」をまとめた。
治療中断の理由として、▽仕事が忙して時間をとれない、▽糖尿病は自覚症状が乏しいために治療の必要を感じない、▽医療費の経済的な負担が重いと感じるケースが多いと分析している。
受診中断者の特徴
・ 受診中断率は年8%程度と推定される。・ 受診中断は男性で仕事を持っている人に多い傾向がある。
・ 高齢者に比べ、若年者(50歳未満、とくに20〜30歳代)で受診中断が多い。
・ 血糖コントロールの悪い人(HbA1cが8%以上)、または、かなりよい人にも多い。
・ 過去に受診中断をした人の受診中断率は高い。
受診中断を防ぐための対策
・ 初診の糖尿病の患者に、継続的に受診が必要であることを伝える。・ 栄養指導、療養指導は受診中断の減少に有効である。
・ 若年者へは、可能な範囲で受診時間の融通性を高くする。
・ インスリンの自己注射が指示どおり行われず残っている、または、きちんと薬剤が内服されず残薬がある場合には、医療費が経済的に負担である可能性を考慮する。
・ 医療費が経済的に負担である場合は、より薬価の低い薬剤や後発医薬品を考慮する。
・ 薬剤を中止できそうな場合も、その後の受診中断の可能性を考慮して慎重に判断する。
・ 受診中断者への受診勧奨を行う。電話、郵便物はいずれも同程度に有効である。
・ 受診中断者への問い合わせと受診勧奨は、医療保険者や産業医等、直接に診療に当たらない第三者も実施しうる。
・ 過去に受診中断した人には受診中断した理由を尋ねる。 詳細は、国立国際医療研究センターホームページで閲覧できる。 国立国際医療研究センター 糖尿病研究部
糖尿病受診中断対策マニュアル
糖尿病受診中断対策包括ガイド 第57回日本糖尿病学会年次学術集会 戦略研究事例〜糖尿病予防のための戦略研究(厚生労働省)
ご指摘をいただき糖尿病受診者数など一部内容を訂正しました(2014年7月8日)。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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