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2011年07月13日
肥満にならない食事法 「少しの工夫で体重増加は避けられる」米研究
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- 食事療法


1 カーボ(炭水化物)の質に注意
- ソーダ水など清涼飲料や甘いお菓子に多く含まれる糖質は、吸収が早く、食後の高血糖につながりやすい。
- ジャガイモなどのイモ類や、精白米、白パン、朝食用の食品などにも、吸収の早い炭水化物が多い食品がある。
- 精製されていない全粒穀物、野菜、果物、ナッツ類、ヨーグルトなど、加工度の低い食品を増やす。
- 白パン、精白米、加工肉、糖分の多い甘い飲料など、加工度の高い食品をなるべく減らす。
「米国の成人の平均体重は、1年当たり約454g(1ポンド)増えている。体重増加は少しずつ長年にわたり起こるので、何が原因になっているかを究明するのは難しい。個人において肥満の要因を特定するのは特に困難だ」とハーバード公衆衛生大学院循環器内科のDariush Mozaffarian氏は話す。
研究チームは、3件の大規模コホート研究のデータをもとに、4年ごとに生活スタイルのさまざまな要因と体重増加との関連を調べた。追跡期間は12〜20年と長期におよび、解析対象者の数は約12万人以上に上る。3件の研究とは、「ナース・ヘルス・スタディ(NHS)」(女性 5万422人)、「ナース・ヘルス・スタディII(NHS II)」(女性 4万7898人)、「保健指導者フォーローアップ研究(HPFS)」(男性 2万2557人)。
研究参加者はいずれも研究開始時には、肥満や慢性疾患が認められなかった。4年の期間中に平均で体重が約1.5kg(3.35ポンド)増えており、これは20年の期間では7.6kg(16.8ポンド)の体重増加に相当する。
体重増加との生活スタイルの変化の関連を調べたところ、3件の研究で同じような結果が得られた。20年間の研究期間で、もっとも体重増加につながりやすい食品は、ポテトチップス、ジャガイモ、糖分の多い甘い清涼飲料、未加工肉、加工肉であることが判明した。4年間毎日食べていると、それぞれ平均で体重が770g、580g、450g、430g、430g増える計算になるという。
逆に体重が増えにくい食品は、野菜、全粒粉、果物、ナッツ類、ヨーグルトで、これらの食品をよくとる人では、体重が増えにくい傾向がみられ、それぞれ体重増は100g、170g、220g、260g、370gにとどまった。

しかし研究者らは「エネルギー摂取量のみに注意を向けるのは、もっとも効果的なやり方ではないかもしれない。食品に含まれる総脂肪量やエネルギー密度、糖分にも注意を向けた方がいい。より健康的な食品や飲料を選び、食事全体の質に気を配ることが重要だろう」と指摘する。
食事の量だけでなく、食事のパターンにも気を配る必要がある。より健康的な食事を続けていれば、例えば「食欲を抑えられ、腹八分目で満足できるようになる」、「インスリン抵抗性が改善される」等の効果を期待できるようになる。
「体重増加と肥満を防ぐために、適正な知識をもち食品を選ぶことが重要となる。食品に“良い”と“悪い”はないとする思い込みを見直すべきだ」とハーバード公衆衛生大学院のFrank Hu教授(臨床栄養学)は話す。
研究では、身体活動やテレビ視聴、睡眠時間なども、体重の変化に影響することが示された。もっとも体重増加が少なかったのは、睡眠時間が6〜8時間の人で、6時間未満や8時間以上の人では肥満が増えるという。
1人ひとりの生活スタイルの変化がもたらす影響は少ないが、いくつかの要因が重なり積もると、体重増加につながるという。食習慣の影響は特に大きい。
「食事にちょっとした工夫を加えたり、生活習慣を改善するだけで、体重の増減に違いが出てくる。気が付かないでいると体重は増えてしまうが、食事や生活スタイルを少し改善しただけでも、生涯にわたり健康を維持できるようになる」とMozaffarian氏は述べている。
この研究は米国立衛生研究所(NIH)とサール・スカラー・プログラムの助成を得て行われた。
Changes in Specific Dietary Factors May Have Big Impact on Long-Term Weight Gain(ハーバード公衆衛生大学院 2011年6月22日)
Changes in Diet and Lifestyle and Long-Term Weight Gain in Women and Men
New England Journal of Medicine, 2011; 364:2392-2404
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