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2010年05月31日

1型糖尿病とウイルス感染の関連を解明 83%に腸内ウイルス感染歴

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1型糖尿病
 1型糖尿病の患者の83%で、腸管内で増殖する「エンテロウイルス」の感染歴が確認されたとする研究成果がイタリアの研究者によって発表された。

 この研究は、サンディエゴで開催された米国微生物学会(American Society for Microbiology)の年次学術集会で5月24日に、インスブリア大学(イタリア北部バレーゼ)のAntonio Toniolo教授(微生物学)の研究チームが発表したもの。

 1型糖尿病は小児・若年期に発症することが多く、小児糖尿病やインスリン依存型糖尿病と称されることが多い。何らかの原因で膵臓の細胞が破壊され発症すると考えられている。ウイルス感染に対し免疫細胞が過剰に反応し膵臓のβ細胞も破壊されてしまい、インスリンを産生できなくなることが要因として指摘されている。

 1型糖尿病ではインスリンが絶対的に欠乏するので、生命を維持するためにインスリン治療が不可欠となる。1型糖尿病の発症メカニズムについては分かっていないことが多い。そのため1型糖尿病発症の背景にある環境的な原因(後天的原因)の解明が待たれている。

 Toniolo教授ら研究チームは、イタリアのヴァレーズとピサの小児内分泌内科に通院する2〜16歳の1型糖尿病患者112人を対象に、診断の際に血液検査を行った。腸内ウイルスのDNAを調査し、83%でエンテロウイルスの感染歴があることを確認した。一方、糖尿病でない子供のうち感染歴があったのは7%だった。

 エンテロウイルスに属するウイルスは数多くの種類があり、子供の夏のカゼの代表としてあげられる発熱、頭痛、のどの痛みといった症状を引き起こす。米国では年間1000〜1500万件の感染症を起こしているといわれている。

 Toniolo教授は「エンテロウイルス感染と1型糖尿病の発症との関連が確かめられたわけではない」としながらも、「新たに1型糖尿病と診断された患者では、腸内エンテロウイルスの遺伝子配列が高い比率でみつかった。異なるエンテロウイルスのタイプが若年型糖尿病の初期段階での重要なバイオマーカーになる可能性がある」と指摘している。

Viral infection linked to juvenile diabetes(米国微生物学会リリース)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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