ニュース

2010年05月13日

インクレチン関連薬のHbA1c低下作用 もっとも優れているのはどれ?

 メトホルミン単独の治療で血糖コントロールが十分に改善されない2型糖尿病患者では、ヒトGLP-1アナログ製剤リラグルチドの方が、DPP-4阻害薬シタグリプチンに比べ、より良好な血糖コントロールをもたらすことが、26週間のオープンラベル無作為化試験で示されたとする知見が発表された。

 この研究は、バーモント医科大学のRichard E Pratley氏らによるもので、医学誌「Lancet」4月24日号に発表された。

 世界の糖尿有病数は2億8500万人で、その数は2030年までに4億3900万に増加すると予測されている。死亡率や経済的負担を引き上げる原因となる細小血管障害は、良好な血糖コントロールにより抑えることができる。しかし、世界の多くの患者で十分な治療が行われず、血糖コントロールが目標に達していない。また、治療の開始が遅れる傾向がみられる。

 新しい糖尿病治療薬として注目されているインクレチン関連薬は、インスリンの分泌を促し、グルカゴンの分泌を抑制させるという機序により、血糖コントロールを改善するというもの。

 DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬は異なる作用機序をもっており、DPP-4阻害薬は体内で分泌されたインクレチンの濃度を上昇させるのに対し、GLP-1受容体作動薬は投与した薬剤によって血中GLP-1濃度が上昇する。

 また、シタグリプチンは経口投与で、リラグルチドは注射投与で効果を得られる。ともに単独で用いると低血糖を起こしにくいなど、これまでにない有用な薬剤と期待されているが、新しい薬であり効果や安全性についての長期的な検証は途上にある。また、2つのタイプの薬剤の治療効果を直接に比較しどちらがより優れるかとった、臨床試験による確認も待たれている。

 そこで、研究グループは、メトホルミン単独の治療で血糖コントロールが十分に改善されない2型糖尿病患者を対象に、メトホルミンとリラグルチドあるいはシタグリプチンを併用し、治療効果などを評価する臨床試験を行った。

 試験は、2008年6月から2009年6月にかけての26週のオープンラベル無作為化試験として行われた。欧州11ヵ国、アメリカ、カナダの158施設で、18〜80歳の2型糖尿病患者665例が登録された。HbA1cは7.5%から10.0%で、平均は8.5%だった。

 リラグルチド1.2mg/日を皮下投与する群(225例)、同1.8mg/日を皮下投与する群(221例)、シタグリプチン100mg/日を経口投与する群に無作為に割り付けられ治療が行われた。その結果、ベースラインからのHbA1cの低下は、リラグルチド1.2mg群は1.24%、1.8mg群は1.50%だったのに対し、シタグリプチン群が0.9%だった。

 研究者らは、2型糖尿病患者において、血糖値を正常に近付けることで糖尿病による血管合併症の発症・進展を抑制できることをあきらかにした「UKPDS」に言及し、HbA1cを1%低下させることで、細小血管合併症の危険が37%減少し、糖尿病に関連する死亡が21%減少することが期待できると指摘している。「これらの結果は、リラグルチドとシタグリプチンによる治療で、HbA1cに臨床的な有意差が出てくることを示唆している」と述べている。

Abstract
Full Text (subscription or payment may be required)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲