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2010年02月18日
国内初のGLP-1アナログ製剤「ビクトーザ」 高いHbA1cの目標達成率
血糖コントロールの指標と評価として、HbA1c値6.5%未満、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満が「良」とされているが、達成率は35%程度だという。門脇氏は「現状では十分にコントロールされているとはいえない」と話
門脇氏は「心疾患疾患を抑制するために、診断後早期から積極的な治療介入を行うべきだ」と強調する。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、「厳格な血糖コントロールは死亡を減少させるが、一方で低血糖は死亡率を増加させている可能性が高い」と指摘。「低血糖リスクを最小限にしつつ血糖コントロールを良好にすることが重要」と述べた
また、「経年的な膵β細胞機能の低下を抑制できないことなどが、経年的な血糖上昇につながっている」として、今後の糖尿病治療の戦略として「生活習慣介入と自己管理をベースにした治療」「肥満を起こさない血糖コントロール」「血糖・血圧・脂質管理を進める総合的治療」などを挙げ
GLP-1は消化管ホルモンであるインクレチンの1つであり、栄養素が消化吸収されると消化管から分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合し、インスリン分泌を促進する働きをもつ。
GLP-1はグルコース濃度に依存して分泌されるため、単独で低血糖を起こしにくい。また、▽膵β細胞の分化・増殖促進、▽膵β細胞のアポトーシスの抑制、▽血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制、▽摂取した食物排出を遅らせる、▽食欲抑制といった作用がある。
門脇氏は、ビクトーザ投与後の血糖降下作用を報告し、SU薬単独の治療などに比べHbA1cの目標達成率が高いことを示した。ビクトーザのSU薬の追加療法では、24週でHbA1c6.5%未満を達成した比率は、SU薬が4.5%だったのに対しビクトーザは47.1%だった。
一方で、低血糖の発現頻度については、国内52週の第3相臨床試験では、「介助を必要とする重大な低血糖は報告されなかった」という。
さらに、血糖降下作用に伴う体重増加が少なく、あるいは肥満では体重が減少し、内臓脂肪も減らす可能性があると報告した。欧米人に比べインスリン分泌の少ない日本人は、軽度の肥満が伴うことで2型糖尿病を発症するが、ビクトーザは日本人特有の病態に適しているという。
主な副作用として投与開始初期の消化器症状があるが、用量を漸増していくことで軽減することも紹介した。長期的な安全性としては、動物実験で甲状腺腫瘍の発現がみられているが、ヒトを対象とした臨床データでは報告されていないという。また、膵炎については有意差を示すデータはいまのところ報告されていない。
ビクトーザはGLP-1受容体作動という明確な作用機序をもつ製剤であることが高く評価されるが、長期安全性については今後も検討していく必要があるという。
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