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2007年10月24日

インクレチン療法に期待 2型糖尿病の新しい治療

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インクレチン関連薬
 こままでなかった新しい作用機序のある糖尿病治療薬の開発が進められている。2型糖尿病だけでなく、肥満症の治療にも有効と期待されている。
インクレチンというホルモン
 インクレチンは、食事を摂取したときに十二指腸、小腸などから分泌されるいくつかのホルモンの総称で、代表的なものにGLP-1とGIPがある。2型糖尿病では、膵臓のβ細胞が機能しているのにインスリン分泌が低下していることがある。それにはインクレチンの分泌が関係している可能性がある。

 糖尿病の研究では、ブドウ糖負荷試験を行うと経口負荷の方が経静脈よりインスリンの分泌が増えることが以前からわかっていた。食物が消化管を通るときにインスリン分泌を促す物質が作用しているはずだと考えられ、それを探すうちにインクレチンの作用が解き明かされた。

 インクレチンは食物摂取への反応として、膵臓のβ細胞からより多くのインスリンを分泌するよう促すはたらきをする。このインクレチンを強化する治療薬として、すでに注射用インクレチン製剤(GLP-1)が開発されている。

 血糖値を上げるホルモンのひとつにグルカゴンがある。グルカゴンは血中のグリコーゲン放出を促すはたらきをし、その結果血糖値が高くなる。GLP-1はこのグルカゴンの分泌を抑える作用もある。また、胃排出を遅らせ、食欲を低下させる作用や、膵臓のβ細胞が疲弊するのを防ぐ、あるいはβ細胞の増殖などにも関与するとみられている。

低血糖が起きる危険が少ない
 インクレチンは、もともとからだで作られているホルモンで、インスリンと同様にペプチド(蛋白質)なので、経口であると消化されてしまい効果を得られない。インクレチンのひとつであるGLP-1では、不足している分を注射で補い強化し、血糖値をコントロールする治療が行われる。

 インスリンと違うのは、血糖値が高くないときにはインスリ分泌を刺激しないので、低血糖が起きる危険性が少ないこと。また、体重減の効果が認められており、減量薬としての臨床試験も行われている。

 飲み薬で同様の効果を期待できる「DPP-4阻害薬」という薬の開発も進められている。DPP-4阻害薬は、GLP-1を不活性化する酵素のはたらきを阻害することで、インスリン分泌を増やしβ細胞の機能を改善するという治療薬。

 いずれも米国ではすでに認可され治療に使われている。日本でもいくつかの製剤の治験が進行しており、近い将来に治療に使われるようになる見込みだ。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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