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2026年04月23日

アルツハイマーはもの忘れだけでない ~ミス増えたら認知症〝手前〟かも~

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時事通信社

 認知症は、多くの人がなりたくないと強く願う一方、誰もがなり得る身近な存在。いったんなってしまうと、全てを忘れ、何もできなくなると誤解されがちだが、そうではない。治療やサポートを受けながら、充実した今や思い描いていた未来を送ることはできる。診断されたらショックだが、早期に発見して、共に生きる準備をしていくことが大事だ。

 「年を重ねたら、どんな生活を送りたいのかを意識し、その生活を続けるために、認知症の心配があれば早めに医療機関に相談し、自分で考えられるうちに対策をしっかり考えてほしい」。老年精神医学や認知症などが専門の東京都立大学名誉教授兼東京慈恵会医科大学名誉教授の繁田雅弘氏はこう呼び掛ける。

繁田雅弘氏

繁田雅弘氏

 ◇後悔しないよう、リスクと治療を知る

 認知症は、脳の病気や障害によって記憶や理解・判断力などの認知機能が低下し、生活に支障を来す状態のこと。アルツハイマー病とは脳にアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質がたまる病気で、これが蓄積すると神経細胞が破壊され、認知機能が低下するとされる。そうなると、だんだんミスが増え、次第に身の回りのこともできなくなっていく。アルツハイマー病が原因で起きる認知症の状態がアルツハイマー型認知症で、国内では、このタイプが認知症全体の6~7割を占める。

 アルツハイマー病で知っておきたいのは、軽症でしか使えない治療があるということ。もの忘れがあっても生活に支障は出ていない、いわゆる認知症の前段階を指す軽度認知障害(MCI)か、軽度アルツハイマー型認知症の患者を対象に、2023年、アミロイドβを取り除く「抗アミロイドβ抗体薬」が保険適用となった。

 病気の進行を遅らせる効果が期待される薬で、アルツハイマー病を治したり、進行を完全に止めたりするものではない。副作用のリスクもあるが、軽い症状の期間を引き延ばせる可能性を持つ。この薬による治療について、繁田氏は「費用や通院の負担も大きく、全ての人が受けた方がいいとは言わないが、後になって治療があるなら受けたかったと後悔する人は減らしたい」と話す。

 実際、日本イーライリリーが実施した、55~84歳のMCIまたは軽度認知症の人とその家族らを対象としたアルツハイマー病に関する意識調査では、アミロイドβが原因の一つと知っているのは3割で、抗アミロイドβ抗体薬の認知度は2割と低かった。

 ◇おっくうがる、味付け変わるもサイン

 では、アルツハイマー病の兆候とは何か。この病気は、同じ話を繰り返したり、同じことを何度も聞いたり、物をどこに置いたか忘れたりといった〝もの忘れ〟から始まると言うが、それは老化でも見られる自然な現象で見過ごしやすい。そのため、もの忘れに加えて出てくるさまざまな変化に目を向け、早期発見につなげてほしいと繁田氏は話す。

 趣味に打ち込まなくなるのも一例だ。うつ病などの疑いもあるが、アルツハイマー病の初期では「道具をそろえるなどの準備をおっくうに感じ、結果、やらなくなる」(繁田氏)。

 金銭や服薬の管理ができない、料理の盛り付けや味付けが雑になる、食器をうまく片付けられないーなども当てはまる。それらを、うっかりミスではなく、本人がいつも通りと思っている場合は特に注意。また、冷蔵庫に同じ調味料が複数ある、宅配の不在票がたまる、道に迷うのもサイン。記憶のあいまいさの表れだそう。注意がそれると今していたことを忘れてしまうのもよく見られる。仕事ではスムーズにできていた作業に時間がかかるようになったりする。

アルツハイマー病の軽度認知障害と軽度認知症の患者を対象に病気の原因となるアミロイドβを取り除く治療が可能だ(繁田雅弘氏提供)

アルツハイマー病の軽度認知障害と軽度認知症の患者を対象に病気の原因となるアミロイドβを取り除く治療が可能だ(繁田雅弘氏提供)

 気になる症状があれば、かかりつけ医やもの忘れ外来などへの相談が勧められる。MCIや認知症の確実な診断は難しい面もあるが、もの忘れ以外の変化が認められると「診断の精度はぐっと上がる」(同氏)と言う。診断ができれば、治療の選択肢や予防の手段も広がる。軽症の人で抗アミロイド抗体薬を希望する場合は、アミロイドβの蓄積状態を画像で見える化して確認し、治療に適応するかを見極めることもできる。

 そのため、気になる変化が出てきたら、年齢のせいと見過ごさず、家族でざっくばらんに話してほしいと繁田氏は付け加える。

 ◇自分らしい生活意識して暮らす

 早期発見は、自分の生活や価値観に合った治療やサポートが何かを考え、それを受けるために備える時間を与えてくれる。軽度認知障害(MCI)と診断されても、すぐに認知症に移行するわけではなく、元の状態に戻る人もいる。認知症を過度に恐れる必要はない。深刻に捉え過ぎず、だが、目をそらさずに、できることに取り組むのが大切だ。

 認知症との向き合い方について、繁田氏はこうも話す。「自分のたわいない日課や習慣はなくしてはならない。認知症になるときはなってしまう。ただ、なってもならなくても、自分らしい生活が送れているのか、それを早くから意識して暮らす。それが、認知症への対応や生活の質の維持につながる。認知症になったとしても、その人らしい生活は続けられる。早めに診断を受け、自分が希望する治療を受けるのが何よりだ」。(及川彩)

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