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2026年04月08日

高齢者の肺炎「やっぱりワクチン重要」 ~65歳の定期接種逃さずに、4月から新タイプ~

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時事通信社

 肺炎は高齢者の命に関わる。病原体はさまざまあるが、首領は肺炎球菌。髄膜炎や菌血症などを引き起こすこともある。特に65歳以上の高齢者は重症化リスクが高く、菌が血液や髄膜に侵入する「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」入院患者の死亡率は3割程度とも報告されているという。

 高齢者の場合、肺炎と気付かないうちに重症化し、治療が間に合わないケースも目立つ。そのため、肺炎球菌はワクチン接種での予防が何より重要と医師らは強く呼び掛けてきた。

高齢者に向け肺炎球菌ワクチンの定期接種を呼び掛ける舘田一博教授(左から2人目)、山本和子教授(右から2人目)ら。中央は俳優の柳沢慎吾さん=3月31日、都内(ファイザー提供)

高齢者に向け肺炎球菌ワクチンの定期接種を呼び掛ける舘田一博教授(左から2人目)、山本和子教授(右から2人目)ら。中央は俳優の柳沢慎吾さん=3月31日、都内(ファイザー提供)

 だが高齢者の定期接種の実施率は4割未満と伸び悩む。そうした中、4月から、従来よりも高い効果を持つタイプのワクチンに切り替わった。対象は原則65歳のみで、60~64歳で特定の基礎疾患のある人も受けられる。定期接種の機会を逃さないでほしいと、肺炎の恐ろしさやワクチンの必要性を2人の医師が説明した。

 ◇効果高いワクチンに変更

 定期接種の対象者は費用が一部助成される。案内通知は市区町村から届く。新しいワクチンは免疫が働きやすくなるよう工夫された「結合型」というもの。(商品名プレベナー20)。20種類の肺炎球菌の型に効果を持つ。海外では導入が進んでいる。一回打てば免疫が長期間維持できるのもメリット。従来のタイプは5年ごとの接種が推奨されていた。

 プレベナー20はすでに子どもの定期接種で使用されている。東邦大学の舘田一博教授(微生物・感染症学)によると、子どもの肺炎球菌ワクチンの接種率は高い水準で定着し、肺炎や髄膜炎などの予防で高い効果が出ているという。

 それを踏まえ、舘田氏は「この新しいタイプのワクチンは有効性や安全性が確かめられている。ようやく高齢者にも定期接種で届けられるようになった。それを知ってほしい」と話す。 

 国内では肺炎は死因5位で、死亡者のほとんどが65歳以上だ。「昔から『肺炎は老人の友』と言われる。その状況は今も変わらない。直接の死因はがんや心疾患のお年寄りの多くも肺炎を合併して亡くなっている」(舘田氏)。

 ◇肺炎球菌は髄膜炎、菌血症引き起こすことも

 インフルエンザなども肺炎を引き起こすが、成人の場合、肺炎の原因のトップは肺炎球菌で全体の約2~3割を占める。くしゃみや咳などによって感染し、菌が肺に入り込むと炎症を起こし、肺炎になる。

肺炎球菌が肺、血液、髄膜に侵入すると重症化に(山本和子氏提供)

肺炎球菌が肺、血液、髄膜に侵入すると重症化に(山本和子氏提供)

 赤ちゃんや小さな子どもを除くと、肺炎球菌感染症による重症化リスクは65歳以上で高い。特に慢性肝疾患、慢性腎疾患、慢性心疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病といった基礎疾患を持つ人は危険と舘田氏は説明する。

 琉球大学大学院の山本和子教授(感染症・呼吸器・消化器内科学)は、肺炎球菌が怖いのは本来は菌が存在しない血液や髄液に入り込み、肺炎のほかに、非常に危険な髄膜炎や菌血症などを引き起こすことだと話す。侵襲性肺炎球菌感染症と言う。

 山本氏によると、国内の研究では、侵襲性肺炎球菌感染症で入院した患者の死亡率は、全年齢で2割強、65歳以上で3割に近づき、80歳以上では3割を超えると報告されているという。「さらに恐ろしいのは、医療を尽くしても半分近くの人は入院2日以内に亡くなってしまっているということ。そのぐらい怖い病気。治療をしても間に合わない。予防が非常に重要と言える」(山本氏)。

 回復して退院できても「身体機能が落ち、以前のような日常生活が送れなくなったり、再び肺炎にかかったり、寝たきりになったりと悪循環に陥る人も多い」と山本氏は指摘し、高齢者が肺炎を起こすと、認知症のリスクが2倍以上、入院費は約40万円、家族らの病院の付き添い期間は約1カ月、さまざまな影響が出ると補足した。

 ◇肺炎は治療から予防へ

 インフルエンザは冬、新型コロナウイルスは夏や冬に感染拡大の傾向が見られるが、肺炎球菌感染は季節を問わない。一年を通してかかりやすい。そのため、感染を防ぐには手洗い、うがい、歯磨きなどの口腔ケア、ワクチンという基本的な対策が大事と舘田氏は強調する。

 「いかに肺炎からリスクの高い高齢者を守るか。治療もあるが、いったんかかると重症化してしまうという事実を考えるとワクチンで予防するという選択肢が重要だ」(舘田氏)

 肺炎の特徴は高熱、激しい咳、たんが絡む咳、息苦しさなど。顔色が悪く、だるくもなる。ただ、そうした典型的な初期症状が高齢者では出にくいことも多いという。

 「高齢者の肺炎は診断が遅れやすい。だからこそ、やっぱりワクチンが重要」と山本氏は繰り返す。最近根付き始めた「ワクチン・プリベンタブル・ディジーズ(VPD)」にも触れ、「ワクチンで防げる疾患はしっかりと予防していくという考え方。そのような時代になってきている」と語る。

 ワクチンを巡っては、定期接種の対象者以外も、高齢であったり、肺炎球菌に罹患する恐れが高いと考えられる場合に自費で打てる。その場合、候補は複数ある。自己判断せずに、過去の接種歴などを含めて、かかりつけ医らに相談してほしい。(及川彩)

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