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2023年07月27日
インスリンを飲み薬に 糖尿病の人を注射から解放 画期的な研究成果を発表

飲み薬として利用できるインスリン製剤の開発が進められている。
インスリンが発見されてから100年以上が経過するが、インスリンの飲み薬の開発は研究者にとって長年の夢だった。その研究の成果がではじめている。
近い将来に、インスリン治療を飲み薬で行えるようになる可能性がある。
インスリン治療は難しくない
インスリンは血糖を下げるホルモン。インスリン療法とは「足りないインスリンを体の外から補充して、血糖管理を改善する」治療法。 一般的にインスリン注射は、皮下注射と言われており、皮膚の薄いところと筋肉のあいだに打つ。筋肉注射と異なり、皮下注射は痛みが少ないとされている。 インスリン注射で使われる注射針も、32G(0.23mm)や34G(0.18mm)といった非常に細くて短いサイズのものも使われている。痛みが少なくなるようデザインされており、注射にともなう痛みはかなり軽減されている。インスリン注射のための注射器の取り扱いも、かなり簡単になっている。 実際にインスリン治療を行っている患者からも、痛みを感じない、針が刺さったことが分からないほどだといった声が聞かれる。 インスリン製剤も進歩しており、患者の病態に合わせて、さまざまなインスリン製剤が治療に使われている。これにより、生理的なインスリン分泌を再現し、安定した血糖管理をえられるようになっている。 インスリン療法は特殊な治療法ではない。治療をしっかり継続できれば血糖コントロールは改善し、合併症を予防したり進展を遅らせることができる。飲み薬として利用できるインスリン製剤を開発

インスリンの飲み薬の開発は長年の夢
経口インスリンの開発は、世界中で進められている。カナダのブリティッシュコロンビア大学や中国の南方医科大学なども取り組んでいる。 「インスリンが発見されてから100年以上が経過しますが、インスリンの飲み薬の開発は研究者にとって長年の夢でした。その研究の成果がではじめています」と、ブリティッシュコロンビア大学のアヌバブ プラタップ-シン教授は言う。 開発された経口インスリンは、投与後30分で吸収され、効果は2~4時間持続するので、インスリン注射と同様に利用できる可能性があるとしている。 「とくに1型糖尿病とともに生きる人は、毎日数回のインスリン注射や、ポンプにとってインスリンを投与する必要があります。インスリン注射の代わりに、錠剤として利用できるインスリンを開発できれば、糖尿病の人の生活の質とメンタルヘルスを改善できると考えています」としている。 「インスリン投与に関しては、糖尿病の人にとって注射という手段は、もっとも快適で便利なものではありません。毎日のインスリン注射は煩わしく、人前で注射をするのがストレスになっているという患者さんは少なくありません」。 インスリンを錠剤として投与できるようになれば、インスリン療法の選択肢が増え、糖尿病とともに生きる人々の利便性を高められるとしている。 Wonder drug-capsule may one day replace insulin injection for diabetics (ロイヤルメルボルン工科大学 2023年4月19日)A promising new oral delivery mode for insulin using lipid-filled enteric-coated capsules (Biomaterials Advances 2023年5月)
UBC team developing oral insulin tablet sees breakthrough results (ブリティッシュコロンビア大学 2022年8月30日)
Production of high loading insulin nanoparticles suitable for oral delivery by spray drying and freeze drying techniques (Scientific Reports 2022年6月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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