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2020年01月27日
厚労省が「食事摂取基準(2020年版)」を発表 糖尿病の食事のポイントが明らかに
厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」について、策定検討会(座長:伊藤貞嘉・東北大学名誉教授)がまとめた報告書を公表した。糖尿病の食事療法にも変化が求められている。
「日本人の食事摂取基準」は、健康増進法の規定にもとづき、国民の健康の保持・増進を図るうえで摂取することが望ましいエネルギーおよび栄養素の量の基準を定めたもので、5年毎に改定されている。 2020年版は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)の発症予防と重症化予防の観点に加え、栄養に関連した身体・代謝機能の低下を回避するために、高齢者の低栄養やフレイルの予防も視野に入れて策定されている。2020年版は今年度中に告示される予定。 関連情報
糖尿病の食事療法の目的は
高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)の発症と重症化を予防するために、食事を改善することはきわめて重要だ。「食事摂取基準」では、2型糖尿病の食事療法の意義として、「全身の代謝の状態を良好に維持することで、合併症の進展を抑え、予防すること」と強調している。
糖尿病の人は、血糖を下げるインスリンの分泌が減っていたり、作用が不足している。食事の総エネルギー摂取量を適正にすれば、インスリン作用からみた需要と供給のバランスをとることができ、高血糖を改善でき、肥満の対策にもなる。
また、インスリンの作用は糖代謝だけでなく、脂質やタンパク質の代謝など多岐にわたり、それらが相互に関連しあっている。食事療法には、高血糖の改善だけでなく、さまざまな栄養素のバランスを適正にするという目的もある。
患者の生活スタイルや嗜好を尊重
糖尿病は一生付き合う病気で、治療期間は長期にわたる。そのため食事療法を長く続けるためには、日本の食文化に合っていることや、個々の食事の好みを反映したものである必要がある。
糖尿病の病態が多様化しており、治療の内容は患者によってさまざまだ。現在の糖尿病の治療の基本的な考え方は、「患者の生活スタイルや嗜好を尊重し、それぞれの置かれた状況に応じて、食事療法も量的にも質的にも個別化をはかる必要がある」というものだ。
エネルギー必要量には個人差がある
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、食事摂取状況のアセスメント、体重およびBMIの把握を行い、エネルギーの過不足は、体重の変化やBMIを用いて評価することを求めている。
エネルギーについて、健康の保持・増進、生活習慣病の発症予防の観点から、エネルギーの摂取量および消費量のバランスの維持を示す指標として、BMI(体格指数)を採用している。日本人の食事摂取基準として、目標とするBMIを20〜24.9としている。
さらに、身体活動レベルを、低い、ふつう、高いの3つのレベルで判定し、基礎代謝基準値および参照身長から、エネルギー必要量を計算できるようにした。
推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル
身体活動レベルを「ふつう(II)」として1日の必要エネルギー必要量を計算すると、50〜64歳では男性で2,350〜2,800kcal/日、女性で1,800〜2,100 kcal/日となり、かなり幅がある。「エネルギー必要量には個人差があることに注意するべき」と強調している。
50~64歳ではBMI 20.0〜24.9を目標に
食を楽しむことをもっとも優先させるべき
糖尿病の人の食事がどうあるべきかは、その人の食事スタイル、食事改善の実行力によって変わってくる。「食事摂取基準(2020年版)」では、糖尿病の食事療法について、次のように解説している。
治療開始時のBMIによらず、一律に標準体重を目指すことは困難であり、個々の病態の相違やエネルギー必要量に個人差が大きいことを考えると妥当とは言えない。また、患者の病態、年齢、遵守度を評価し、これを管理目量に加味することが求められる。治療開始後に、代謝状態の改善を評価しつつ、患者個々の実効性などを考慮に入れ、適正体重の個別化を図ることが必要である。
(中略)
食事療法を長く継続するためには、個々の食習慣を尊重しながら、病態に基づいて柔軟な対応をすることが求められる。それぞれの患者のリスクを評価し、医学的齟齬のない範囲で、食を楽しむことを最も優先させるべきである。
(中略)
食事療法を長く継続するためには、個々の食習慣を尊重しながら、病態に基づいて柔軟な対応をすることが求められる。それぞれの患者のリスクを評価し、医学的齟齬のない範囲で、食を楽しむことを最も優先させるべきである。
カロリー制限をして肥満を解消することも重要
「栄養障害の二重負荷」が課題に
働き盛りの年齢では、メタボリックシンドロームや肥満、2型糖尿病などに対策し、生活習慣病を予防することは、特定健診・保健指導などでも重視されている。
一方で、65歳以上の高齢者ではタンパク質を中心とした栄養の不足により、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する「フレイル」(虚弱)が問題になっている。
求められる理想的な食事スタイルは、ライフステージによって変わっていく。若い時には体重をコントロールするための肥満対策が重要だが、年齢を重ねると、今度は体重や筋肉を減らし過ぎないための対策が必要となる。
社会に過剰栄養と低栄養が混在している状態は、「栄養障害の二重負荷」と呼ばれ、日本人の食・栄養の大きな課題になっている。
そのため「食事摂取基準(2020年版)」では、「栄養指導をきめ細かに行うために、50歳以上について、より細かな年齢区分による摂取基準を設定する」必要があると指摘している。
糖尿病の人が食事で気を付けるべきこと
食品の摂り方によって、食後の血糖上昇を抑制できることが注目されている。「食事摂取基準(2020年版)」では、糖尿病の人が食事で気を付けるべきことを指摘している。
● 食物繊維が豊富に含まれる野菜を先に食べることで、食後血糖の上昇を抑えられ、HbA1cが低下し、体重も減少する。
● 野菜に加えて、タンパク質の豊富な肉や魚などの主菜から食べはじめて、その後に主食のごはんなどの炭水化物を食べると、食後の血糖上昇を抑制できる。
● 咀嚼力と血糖コントロールとの関係も重要。50歳以上の人は、咀嚼力の低下により血糖コントロールが乱れる可能性がある。50歳を過ぎたら口腔ケアも大切になる。
● 朝食の欠食や、遅い時間帯に夕食をとる食事スタイルも肥満を助長し、糖尿病のコントロールを難しくする。とくに朝食を抜く食習慣は、2型糖尿病のリスクを高める。朝食を必ず食べることを習慣にしたい。
● とくに就寝前に夜食を食べると、肥満や、血糖コントロールの不良の原因になり、合併症のリスクが上昇する。夜遅くは食べないようにした方が賢明だ。
● 「低炭水化物ダイエット」が効果があると報告した研究も多い。糖尿病合併症や薬物療法などの制約がなければ、「低炭水化物ダイエット」については、柔軟に対応することが望ましい。「低炭水化物ダイエット」の体重減少の効果は、総エネルギー摂取量の減量にともなうものと考えられているが、詳しくはまだ解明されていない。糖尿病の人にとって炭水化物の影響は、身体活動量やインスリン作用の良否によっても異なってくる。
「低炭水化物ダイエット」を始めるときは、かかりつけの医師や管理栄養士に相談することが勧められる。 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(厚生労働省 2019年12月24日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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