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2015年05月08日

体重を減らせば糖尿病は治せる? 体重コントロールが決め手

 肥満や過体重の2型糖尿病患者は、体重をコントロールすることで、「糖尿病が治った状態」を維持できる可能性がある。専門家は無理のない減量を勧めている。
体重をコントロールすればインスリン抵抗性を改善できる
 「肥満や過体重のある糖尿病患者は、体重を5%以上減らせば“糖尿病が治ったのに近い状態”を維持できることが多いのです。ただし、いったん体重を減らしても、元の状態にリバウンドしてしまう人も少なくありません。適正な体重をずっと守る必要があります」と、ニューキャッスル大学のロイ テイラー教授は説明する。

 英国のニューキャッスル大学が行った研究に、11人の体格指数(BMI)が30を超える肥満の2型糖尿病患者が参加した。参加者は3ヵ月で15kgの減量を達成した。6ヵ月後に体重は平均して6kg戻っていたが、多くの患者は減量後にHbA1c6%未満を維持できるようになり、飲み薬の種類と量を減らすことができた。

 別の研究では、糖尿病を発症して4年以上たつ人でも体重を5kg以上減らすことで、84%が血糖値を正常域まで下げられることが判明した。5〜6ヵ月かけて体重を減らし、健康的な体重に近づけるのが、もっとも成功しやすい方法であることが確かめられた。

 「体重を減らすことで、インスリンが効きにくくなる“インスリン抵抗性”の改善を期待できます。減量に成功した患者をコンピュータ断層撮影(CT)で検査したところ、内臓や肝臓にたまった脂肪が30%以上減っていることが分かりました。糖尿病を発症してから10〜15年が経過した人でも、減量の効果は期待できます」と、テイラー教授は指摘する。

 インスリンは、血糖値を下げるだけでなく、血糖値が上がり過ぎないように、肝臓での糖新生を抑える役目も担っている。インスリン抵抗性があると、肝臓は必要以上の糖を放出することになり、高血糖になりやすくなる。体重を減らすことで、肝臓にたまった中性脂肪が減少し、血糖値が上がりにくくなる。また、減量にはインスリンを分泌する膵臓の細胞を目覚めさせる効果もあるという。

 テイラー教授は、2型糖尿病患者が体重コントロールを続けるために、次のことをアドバイスしている――

自分の適正体重を知る
 体重をコントロールするためにまず必要なことは、自分の適正体重を知ることだ。体格指数(BMI)は「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」という式で求められる。BMIが25を超えないよう、体重をコントロールすることが必要となる。

適正なエネルギー摂取量を求める
 適正体重が分かったら、食事の適正なエネルギー摂取量を求める。デスクワークが中心の生活をおくっているのなら、体重1kg当たり25〜30kcalのエネルギーが適正になる。適正体重が65kgの人であれば、必要なエネルギー摂取量は1,625〜1,950kgになる。

まずは1日の摂取エネルギーを100kcal減らす
 目標体重が分かったら少しでもそれに近付けるよう、食事をコントロールする。まずは1日の摂取エネルギーを100kcal減らすという方法から始める。具体的には、ファーストフードのハンバーガーの15%(3口分)を減らすと、それが100kcalに相当する。1日の摂取エネルギーを2,000kcalとすると、100kcalはその5%に過ぎなく、日常生活に大幅な変更を強いられるようなダイエットをする必要はない。日常の生活の中で少し努力すればよいのだ。

空腹感を感じるのは成功に近づいている証拠
 食事の量を減らすのが難しいという場合は、週の2日を普段の量の3分の2に減らすことから始める。空腹感を感じるのは、あなたの体重コントロールが成功に近づいている証拠だ。まずは空腹感に慣れることから始めよう。

栄養バランスを考える
 栄養バランスを考えて食事をする。栄養素によってエネルギー量は異なることに注意する。1kg当たりのエネルギー量は「脂肪 9kcal」「炭水化物 4kcal」「タンパク質 4kcal」「アルコール 7kcal」。どの栄養素も摂り過ぎると血糖コントロールの悪化につながるが、もっとも高カロリーなのは脂肪だ。野菜を食べる量を増やし、炭水化物の摂り過ぎに注意し、タンパク質と乳製品を定量摂取するようにすると、栄養バランスは改善する。

20〜30分の活発なウォーキングを毎日行う
 運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、血糖値が下がる。また、運動することで筋肉が増え、体のエネルギー消費量を増やせる。運動は継続することが大切なので、20〜30分の活発なウォーキングを毎日行うようにしよう。

1日に10分多く歩くことから始める
 運動は、スポーツジムに通ったりジョギングをするのではなく、普段より少し多く歩くことから始めると成功しやすい。1日に10分多く歩くことから始め、やがて20分、30分と延ばしていく。テイラー教授の研究では、16週間のプログラムに参加した糖尿病患者の85%が1日2,000〜2,500歩を多く歩くことに成功したという。

運動をした分だけ食事を増やせるわけではない
 ただし、運動で消費するエネルギーはそれほど多くないことに注意が必要。体重65kgの人が30分の活発なウォーキングで消費できるエネルギーは170kcal程度。「運動をした分だけ食事を増やせる」という考えは間違えだ。

ダイエットを勧められない人
 アルコールの飲み過ぎなどが原因で膵臓に炎症が起こり発症する糖尿病や、糖尿病の家族歴をもつ遺伝性の糖尿病では、極端なダイエットは勧められないという。また、長い時間をかけて1型糖尿病を徐々に発症する「緩徐進行1型糖尿病」は2型糖尿病に間違われることがある。このタイプの糖尿病の人はやがてインスリン療法が必要になる。

Reversing Type 2 Diabetes(ニューキャッスル大学 2015年3月13日)
What'S Your Healthy Weight?(英国糖尿病学会)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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