ニュース
2015年03月17日
腸内細菌が糖尿病リスクに影響 腸内環境が血糖値コントロールに関与
- キーワード
- 食事療法

「腸内細菌」という言葉を耳にしたことがある人は少なくないはずだ。腸の中にビフィズス菌、乳酸菌など無数の細菌がすみついていて、健康に大きな影響を与えていることが最近の研究で明らかになっている。
ヒトの腸内には、500~1,000種類もの腸内細菌がすみついている。この菌のかたまりを腸内細菌叢といい、花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれている。
腸内フローラはヒトの健康と病気に密接に関わっており、腸疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、動脈硬化症などのさまざまな疾病の発症に関係すると考えられている。
腸内環境の健康が保つために、食事を工夫すると効果的だ。「野菜を食べる」、「発酵食品(ヨーグルト、納豆、漬け物など)を食べる」、「肉や卵などのタンパク質食品を食べ過ぎない」といった工夫が役立つ。
食物繊維を摂取するのも効果的だ。食物繊維は野菜や果物・豆類などに多く含まれる。食物繊維は消化・吸収されることなく大腸まで達し、善玉菌の栄養源となって増殖を促す。
善玉菌の数を増やすために、オリゴ糖を摂取するのも効果的な方法だ。オリゴ糖は、大豆、ゴボウ、ネギ、タマネギ、アスパラガス、バナナなどの食品に多く含まれる。
研究には45~75歳の男性116人が参加した。研究チームは参加者を1年間追跡して、血糖コントロールの推移を調査した。
参加者に糖負荷試験を行い、血糖コントロールの状態によって、次の4つのグループに分類した。(1)血糖コントロールが徐々に改善、(2)血糖値がずっと正常、(3)血糖コントロールが徐々に悪化、(4)血糖値がずっと高い(空腹時血糖値が高い)。
参加者の便を調べ腸内フローラの状態を調べたところ、(1)と(2)の血糖コントロールが良好なグループでは腸内細菌が多くみられ、代謝や免疫といった体の機能に良い影響を与える善玉菌が多いことが判明した。
一方、(3)と(4)の血糖コントロールが不良なグループでは、腸内で善玉菌が少なく、悪玉菌が増えていることが確認された。
特に、血糖値がずっと正常だった男性は、腸内に「アッカーマンシア」(Akkermansia)と呼ばれる善玉菌が大量にあることが分かった。
今回の研究では、特定の腸内菌が血糖コントロールに関与しているかどうかは明らかにされなかったが、「糖尿病を改善する腸内フローラがある可能性がある」と、研究者は述べている。
過去の研究でも、肥満の人の腸内にはアッカーマンシア菌が少ないことが示されている。腸内細菌が"糖尿病になりなすい体質"を左右している可能性がある。
腸内フローラが乱れることで、腸内でのみ生息しているはずの腸内細菌が血液中で検出され、炎症を引き起こしている可能性があるという。
インスリン抵抗性は、インスリンが体の中で効きにくくなっている状態をさす。インスリン抵抗性により糖が十分に体の中に取り込まれなくなると、血糖が上昇する。
肥満や運動不足などが原因だが、腸内フローラのバランスが乱れにより慢性的な炎症が起こることも一因になっているという。
腸内環境の改善により2型糖尿病に伴う炎症を抑制し、インスリン抵抗性を改善できるようになる可能性がある。
腸内環境は、不規則な食生活や運動不足、ストレスやなどの生活環境や加齢によって悪化するので、注意が必要だ。
Gut bacteria may contribute to diabetes in black males(イリノイ大学 2015年3月5日)順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学
食事療法の関連記事
- 魚を食べている人は糖尿病リスクが少ない 魚は脳の健康にも良い 中年期の食事改善は効果が高い
- 朝食をしっかりとると糖尿病が改善 血糖管理に大きく影響 朝食で「お腹ポッコリ」肥満を予防
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病リスクを高める 筋肉の質も低下 「自然な食品」はリスクを減らす
- 糖尿病の食事に「ブロッコリー」を活用 アブラナ科の野菜が血糖や血圧を低下 日本でも指定野菜に
- 糖尿病の人はビタミンやミネラルが不足 「食の多様性」が糖尿病リスクを下げる 食事バランスを改善
- 糖尿病の人は脂肪肝にご注意 ストレスはリスクを高める 緑茶を飲むと脂肪肝が減少
- 「玄米」で糖尿病を改善 食事では「低GI食品」を活用 血糖値を上げにくい新しい米を開発
- ウォーキングなどの運動は糖尿病の人に良い 運動で食欲も抑えられる 認知症の予防にもつながる
- アルコールの飲みすぎは危険 糖尿病・高血圧・肥満のある人は肝臓病リスクが2.4倍に上昇 飲酒により糖尿病リスクが上昇
- 【Web講演を公開】2月は「全国生活習慣病予防月間」
今年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」