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2014年07月11日

大豆の栄養パワーを再評価 大豆は自然のバランス栄養食

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食事療法
 豆腐、納豆、みそ、しょうゆなど、和食に欠かせない大豆食品。大豆には、脂質異常症、がん、骨粗鬆症、更年期障害などを改善する多彩な作用があるとされている。日本が長寿国となった理由も、大豆をうまく食生活にとりいれたことを抜きには考えられない。
大豆がコレステロールを下げる がんの予防効果も

 アミノ酸やビタミン、ミネラルが豊富で、「天然のサプリメント」といわれるほど、栄養の評価が高い大豆。栄養面で注目したいのが以下の点だ――

・ タンパク質

 大豆は「畑の肉」といわれるように豆類の中でもタンパク質の含有量が多く、しかもアミノ酸の組み合わせが動物タンパクによく似ている。

 豆腐、納豆、煮豆、枝豆、おからなどの大豆食品は、優れたタンパク源であり、動物性タンパク質と組み合わせることにより、理想的なアミノ酸バランスになる。また、大豆に含まれる脂肪は少ないので、食品の脂肪分を低く調整することができる。結果的に低脂肪、低カロリーのメニューを実現できる。

・ カルシウム

 豆腐にはカルシウムが豊富に含まれている。100g当りに含まれるカルシウムの量は牛乳より豆腐の方が多い。牛乳コップ1杯(200ml)で約200mgのカルシウムを取ることができるが、豆腐半丁(150g)では約180mgのカルシウムをとることができる。

 また、豆腐は消化吸収が良く、さらに良質のタンパク質と一緒にとることもできるので、カルシウムの摂取に有用な食品だ。

 食事摂取基準では1日に約600mgのカルシウムを食品でとる必要があるとされているが、男性で14%、女性で18%も不足しているのが現状だ。これを補うのに必要な量を逆算した場合、1日に豆腐を3分の1丁(カルシウム90mgを含有)を食べれば良いことになる。

・ 食物繊維

 大豆といえばタンパク質やイソフラボンなどが注目されることが多く、食物繊維が多いという印象は薄いかもしれない。実際には大豆に含まれる食物繊維は、きのこ類や野菜類に比べても多い。

 例えば食物繊維が多い野菜として知られるゴボウには100gあたり6.1mgの食物繊維が含まれている。大豆にはゴボウの約3倍の17.1mgの食物繊維が含まれている。

・ イソフラボン

 イソフラボンは、大豆胚芽に含まれるフラボノイドの一種で、女性ホルモン(エストロゲン)によく似た構造をしている。そのため「植物エストロゲン」の異名があるが、その作用は女性ホルモンの1000分の1程度とおだやかだ。

 大豆に含まれるイソフラボンには、コレステロールを下げるのに効果がある。イソフラボンは豆腐半丁に40mg、納豆1パックに35mg、豆乳1パックに40mg含まれている。国立健康・栄養研究所の調査で、大豆イソフラボンを1日100mg、1〜3ヵ月間摂取すると、血中総コレステロールと「悪玉コレステロール」とされているLDLコレステロールがそれぞれ平均3.9mg/dL、5.0mg/dL低下することが確認された。

 また、大豆を食べる人ほど、がんの発症が少なく、イソフラボンが予防効果をもつことを示した研究は多く発表されている。国立がん研究センターが40〜59歳の女性約2万人を対象とした調査で、大豆、豆腐、油揚、納豆を毎日食べる女性では、乳がんの発症率が2割減ることが明らかになった。

 閉経後の女性に限ると、イソフラボンをたくさん食べれば食べるほど、乳がんなりにくい傾向がより強まった。イソフラボンの摂取量が最大の女性では、最小の女性に比べ、乳がんの発症が半数以下に減っていた。

 これ以外にも、大豆に含まれる脂肪酸のリノール酸やリノレン酸、レシチンには、抗酸化作用(活性酸素を抑え、体の老化・酸化を防ぐ作用)があり、また豆腐などの苦味成分であるサポニンにも抗酸化作用があるとみられている。

中高年の男性にも大豆食品はお勧め
 「植物エストロゲン」と聞くと、「イソフラボンが女性の健康に効果的なのは知っているが、男性ではどうなのか」という疑問を感じる人も多いだろう。国立がん研究センターの調査が約4万3,000人を対象とした調査では、大豆をよく食べている61歳以上の男性では、摂取量がもっとも多いグループで、もっとも少ないグループと比べ、前立腺がんの発症が半分に減るという結果が出た。

 男性の前立腺では、治療の必要がない微少ながんが加齢と共に増加することが知られている。それががんに進行して臨床的に発見される例は、日本人より欧米人の方が10倍も多いとされる。「大豆を食べているかどうか」という食生活の違いが原因ではないかと指摘されている。

 前立腺がんは、男性ホルモンの働きが影響し発症するがんだが、女性ホルモンに似た作用をもつイソフラボンをとっていると、男性ホルモンの過剰な働きを抑え、前立腺がんができにくく、できても進行が抑制されると考えられている。

 なお、日本人はイソフラボンを平均で1日に15〜22mgとっているが、サプリメントなどからの過剰摂取には注意が必要だ。厚生労働省・食品安全委員会が2006年にまとめた「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」では、大豆イソフラボンのみを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の安全性を検討し、サプリメントや特定保健食品などで摂取する量は1日当たり30mgまでが望ましいとしている。

 健康のためには、バランスの良い食事をとることが重要だ。大豆イソフラボンをサプリメントのみで摂取するよりも、大豆食品を摂取した方が理想的な食生活に近づく。日常の食生活では、各栄養素のバランスにも配慮が必要だ。

大豆・イソフラボン摂取と子宮体がんとの関連(国立がん研究センター 2014年6月18日)
血中イソフラボン濃度と乳がん罹患との関係(国立がん研究センター 2008年3月7日)
大豆製品・イソフラボン摂取量と前立腺がんとの関連(国立がん研究センター 2007年3月16日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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