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2013年05月02日

40年を迎える小児慢性特定疾患事業 成人後も5万人が治療継続

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1型糖尿病
医療費の自己負担分を補助 糖尿病は7,305人が対象
 糖尿病などの慢性疾患を抱える小児の家族の医療費負担を軽減することを目的に、医療費の自己負担部分を補助する「小児慢性特定疾患治療研究事業」が1974年に開始され、40年近くが経過した。

 同事業では、国が小児期に発生する慢性疾患のうち514疾患を小児の難病「小児慢性特定疾患」に指定し、医療費の自己負担分を一部助成している。所得に応じた負担上限額は大人の難病向けと同様で、月最大で1万1,500円となっている。

 慢性疾患を抱える小児とその家族は少なくない。これら小児や家族への公的な支援策として、小児の慢性疾患の研究を推進し、その医療の確立と普及をはかるのが、同事業の目的だ。

 予算額は2010年度は114億円で、対象患者者数は10万8,790人だった(うち糖尿病は7,305人)。厚生労働省母子保健課の調査によると、小児慢性特定疾患児の1人当たり平均年間医療費は約169万円で、子ども全体(0〜19才)の平均(約8万円)と比べ約20倍に上昇している。糖尿病の場合、1人当たり平均年間医療費は47万2,000円(通院の場合)に上る。

成人後も治療を続ける対象患者は5万人
 厚生労働省研究班(代表者=尾島俊之・浜松医大教授)の全国調査「小児慢性特定疾患のキャリーオーバー患者の実態とニーズに関する研究」によると、「小児慢性特定疾患治療研究事業」の対象患者で、成人後も治療を続けている人は最大で5万人近くに上る。うち6割は医療費の助成を受けていない。

 成人後に国の難病対策の助成対象となる「特定疾患」は56種類。小児の対象の病気と重なるのは15種類しかなく、糖尿病など多くの疾患は支援対象から外れる。

 研究班の調査は、2011年に全国の5640の医療機関を対象に実施された。20歳以降も治療を続けている患者がいると報告したのは640施設で、患者数は計6,356人に上る。研究班が推計した結果、こういった患者は全国で最大4万7,476人に上ると算出された。

 小児期の原疾患や合併症を抱えながら思春期や成人期を迎える患者は増えている。現状では必ずしも患者の年齢変化や身体、人格的成熟に合った医療を提供できていないという問題がある。

 対象年齢が限られているため、20歳到達時点で、これまでは所得に応じた一部負担のみだった医療費が、保険診療制度にもとづく支払いに変更になることを余儀なくされ、治療の継続に消極的になっているケースがある。これらの患者への医療費負担等の救済策はなく、かねてから問題として指摘されてきた。

成人期医療への円滑な移行が課題
 20歳を過ぎても多くの慢性特定疾患は治癒するわけではなく、継続的な医療が必要となる。このため患者団体からは、小慢事業を20歳以降も対象とする、あるいは継続する疾患を特定疾患治療研究事業の対象とすべきとの要望が寄せられている。

 小児期発症疾患の継続診療が必要となる場合、成人期医療への移行が相応しい時期になっても、医療体制が整っていないために、あるいは本人の準備が整わないために、成人期医療への移行が円滑に行われないケースも増えているという。

 日本小児科学会は4月に、「小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言」(案)をホームページに公開し、パブリックコメントの募集を開始した。

 提言案では、まず前提として「成人期の小児期発症疾患に対しては、年齢とともに変化する病態の研究、適切な診療法の開発が不可欠である。同時に、病態の変化と人格の成熟に伴い、小児期医療から成人期医療へ移行する間で、これら2つの医療の担い手が、シームレスな医療を提供することが期待される」と指摘。同学会は今後、日本内科学会など成人診療を主に担当する学会と連携し、課題に取り組む姿勢を示している。

小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会(厚生労働省)
公益社団法人 日本小児科学会

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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