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2012年09月24日

糖尿病治療薬がアルツハイマー病を改善

 糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬が、アルツハイマー病の予防・改善に有効だとする研究が発表された。
GLP-1受容体作動薬が脳細胞を保護し増殖を促す
 英国のアルスター大学の研究チームは、GLP-1受容体作動薬が損傷を受けた脳細胞を保護し、神経細胞の増殖を促す可能性があるという研究を発表した。

 脳の記憶を司る海馬の神経細胞の働きが低下し、萎縮が起こり発症するアルツハイマー病は、認知症の半数以上を占めるとみられている。

 2型糖尿病はアルツハイマー病のための既知の危険因子だ。脳の神経細胞はブドウ糖をエネルギー源として利用しているが、インスリンの不足や作用不全があると神経細胞が損傷を受け、脳内の信号伝達に障害があらわれる。

 アルツハイマー病患者では脳内のインスリンレベルが著しく低下しており、インスリンの投与により記憶学習能が回復するという報告もある。

 実験では、血糖に対する反応をコントロールするタンパク質であるGLP-1の作用をシミュレートする実験的薬剤「(Val8)GLP-1」が使用された。この薬剤には、実際に2型糖尿病治療に使用されているGLP-1受容体作動薬であるバイエッタやビクトーザと同様の作用があるという。

 健康なハツカネズミを薬剤で処理し、脳内でどのような影響があらわれるかを調べた。その結果、脳の神経細胞の新生が促され、脳の記憶を司る海馬の中で神経細胞が産み出されることを発見した。

 「脳細胞が失われることは、アルツハイマー病やパーキンソン病といった疾病にとって大きな意味がある。実験に使用したGLP-1受容体作動薬が、脳内で神経細胞を新生し記憶能力を押し上げることを確認した意義は大きい。GLP-1受容体作動薬が重要なターゲットになることを示唆している」とアルスター大学・バイオメディカルサイエンス研究所のChristian Holscher教授は話す。

 将来、アルツハイマー病を発症する可能性のある患者に対して、記憶低下を予防するために、GLP-1受容体作動薬を処方される日がくるかもしれないとHolscher教授は指摘している。

Breakthrough in Alzheimer's Research(アルスター大学 2012年9月13日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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