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2012年07月27日

玄米を食べるとなぜ肥満解消? メカニズムを解明

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食事療法
 琉球大学の研究グループは、玄米に高濃度に含まれる成分「γ(ガンマ)-オリザノール」が、高脂肪食に対する好みをやわらげ、肥満や2型糖尿病を改善させる効果があることを突き止めたと発表した。

玄米を食べると高脂肪食を欲しがらなくなる
 琉球大学の益崎裕章教授(内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)らの研究グループは、玄米に高い濃度で含まれる「γ-オリザノール」という成分に、抗肥満、抗糖尿病効果があることをあきらかにした。研究成果は米国糖尿病学会誌「Diabetes」に発表された。

 沖縄県のメタボリックシンドロームの人を対象に、玄米を食べるグループと白米を食べるグループとでどのような違いがあるかを調べた研究がある。玄米をよく食べるグループでは、体重の減量、血糖値の低下、血管年齢の改善などの効果のあるという結果になった。しかし、どのようなメカニズムでそうした結果になるのか、詳しくはわかっていなかった。

 沖縄県では古くから玄米がよく食べられている。胚芽を取り除く前の玄米には、γ-オリザノールが多く含まれる。γ-オリザノールは、米や米胚芽に含まれている成分で、コレステロールの吸収を抑える作用があり、医薬品にも用いられている。

 研究チームは、高脂肪食に対する嗜好性を評価するために、マウスに通常食と高脂肪食を同時に与え、自由に選択させた。マウスはヒトと同様に高脂肪食に対する嗜好性が強いという。次に、マウスに与える餌を玄米を含む餌と白米を含む餌とに分け、評価実験と同様に通常食と高脂肪食を同時に与える実験を行った。

 その結果、玄米を含む餌を選択させたマウスは通常食を好んで食べ、体重増加が抑制された一方、白米を含む餌を選択させたマウスでは、このような変化はみられなかった。

 益崎教授らによると、玄米のぬかに含まれるγ-オリザノールに、高脂肪食への嗜好性をやわらげる効果があるという。それにより、脂肪分の低い食事を選ぶようになり、結果的に血糖値が下がり、体重が減ると結論付けた。

 高脂肪食の摂取によって、摂食中枢である視床下部での小胞体ストレスと呼ばれる代謝ストレスが高まることが、過去の研究でわかかっている。

 一方で、小胞体ストレスを抑制する「4-フェニル酪酸(4PBA)」と呼ばれる化学物質がある。γ-オリザノールの化学構造式は、4PBAに似ているという。研究チームは、γ-オリザノールは4PBAと同様に小胞体ストレスに対して抑制的に働くと考えた。

 「γ-オリザノールは高脂肪食習慣によって脳(視床下部)で亢進する小胞体ストレスを低下させ、高脂肪食への依存性を軽減する。人類が古来、慣れ親しんできた天然食の中に、健康的な食行動への回帰を促す抗メタボ物質が豊富に含まれていることが発見できたことは画期的だ」と益崎教授は説明している。

 今後はγ-オリザノールを使った、肥満や糖尿病に作用する薬剤やサプリメント、治療法などの開発が期待されている。

琉球大学医学部
Brown Rice and Its Component, γ-Oryzanol, Attenuate the Preference for High-Fat Diet by Decreasing Hypothalamic Endoplasmic Reticulum Stress in Mice
Diabetes, July 23, 2012, doi: 10.2337/db11-1767

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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