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2011年05月20日

野菜を食べる生活スタイル:心臓病・糖尿病・脳卒中のリスクを低下

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食事療法
 野菜をよく食べる人では、食べない人に比べメタボリックシンドロームの有病率が36%低下するという研究を、米カリフォルニア州のロマリンダ大学の研究者が発表した。
 メタボリックシンドロームは心臓病や2型糖尿病、脳卒中の原因となる。研究者は「野菜を食べることで、これらの病気の危険性を下げることができる」と強調している。

 米国をはじめ世界中で、肥満やメタボリックシンドロームの急増は社会問題になっている。これらはインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病の発症や進展につながる。

 「生活スタイルをどのように改善すれば、これらの病気を効果的に予防・治療できるのかを調べるのが研究の目的だ」と論文の第1著者であるロマリンダ大学のNico S. Rizzo博士は話す。

 米国では「高血圧」、「低HDLコレステロール」、「高血糖」、「高中性脂肪(トリグリセライド)」、「ウエスト径の異常」という5つの危険因子のうち3つ以上が該当する場合に、メタボリックシンドロームと判定される。

 研究者らは「ロマリンダ大学アドベンチスト健康調査2」に参加した成人773人(中間年齢60歳)を対象に横断解析を行った。食事に関して食物度数のアンケート調査を行い、食事パターンを(1)野菜をよく食べる(35%)、(2)野菜をどちらかというと食べる(16%)、(3)野菜をあまり食べない(49%)に分類した。

 メタボリックシンドロームの有病率は、(2)では37%、(3)では39%だったが、(1)の野菜をよく食べる人では25%と低く抑えられていた。

 また、野菜をよく食べる人ではHDLコレステロール以外の、中性脂肪、血糖、血圧、ウエスト径の数値が改善していた。年齢、性別、人種、身体活動、消費カロリー、喫煙、飲酒の影響を考慮し解析した後も、この傾向は変わらなかった。

 研究の参加者の35%は菜食主義で、平均年齢は野菜をあまり食べない人より3歳高かった。研究者は「年齢が少し高いにもかかわらず、野菜を食べる人は中性脂肪、血糖値、血圧値、ウエスト径、BMI(体格指数)が低くおさえられていた」と述べている。菜食主義とまでいかないが野菜を食べている人でも、肉を毎回食べる人に比べるとウエスト径やBMIが低下していた。

 「野菜をよく食べる人と食べない人とでは、どれだけ違いがあるかよく分かっていなかったが、今回の研究で有意差があることが分かった。メタボリックシンドロームを予防するために、食事や生活スタイルを改善することが大切であることがあらためて示された」とRizzo博士は話す。

 この研究は米国糖尿病学会(ADA)が発行する医学誌「Diabetes Care」5月号に発表された。

HDL(善玉)コレステロール
 LDL(悪玉)コレステロールが増えすぎると動脈硬化が促されるが、HDLコレステロールには反対に動脈硬化を抑制する働きがあり善玉コレステロールといわれる。
 動脈硬化を予防するために、HDLコレステロールを減らさないようにしながら、LDLコレステロールを減らすことが重要となる。
 ただし、最近の研究では、肉をまったく食べないと善玉のHDLコレステロールが増えにくいので、適度な肉食は体に良いと考えられている。
 HDLコレステロールを増やすために、栄養バランスの良い食事をする、禁煙、アルコールを控える、運動を習慣化することなどが勧められている。

Vegetarians may be at lower risk of heart disease, diabetes, and stroke(ロマリンダ大学 2011年4月13日)
Vegetarian Dietary Patterns Are Associated With a Lower Risk of Metabolic Syndrome
Diabetes Care May 2011 vol. 34 no. 5 1225-1227

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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